さ。新入生さまだぜ。 

ぶいぶいぶい。 

オラオラ上級生、やさしくしなっ 

ぶいぶいぶい。 

まだ赤ちゃん垢がこびりついてるベーベだぜ。 
取り扱いは国宝品レベルなんだよ。 

ぶいぶいぶい。 

うちの子泣かせたらどーなるか知ってる? 



ツケは親が払わせる。(=モンスター) 



ダメネ~。 
それダメよね~。 
ええダメよ~~~~。 



ええ。 
大事なお子様を持つ親といえど、ここは小学校です。 
先生の背中を生徒と同じように見つめ、 
上級生を信頼し 
お友達と仲良く 
個人の自主性、団体の協調性を育む場所に 

そんな個人プレイは許されません。 


あ。 
ぎょめんね。 
私、モンスターで。 


先日、こんなことがありました。 


保護者会が終わり、各学年のお母さん方がそれぞれ 
門のある校庭に出て来ました。 
天気の良い午後、芝生の校庭で遊ぶわが子を 
端の日陰でママ友同士が集まり 
談笑しながら見つめていました。 

私の視線の先にも 
保護者会の間、校庭で遊んでいた 
うちの皇太子ムスコ。 

ムスコは野球に参加し、楽しく・・・・・ 


いいえ。 

正確には、参加じゃございません。 


2年生男子が行う野球に参加させて欲しく 
羨ましそうに、熱心に 

「ぼくも仲間にいーれーてー。」 
「ぼくもいっしょにやらして。」 

と、訴えているところでございました。 

(野球といっても、バッターとピッチャーしかいませんが。 )


ピッチャーの少年は 
「次は、ちびっこにも代わってあげて!」と 
一球一球投げるたび叫んでいる。 

バッターの少年は 

それらをまるで無視して 
「いいから早く投げて!」と構えます。

ピッチャー少年は
しぶしぶボールを投げやって・・・・ 

ブーーーン 


勢いよく振るバットは綺麗に空振り。 


そもそも小学2年風情のスキルで 

当たる事は全くないのですが、

数回空振りした後、 

バッター少年は、後ろに飛んでいったボールを 
ムスコに取りに行かせました。 

ムスコは嬉々としダッシュ。 
「ボールを拾ったら、次はぼくのばんだっ!!」 
顔にかいてありました。 

眺めていた私も、全く同じことを思いました。 

ボールを拾い、ダッシュでホームベースのところまで戻り、 
自分の思う最高のフォームでピッチャーにボールを投げ 
バッター少年からバットを受けと・・・・・・ 


受け取り・・・・・・・ 



受け・・・・。 


グィーーーーっ。 


バッター少年に 
ムスコは無言で胸を押され、バッターボックスから押し出されました。 



構えるのは、また2年のバッター少年。 
ムスコは、元の位置まで戻り 
「ぼくも仲間にいれてー。」 
「いっしょにやらせてー。」 
と、訴える。 

空ぶる。 

拾いに行く。 

押し出される。 


そんなことが、5回ほど続いたところ・・・・ 


ふと気がついたことが。 



バッター少年。 
ピッチャーやムスコの訴えを無視して 
代わらないどころか、 

どうやら、自分の打てなかったボールを 
ムスコに取りに行かせて 
ありがとうも言わず、ただボールを受け取り 
「どいてっ。」と押し出している模様。 

少年は、 
遠くに飛んでいくボールを脱兎のごとく拾いに行く 
ムスコの姿をチラリと見たら、戻ってくるまで 
バットを杖に休憩。 

何回打つのか知らないが、
とにかく空ぶる度に期待に胸を膨らませ、いい切れ味で 

ボールを取りに行くムスコは 
「次こそ打たせてもらえる!」 
と諦めない。

しかし戻ると無言で自分を
押し出す上級生には戸惑っている様子。 

一体何回こんなことをやるんだろうか・・・・・。 

この時になって、私はバッター少年に 
声を掛けました。 


「ねえ?この子(ムスコ)1年生になんだ。 
少し一緒に遊んで貰えるかな?」 



バッター 
「・・・・・・。」 


「あのさ、さっきからずっと 
入れてーって言ってるじゃん。 
知ってるでしょ?」 



「知ってるけど?」 


「そっか、そしたらそろそろ順番代わってあげない?」 


「ダメだよ。まだ僕だもん。」 


「でもさ、君さっきからずっと一人で打ってるじゃん。 
みんなで遊ぼう?」 


「まだダメ。18回打たないと代われな・・・」
「もう既に20回はやってるよね?」 


「は?」 


「君が一人でずーーーーっとバッターボックスにいて、20回は打ってるでしょ?」 


「でも18回は打ってないよ。」 


「打つって・・・・当たるって事?」 


「そうだよ。」 



「・・・・あのさ。遊びのルールって知ってる?」 



「知ってるよ。」 



「自分ひとりで遊ぶんじゃなくて、ちゃんとみんなで・・・・・」 


「だ・か・ら、
ボール拾いにいかせてるじゃん。」 




と。 
きたもんだ。 



モンスターな私にはね、 
この後どう対処したらベストだったのか 
全然わかんないわけ。 


どうすんの? 
この場合。