1週間ほど前に電話があって、今月は妻のサマンサの誕生月だから、と彼女の親友夫婦と食事をすることになりました。
サマンサはY親友と会うのは今年2回めながら、その前は、年賀状や時おり電話でやりとりはあったとはいえ、久しく顔を合わせることはありませんでした。
さらに私はといえば、Y親友夫婦と会うのは30年ぶりです。
サマンサと若い時分の思い出話に及ぶとと、必ずといっていいほどY親友が登場します。
思いがけないお誘いに、サマンサはもちろん、私までその日を待ちどおしく思いました。
◆ ◆ ◆
学生時代からY親友の奔放な個性は際立っていて、エピソードには事欠きません。
どちらかといえば真っ当な保守的なサマンサとは対照的でありながら、不思議と馬が合うを超えて、互いになくてはならない間柄でした。
その奔放な言動に、前回Y親友を交えて学生時代の仲間が集まった折りも、サマンサはまず個室を使える店を探したほどです。
そんなエピソードの数々をネタに思い出話に花は咲くでしょう。
でもそれ以上に、現在のY親友夫婦に会いたいとの思いが私にもありました。
◆ ◆ ◆
Y親友は、結婚直後に輸血から肝炎を患い、それが落ち着いたと思ったら今度は循環器系の病に侵されました。
何度か手術した後、次は癌に。
治療や手術を繰り返し、なんとか危機一髪の場面を乗り越え、ここまで命をつないできました。
しかも仕事を定年まで続けて。
その間、彼女の夫さんは、ずっと彼女に寄り添い、彼女を支えてきました。
30年前に私がY親友夫婦と会ったのも、リハビリ施設にいる彼女の見舞いでした。
言葉にこそ出しませんでしたが、彼女にいつ万一の事態がおきても不思議はないと思いながら年月が流れました。
毎年、Y親友から届く年賀状で知る夫婦で世界各地を旅した様子に、私たちも一年間の無事を確かめて安心してきました。
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今回も、Y親友夫婦が東京に来る用事があるので会おうと、Y親友が機会を作ってくれました。
Y親友夫婦の行動力で実現した再会です。
気がつけば、みな暦がひと巡りする齢を超え、Y親友もよくぞここまで生き抜いてくれました。
30年前、穏やかな笑顔を浮かべて、彼女に寄り添っていた夫さんの姿が印象的でした。
サマンサには思い出深い誕生祝いになることはまちがいありません。
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