こんにちは。

今日の議題は、とある漢字の成り立ちの信憑性についてです。

古い字典を見ているため、中国語のサイトのリンクが張ってあるときがありますので、ご自分で内容を確認したい場合は、例文以外を翻訳してお読みください。グーグルクロームの場合、右クリックから手軽に翻訳できるようです。

 

一般には、いいイメージのある”夢”という漢字。

実はもとは怖い成り立ちだというのです。

こちらのサイトによると、なんでも、角(つの)のある人が寝台に寝ている形にかたどり、悪夢の意を表す、だとか。

でも、ちょっと待ってください。

意味は悪いですが、同じパーツを持つ”薨”という字。

とても高貴な方が亡くなったときに使われる漢字だそうです。

共通する草冠と横目の意味を見ていきますと、眉飾りをつけた媚女(巫女)のことだと主張されています。

巫女は、古代には医者はいなかったので、巫女が医者の代わりもしていたことから、呪い殺されるというより、医者である巫女の介抱のもとお亡くなりになるという由来であることも十分考えられます。

そもそも、高貴な方の死を意味する敬語に、そんな悪い由来の漢字を用いるものでしょうか。

 

そこで、”夢”の由来の説で悪いのを見てしまったので、対抗した仮説を立ててみます。

そもそも、古代で巫女を先頭にして戦ったとかいう話も文献にも残っているわけでもなく、古代神話レベルの話ですし、巫女に呪われるという仮説は少々強引な気がします。

古代の神話に出てくるような話は、あり得ない話ばかりなので、鵜のみにするのはどうかと思います。

 

また、”夢”の上につく形は”瞢”という字からきており、暗くてよく見えないという意味なようですが、”蔑”の訓読みでも、”くらい”というよみもありますので、おそらく横目草冠部の形にそういう意味があり、巫女に関連があるかどうかも怪しいような気がします。

※中国最古の辞典「説文解字」で見ると、”蔑”には形容詞として「くらくてよくみえない」という意味があります。

これは”瞢”と共通部の上部の草冠横目から意味が共通していることから、やはりこの部分にそういう意味があると思われます。

下の部分は甲骨文の形を見ると”でなく”であり、「守備隊」という意味があり、人々が疲れすぎて目が曲がって鈍いという意味だそうです。守備隊は敵の攻撃を常に監視しなければなりませんから、疲れ切ってもうろうとしている様子でしょうか。守備隊がひどい扱いというのも、敵が攻めてきたら真っ先に犠牲にされ、命を軽んじられているような意味合いもあるかもしれません。

 

その他、草冠に横目の漢字は篆書体で同じような形の漢字をほかに調べてみると””(瓦敷きの垂木)で、巫女に関係あるとは思えません

横目草冠に「くらくてよくみえない」意味があるとすると、””は覆うという意味なようなので、「”瓦”で覆われていてよく見えない垂木」とすると、意味が通りますね。

”も”目”が覆われ(””)てよく見えない、となり意味も通ります。

”夢”の篆書体の上の部分をみても、何も考えないで見れば、単に眉をひそめたようにもみえますし、媚女とか、巫女とか難しいことでないような気もします。

 

それに、必ずしも悪夢が起源かどうかはわかりませんよね。古代だからといって、いい夢を全く見ないわけでもないでしょうし。

 

つまり、”夢”の漢字の成り立ちとしては、”寝たときに見るよく見えないなにか”といった単純な話になるのではないでしょうか。

 

なお、この恐ろしい説は角川文庫の本がもとらしいですが、他の出版社のレベルでも異説があるくらいですから、確かな話ではないということでしょう。