以前に書きました「父の肴」の続編です。
 長いので前後編に分けましたが、後編は長いみたい。
 会話だけの短編です。
 もちろんフィクションです。
 


 
  「おぅ!遅かったなぁ、もう首長~くしてお待ちかねだぞ」
 
 「おじさんこんばんは!早いじゃん、お父さん」
 
 「お母さんも来てるぞ」
 
 「え?お母さんも・・・たまにはご飯は人に作ってもらうに限る、毎日大変だもん」
 
 「料理は好きじゃなかったっけ?」
 
 「う~ん、嫌いじゃないけど作るとゆっくり晩酌って出来ないもん」
 
 「おやじさんと差し向かいでお母さんがいたからなぁ」
 
 「そそ、だからおじさん今日は頼むね~♪期待してるよ、アレはあるの?今日」
 
 「もちろん」
 
 「キャ~~楽しみ、今日はとことんいくぞ~!へパリーゼ飲んできたし」
 
 「くくっ、親子だねぇ~」
 
 「なに、意味シンな笑い・・・」
 
 「きのうお父さんから予約の電話の時アレ絶対出せよって脅かされたよ」
 
 「さすがお父さん!」
 
 「子供の頃からすっげー好きだったからな、将来は酒飲み間違いなしって思ったよなぁ」
 
 「まっね、この娘あってあの父あり」
 
 「そりゃ逆だろう」
 
 「そっかな、お母さんはそう言ってたけど」
 
 「ほぉ~、そうなのか」
 

 
 「お待たせ~」
 
 「こら、遅いぞ!こちとらもう腹ペコだ」
 
 「先に始めてくれてて良かったのに」
 
 「お父さんが待つって・・・肴が来ないってぶつぶつ言いながら」
 
 「わたしにはちゃんと名前があります~!それよりねぇねぇお母さん」
 
 「うん?何?」
 
 「お父さんが日本酒好きになったのってわたしのせいなんだよね?」
 
 「そうよ、晩酌ごっこがいつの間にか」
 
 「お~~、懐かしいな」
 
 「そうね~、いつの間にか大きくなっちゃって」
 
 「お前が何でも食べたがるし、飲みたがる、っで俺のビール飲んで苦っ!って」
 
 「あれ、幼稚園の頃だったかしらね~お父さん」
 
 「幼稚園だったか?ハハハ、お前凄い酒遍歴だな」
 
 「ちょっとぉ~、なんだか人聞き悪くない」
 
 「テレビでおちょうし持ってどうぞっておちょこにお酌しているの見てやりたいって言いだしたのよね?お父さん」
 
 「ままごとセットにそんなもんなくておもちゃ屋まわったよなぁ」
 
 「そうそう、あるわけないですよって言われてそりゃそうだってね」
 
 「ビールが苦いってのはかすかに憶えてるんだけどね」
 
 「おもちゃ屋で泣くのよ、参ったわよねお父さん」
 
 「ああ、買って貰えずごねて泣くんじゃなくて、ない~!って」
 
 「お店の方大笑いだったしね」
 
 「めっちゃ、恥ずかしいんですけど・・・なんちゅう子供だったんだわたし」
 
 「それで仕方なく本物を買うことにしたの」
 
 「お前がこれが可愛いって選んでるの見てまた店員さんが、お父さん思いなのね~って言ったんだよな」
 
 「お父さんのじゃなくてわたしのなのって、またそこでも笑われたのよね」
 
 「あ~~、ちょっと余り大きな声で言わないでよ」
 
 「それからビールしか飲まなかったお父さんがこのお店にたまに通うようになったの」
 
 「大将の選ぶ日本酒が旨くてなぁ・・・」
 
 「もう20年になるのね、あぁいやだ年とったわ・・・」
 
 「ちょっと、ちょっと、二人で感慨に浸らないでちょうだい!」
 


 
 
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