天皇と皇室の歴史を知ると、皇統に生まれたがために悲劇に見舞われた皇子が何人もいます。その中でも有名な皇子の一人が有間皇子です。

 

大化の改新の後は、中大兄皇子(後の天智天皇)、大海人皇子(後の天武天皇)の活躍が目立つ時代となっていきますが、その時代に惜しまれ語り継がれたのが孝徳天皇の皇子、有間皇子でした。

 

孝徳天皇の宮、難波宮跡↓

DSC_4260.JPG

大阪歴史博物館から見える難波宮跡公園

DSC_1577.JPG

 

 

乙巳の変後に即位された孝徳天皇は、都を難波に定めましたが、中大兄皇子が飛鳥に戻すことを進言しました。孝徳天皇が聞き入れないと対立が深まり、中大兄皇子は皇后の間人皇女(中大兄皇子の異母妹)や弟の大海人皇子他多くの宮廷の人達を引き連れて、飛鳥に遷ってしまいました。失意の中その翌年天皇は寂しく崩御されたと伝えられます。大化の改新後の政権は中大兄皇子らが中心になっていたといわれますが、日本初の元号を始めたり、都を交通の便の良い難波に遷されたことなどは、当時の状況をみれば孝徳天皇の案だったでしょうから、天皇として懸命に動かれていたことが伺えます。しかし、中大兄皇子の勢力の方が強かったのです。

 

天皇が崩御された時、有間皇子は14歳でした。先帝の皇子ですから政争に巻き込まれる恐れがあり、それを避けるため2年半後、心の病を装い療養と称して紀伊の牟婁湯に退避されます。後に飛鳥に帰った有間皇子は病気が治ったことを重祚された斉明天皇(皇極天皇)へ報告し、その土地の素晴らしさを伝えたので、斉明天皇は紀の湯に行幸されました。

 

その時、飛鳥に残っていた有間皇子に曽我赤兄が近づき斉明天皇や中大兄皇子の失政を糾弾し、自分は有間皇子の味方だとして謀反をそそのかしました。有間皇子は喜び斉明天皇や中大兄皇子を倒すという自らの意思を明らかにしたといいます。しかし、蘇我赤兄はこれを密告したため、有間皇子は捕らえられ、中大兄皇子に尋問された翌翌日絞首刑に処せられました。斉明天皇四年十一月十一日(658年)のことです。本日は旧暦11月11日ですから、旧暦でいえば1365年前の本日の事です。


まだ19歳だったといわれますがそれは数え歳ですから、実際は18歳の若さと言った方がわかりやすいかと思います。


蘇我赤兄は中大兄皇子の意向で有間皇子に近づいたといわれています。つまり有間皇子はそこまで中大兄皇子に畏れられる存在だったといえます。

 

心の病を装ったことや、中大兄皇子がわざわざ蘇我赤兄を近づけたことから、有間皇子の賢さや、人々からの期待度が伺え知れますから、有望な人材がまだ若いうちに芽が摘まれた悲劇の皇子だったのだといえます。

 

惜しまれた皇子だからでしょう、有間皇子には後世の人が託したと伝えられる和歌が万葉集に2首あります。

 

磐代の 浜松が枝を 引き結び
ま幸くあらば また還り見む

 

家にあれば 笥に盛る飯を 草枕
旅にしあれば  椎の葉に盛る

 

また山上憶良による追悼歌や軽皇子(孝徳天皇)を偲んで歌われた歌も万葉集には記載されています。

 

令和の元号で注目された万葉集ですが、和歌を詠った人や歌われた人に注目するとより興味深いかと思います。

 

、日本書紀編纂時に一番近い過去の時代がこの頃といえます。

 

有間皇子が薨去された藤白坂には、有間皇子神社が藤白神社の境内社としてあり、新暦11月11日に有間皇子祭りが行われています。なお、藤白神社は、藤白鈴木姓の拠点とされていたことから全国鈴木サミットも開かれている場所でもあります。

 

有間皇子の墓地伝承地

 

大阪歴史博物館では、難波宮の跡地やこの時代を探索することができます。この博物館はなんと難波宮の跡地に建てられており地下に残された遺構を見学することもできます。冒頭の写真はここの写真です。

 

 

有間皇子が斉明天皇にお薦めした温泉

 

また、有間皇子はその名前から連想される通り、有馬温泉と縁があり、父帝がまだ皇子の軽皇子の時に妃の阿部小足媛と有馬温泉に湯治に赴かれた時に授かったことから命名されたといいます。当時は、こうした地名からの命名が多かった時代でありました。

 

有間皇子の悲劇は父帝も含め後援者がいなかったことです。誰か有力な豪族とか大人がいれば、もしかしたら有間皇子の運命は違っていたかもしれません。そして何よりも有間皇子がたった一人で孤軍奮闘していたことwを多くの人が見ていたからこそ、今も伝わる悲劇の皇子となっているのではないでしょうか。有間皇子はその期待された才能と未来を大勢の人に惜しまれ慰霊され続けてきましたが、本日縁の日本武尊を含め、こうしたことが繰り返されてきた歴史を、伝え続けていくことが新たな悲劇を生み出さないことに繋がっていくことを願うばかりです。

 

 

 

🌸🐎🐎🐎🐎🐎🐎🐎🐎🐎