かふぇ・あんちょび

このカフェ、未だ現世には存在しません。

現在自家焙煎珈琲工房(ただの家の納屋ですけど…)を営む元バックパッカーが、

その実現化に向け、愛するネコの想い出と共に奔走中です。


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 カシュガルでは、エイティガールと呼ばれるモスクの周りと、市場をうろつくことが多かった。

街はイスラム一色で、そこに中国の面影は全くと言っていいほどなかった。

この傾向はウイグル自治区でも西へ行けば行くほど顕著で、僕のシルクロードのイメージはクチャやカシュガルといった町に現実のものとして存在していたように思う。

うねうねと迷路のように曲がりくねる細い路地、その石畳の上で遊ぶ子ども達、白いヒゲの老人の乗るロバ車 ・・・。

 中国を西の果てまで旅してここカシュガルにたどり着き、僕は毎日をそんな砂漠の交易都市をあちこち歩き回って過ごした。

思う存分にこの町を満喫したら、今度はタクラマカン砂漠の南に位置するシルクロードの別ルート西域南路を通り、崑崙山脈に由来するオアシス都市を巡って東へ戻ればいいや、と、そう思っていた。

 そんなある日、バックパッカー向けのカフェの日よけの下でぼんやりと通りを眺めていると、日本人の若い女性が相席を求めてきた。

上品でこざっぱりとした感じの、綺麗なヒトだった。

もう学生たちの夏休みも終わり、この町では日本人をあまり見かけていない。

そのおねえさんはかなりの無理をして会社から10日の休みを取り、ここカシュガルにやって来たらしかった。

 日本からココまで何度も飛行機を乗り継いで、2日がかりでやってきたのよ、なんだかすごく遠いところまで来た感じ。

きっと日常のいろんなものから解放されたのだろう、とても清々しい穏やかな表情をしている彼女の言葉を聞きながら、ここまでに4ヶ月を費やしている僕は黙ってお茶を飲んだ。

彼女はスケッチブックを小脇に抱えていて、のぞかせてもらったその中には、民族衣装の老人やウイグルの子どもの素敵な絵が描いてあった。

僕もさんざん気を遣いながらそれらの老人や子どもを写真におさめようとはしているのだが、こっちの方がずっとスマートだし相手も喜んでくれるに違いなかった。

 そうやって日差しのきつい夕方をのんびりと日本語の会話を楽しんで過ごした後、市場の安食堂での夕食へとお誘いしてみた。

ごみごみしたバザールの中の粗末な食堂でラグメンというトマトソースのパスタを食べた。

ひとり前2元 ( 23円 ) 。

僕にとっては毎日の風景になってしまっていたそんなチープな夕食だが、物珍しげに無邪気に喜ぶ彼女の視線を通して見ると、これぞ豪華な旅の食事ではないかと改めて発見した気分であった。

 食事を済ませ、僕の泊まっているのよりも数段立派なホテルへと彼女を送ると、

 ちょっと待って

とおねえさんは部屋へと入り、わたし明日には日本に帰るから、と自分の物らしいTシャツを2枚僕に渡してくれた。

僕の着ているのは背中に穴が開き始めているのである。

 夜道を自分の宿へと戻ると、同じ大部屋のバックパッカー達はパンツ一丁で部屋の中に洗濯物干したりなんかしている。

ああ、そうか、僕はこっち側の旅をしているんだった。

 ねえ、みんな聞いてくれよ! 今日は俺、バックパッカーなんかじゃないホンモノの日本人のおねえさんとデートしちゃったよ。 会話はなんと全部日本語!

などと彼らに馬鹿な自慢話をして、カシュガルの夜は更けていった。

 そしてその翌日、まさにその同じカフェで、僕はキヨと再会するのである。

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 旅は私に少なからぬ人生経験を与えてくれたけど、それでもまだまだ修行が足りません。

 最近気になっている女性のあだ名は『猫ムスメ』・・・外見の事だとばかり思っていました。
それが内面にも当てはまるのだとようやく気が付いたけど、少し時間がかかってしまったようです。

アンチョビの飼い主でありながら、観察眼が足りなかったのが悔やまれます。


 ネコのハートにまだ手が届きますように・・・。

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 いい天気ですよー。
私は寒いのが苦手ですが暑いのは平気、いい季節になりました。
バンコクや南インドを思い出すなあ…。
鯉のぼりも気持ちよさそうに泳いでいます。
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 路地裏で遊ぶ子どもたちの写真を撮らせてもらおうと声をかけると、彼らはどうしてもこんな風な感じの直立不動のポーズを取ってしまうのであった。

それにしてもウイグルの子どもたちは魅力的な顔立ちをしている。

きっと昔から長い時間をかけ、たくさんの異民族の血がブレンドされて、こんな素敵な風貌がつくられたのだろう。



       ウイグルの子供達


 ・・・そんな感傷に浸っている場合ではなかった。

ヘンなガイジンがカメラなど構えていたからか、あっという間にワラワラと子どもたちが集まってきたのである。


 みんなすごいファッションだなあ。


 この2枚目の写真の後、ガキンチョの数はさらに恐ろしいほどに膨れ上がり、僕はほとんど拉致状態となって彼らと歌を唄ったり遊んだりを強要され、小一時間ほど解放してもらえなかった。


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 クチャのバスターミナルの運行表はウイグル語表記のみで、見事に解読不能であった。

問い合わせのためだけに窓口での押し合いへし合いに加わるのも面倒なので、そこらへんの人に聞いてみようと駐車場をうろうろしてみた。


 そして見つけたのが、トルファン-カシュガルという気の遠くなるような長距離バスであった。

僕はトルファンからここクチャまでに4日をかけているのに、このバスはさらにここから5~600kmはあるカシュガルまで一気に行こうとしているのである。

バスの運ちゃんに声をかけ、アクスやカシュガルまでの値段を訊こうとしていると、食事休憩中だったらしい乗客たちがどやどやと戻ってきて、


 いいからお前も乗れ乗れ、出発するぞ!


という事になってしまった。

料金はカシュガルまで55元 ( 633円 ) 、中国人料金のようであった。

 

 まあいいや、どうせカシュガルには行く訳だし。

 

 午前中に出発して、途中食事休憩。

ウイグルのじいちゃん達が、ワシらのテーブルに座れ座れとしきりに誘うので、ご一緒させてもらって彼らと同じソウメンというパスタみたいな奴を食べた。

ウイグルのじいちゃんは大好きだ。

トルファンの葡萄溝の近くに住んでいるらしかった。

 

 その後もバスは延々と砂漠を走り、日が暮れると窓の外は満天の星空であった。

空気の乾燥した砂漠での星空は、息を呑む美しさである。

地上の明かりはバスのヘッドライトのみ。

乗客たちは疲れ果て、皆寝静まっている。

 

ガラス窓にベッタリと顔を押し付けてその冷気を楽しみながら、僕は飽きもせずに星の海を眺め続けた。

 

 残念ながらこのバス、あの快適な寝台バスではない。

しかも途中乗車の僕は荷物を置くスペースを確保できず、ザックを座席の足下に無理やり押し込んでいるので、自分の足の置き場がないのであった。

睡眠は諦めて星空を楽しむしかなかったのである。

 

 あの長い時間、一体僕は何を思っていたのだろうか。

おんぼろバスでの500キロ以上の移動、日本での生活に戻った10年後の今ではもう考えられないのかもしれない。

それでも、こうして回想しているとたまらなく懐かしくなる。

 

 バスの行き先も、眠れない夜も、やがて否応なしに訪れる将来も、そして当時の僕が唯一持っていた現在でさえも、実はどうだっていいと思っていたあの頃。

 

ただ、星空だけを眺めていたあの夜。

 

 3時半を過ぎて、乗客たちがごそごそと眠りから醒め始めた。

 

・・・夜明けが近づいている。

 

 地平線がオレンジに染まり始め、まだ明けやらぬ上天の青紫と、その間の空のえもいわれぬ中間色が、それはそれは美しいグラデーションであった。

 

頭も体も疲れ果てていたのだろうか、その空の色を見て、僕は旅に出て初めて涙を流した。

 

 クチャを出て20時間後、バスはカシュガルの町に到着。

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 むむむ~…。

なんだか今年の春はセツないです。

 まだ私にもこんな想いの春が来るのだと思えば、嬉しいコトなんでしょうけど。

ハァ… 高校生みたい。

…本編を進めましょうかね。
こちらでも、恋の話が間もなく始まります。
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            異邦人 ~シルクロードのテーマ~  

                    久保田 早紀 作詞/作曲

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 とにかく旅の間じゅうよく口ずさんでいた歌でした。

 この歌がテレビから流れていたのは、私がほんの幼い頃の事であったように思うのですが、きっとよほどオサナゴコロに強烈な印象を残した曲なのでしょう。

たしか画面では、黒いベールをまとった女性が石造りの街で振り向くシーンがあったように思うのですが、表情のうちで唯一見えているその眼の美しさと強さこそが、20年後に私をこの道へと導いたのかもしれません。

 あのテレビ画面の舞台はサマルカンドとかブハラといった、もっと西の街ではなかったかと今では思います。

 

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        羊飼い

 モスクの周りはウイグル族の住宅地?のようであった。

土壁で囲まれた路地がまるで入り組んだ迷路のようだ。

その狭い路地を、羊を連れた男の子がこちらを気にしながら通ったり、角からスカーフを巻いたかわいらしい女の子がひょっこり顔を出したりするのであるから、面白くて仕方がない。

 こんな気分を味わうのは、初めて中国に上陸し上海の旧城をうろうろして以来のように思えた。

 どんな土地に行っても、そこに根をおろし、地に足をつけて堅実に生きている人々がいる。

 そんな人びとの間を、鼻歌交じりの根無し草が足取りも軽く通り過ぎてゆく・・・。

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 桜が咲いたと思ったら、今度は鯉のぼりの季節ですね。
セールスにまわっていても、何軒かのウチの庭でみかけます。

 私も最近そんな感じです。

…何が?

 滝をのぼり、空に舞え、私の…コイよ。

ウーン…。

この記事は後で引っ込めちゃおうかなあ。
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         ウイグルの爺さん

 クチャのモスクを訪ねる途中で、いつものように道に迷った。

僕は方向オンチのようで、どこでも目的地にすんなりたどり着けたためしがない。

 民家の軒下の日陰で涼みながらお茶を飲んでいるウイグルのじーさま達に道を尋ねると、格好の暇つぶしが来たわい とでも思ったのか、お茶に誘われ一座に加えられた。

ウイグルの老人たちは流暢に中国語を話す訳ではなく、僕にとってはかえってそのカタコトの中国語の方が解りやすくもあり思いのほか会話が弾んだ。

 何処から来なさった? お独りか? 結婚はしていなさらんのか?

というお決まりの質問コースに答えていると、

 ところでお前さんは、ワシらの事を知っていなさるかね?

という、ちょっと意味の掴みにくい質問がやってきた。

 僕は以前、モンゴルから中国へ戻るシベリア鉄道の中で、ハルクという名のトルコ系の民俗学者にイロイロと興味深い話をしてもらったことがあった。

そしてその話の中に、ウイグル人達は「新疆」という中国人が命名した彼らの土地の名を嫌っている、といって教わった名前がある。

 ああ、知っていますよ。 ここはシャーキ(東)トルキスタン。

と、僕がそのトルコ語の名を口にすると、ほとんどが70代の老人の彼らが、まるで青年のようにどっと沸いた。

それは、歓声というよりもむしろ雄たけびと呼ぶのがふさわしい程であった。

 かつて砂漠の通商路に覇を唱えたウイグル族であるが、かれらが漢人やモンゴルに主権を奪われたのは遠い昔の事であるはずだ。

それでもなお彼らの血の中には、その民族の誇りが脈々と受け継がれているということか。

ほんの軽い気持ちで彼らを喜ばそうと口にした名前であったが、その反応に僕は圧倒され、言葉を失った。

それは、異民族による支配の経験のない日本人の僕には解らない感情なのかもしれない。

あるいは逆に、敗戦国としてアメリカに支配された結果、その感情を失っているのかもしれない。

いずれにせよ、彼らの老人らしからぬ沸騰はこの僕にも伝わり、本当の理解は出来ないながらも、胸にアツいものがこみ上げてきた。

 じーさま達は皆でよろよろと立ち上がると、ゆっくりとした足取りで僕をモスクへと案内してくれた。

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