創作童話


おおごえ、さい太(仮題)

(あめつちひと、作)



その1

むかしむかし、まだ、やまもかわもおおきくて立派だった頃
林に囲まれた、ある村に、さい太と言う名の男の子がいました。

一見ふつうのどこにでもいる子どもに見えた、さい太ですが
その声だけは、とてもとてもおおきくて
いくらひそひそ話をしても、村じゅうに声が聞こえてしまうほどでした。



むらのこどもたちはみんな元気でなかよしです。
おとこのこたちはいたずらも大好きなのですが

田んぼで遊んで泥だらけになって叱られた時も
ともだちみんなで、お地蔵さんのおまんじゅうを食べて叱られた時も
となりのうちの馬小屋に、野ネズミを放り込んで馬が暴れだし
みんなで叱られた時も
さい太の、「ごめんなさい」だけが
村じゅうに聞こえてしまいます。

おねしょをして、おかあさんにしかられると
できるだけちいさなこえで
「ごめんなさい、もうおねしょはしません」と言うのですが
やっぱりそれが村じゅうに聞こえてしまいます。

にんじんは食べられないとか
お尻に、でき物ができて、お尻をずらしてしか座れないとか
寝るときは、かーちゃんの背中にしがみついていないと寝られないとか

どうでもいいようなことまですべて
さい太の事はみんなに分かってしまいます。




やがて、少し大きくなって、畑仕事のおてつだいが
すこしづつできるようになり

いつしか、さい太はみんなから、すこし、いじめられるようになりました。



仕事のお手伝いが少しできると言っても
もちろんまだまだ子供です。

「おーい、さい太。おまえ、まだ、夜中にひとりで、厠にいけないのんか。」

じつは、まだまだ、そんな子は多かったのですが
さい太の大声だけは、「かーちゃん、一緒について行っておくれ」
と、みんなにきこえてしまうのです。


みんなとおなじことをしていても、さい太だけは、笑われる。


やさしくまじめでおとなしい子だったのですが
やがて、さい太は、みんなと遊ばなくなりました。





(つづく)







(*、100%自作のつもりですが、類似のものがあれば、ご指摘くださいね)