WHO(世界保健機関)は、
『大人は80dBの音量で1週間あたり40時間以上、子どもは75dBの音量で1週間あたり40時間以上聴き続けると難聴になるリスク(※)がある。若者を中心として世界で11億人がリスクに晒されている』
と警告している。
また、100dBならば15分以上、110dBならば4分以上聴き続けないことを目安としている。





【イヤホン難聴・ヘッドホン難聴】
騒音性聴器障害とも呼ばれ、騒音や爆音に長時間晒され耳の細胞が徐々に壊れていってしまうもの。携帯音楽プレーヤーやスマホの普及に伴い急増している。
耳の中には内耳に有毛細胞(※)というものが存在し、音の振動で揺らぎ・摩擦を起こして電気を作るのだそう。音の波動は大きな音に晒されると揺れが大きくなり疲弊。その段階で内耳の有毛細胞が変性してしまうと元の状態に戻らなくなってしまうとのこと。

※内耳の有毛細胞
微細な毛が生えた細胞が並んでいて、その毛先のセンサーが音(内耳の基底板の振動)をキャッチして、聴こえの神経を介して脳に情報を伝えている。
現在の医療では再生できない部位である。





有毛細胞はとても繊細で、大きな音に晒されるうちに衰弱し、毛が折れたり抜けたりすることで音を感知できなくなってしまうのだそう。その結果聴力が低下するのがイヤホン難聴・ヘッドホン難聴。
外で鳴っている音は拡散されるものの、イヤホン・ヘッドホンは耳を塞いだ状態であることから音が弱まることなくダイレクトに届きます。
短く大音量であっても、音量はそれほどでなくても長時間聴く状況であっても有毛細胞を弱らせることに変わりはありません。
昨今、オンライン会議が行われる機会が増えイヤホン・ヘッドホンを使う方もいらっしゃると思いますが、この場合会話が途切れ途切れで聴き続ける環境ではないため比較的負担がないとされているようです。





《チェックリスト》

□1日に1時間以上連続してイヤホンやヘッドホンを使用する

□話しかけられても気づかないくらいの音量でイヤホンやヘッドホンで音楽を聴いている

□イヤホンやヘッドホンを使用した後に耳鳴りがすることがある

□人の話を何度も聞き返したり、聞き間違えたりする

□耳が詰まったような感じがする

□普段の話し声が大きいといわれたことがある

□〝テレビの音が大きい〟と周囲から指摘されたことがある





《イヤホン・ヘッドホン難聴の特徴》
ほとんどの場合両耳に起こるとされていて、一度患うと治らないといわれている。
耳鳴りや耳閉塞感は難聴の初期に現れることが多く、聴力の低下を自覚した時にはすでに難聴が慢性化していると考えられるのだとか。
症状の出方には個人差はあれど、耳鳴り・耳閉塞感がおさまらないなどあれば、イヤホンやヘッドホンの使用を中止してすぐに耳鼻科を受診すること。早期に受診することがポイントになるとのこと。
チェックリストの項目に1つでも当てはまるようであれば一度医師に相談するのも選択肢の1つ。





《イヤホン・ヘッドホン難聴の主な症状》

①聴力の低下
会話中に聞き返すことが増えたり、周囲の人に聴こえる音が自分だけ聴こえなかったりすることで判明することがある。


②高音が聴き取りにくい
4000Hz付近の高音域から聴力低下が始まるといわれいるが、日常生活には支障のない音域であるため気づきにくいとされる。
健康診断の聴力検査や携帯電話の着信音などの電子音が聴こえにくいことをきっかけに難聴が発覚するケースもあるのだそう。


③耳鳴り
実際には鳴っていないにもかかわらず〝キーン〟〝ブーン〟といった音が聴こえるもの。数十秒でおさまる一過性のものであれば問題ないけれども何時間もおさまらない場合は聴力が低下し始めている兆候の可能性も。


④耳閉塞感
耳が詰まったような違和感。飛行機内で起こるような数分程度でおさまるものであれば問題ないけれども長時間続く場合は要注意。





《予防策》

①耳に負担にならない音量で聴く

周囲の音を遮断するほどの音量で聴くのは耳にとって大きな負担になる。耳を守りつつ音楽を楽しむ音量は約65dBなのだそう。イヤホン・ヘッドホンをつけた状態で周囲の会話が聴き取れる程度の音量が目安。


②連続して聴かず休憩を挟む

絶え間なく音を聴き続けると耳にとって大きな負担になる。例えば、1時間使用したら10分休憩するなど心掛けると良いとのこと。
就寝時にイヤホンやヘッドホンで音楽を聴く習慣がある方は結構いるようで、これは要注意。長時間聴くリスクが高まり負担に。就寝時はイヤホン・ヘッドホンは外して耳を休めるようにすること。


③ノイズキャンセリング機能のついたイヤホンやヘッドホンを使用する

電車や街中など騒がしい環境でもノイズキャンセリング機能で騒音をカットすれば音量を上げ過ぎることなく音を聴くことができる。
イヤホン・ヘッドホンには骨伝導を利用したものがあり、耳にやさしいと思われがちだけれども、骨を通して有毛細胞を刺激する仕組みがあることからイヤホン・ヘッドホン難聴の予防にはならないとのこと。
骨伝導型のものを使用する際も音量や使用時間には要注意。





《治療》
・有毛細胞が壊れる前であれば耳の安静を図ることで回復する。初期には耳栓を使う
、定期的に耳を休ませるといった指導が行われる。

・大音響などを聴いた後に急に耳の聴こえが悪くなった時は突発性難聴と同様に内服や点滴のステロイド剤による薬物療法が中心

・血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤)やビタミンB12製剤、代謝促進剤(ATP製剤)などを使用することもある





今回は【イヤホン難聴・ヘッドホン難聴】についてご紹介しました。
イヤホンやヘッドホンを利用する方は多くいらっしゃると思います。音楽を聴くだけではなく、スマホで動画を視たり、ゲームをしたり、小説を読み上げているものを聞いたり。。。使用用途は多岐にわたります。手軽に楽しめることからつい長時間使用し続けてしまいがちですが、楽しんでいるアイテムで健康を害してしまっては残念ですので耳の負担にならないように楽しみたいですね。