一昨日、やっと「万引き家族」を観てきました。

 

この映画、カンヌでパルムドールを受賞したのにあることないことがネットで書かれていました。それは是枝監督のインタビューやその後の発言によって起きたことですが、映画を観ていないのにその作品について語る人が多いのは意味がないと感じていました。監督が気に食わなくても、映画そのものの評価はまた別です。

 

先日のHINOMARUの歌の騒動で、「アーティストから言葉を奪うな」というのが全てを語っていたのと同じ本質だと思います。この場合は「アーティストから作品を奪うな」でしょうか。描かれた題材が気に食わない、あるいは監督自身が気に食わないからといって、作品そのものの評価等には全く関係ない話です。

 

さらにいえばパルムドールを受賞したような映画を観ないことはせっかくの機会を逃していることになります。

 

有名なカンヌ映画祭とはいえ、結局は審査員の意向で決まる賞だから、その時により賞の受賞作傾向も変わる映画祭で、なんでこんな映画が賞を?みたいなことがあるのも事実ですが(そういう映画は結局忘れ去られてしまいます)、この映画に関しては真のパルムドール受賞映画の一つだと思います。

 

このパルムドール受賞だけでなくネットで騒がれたのが宣伝効果抜群だったのか、レディースディだったこともあり映画館は満員で、私は久しぶりに前方脇の席で見ることになりました。多くの方々がこの映画を観ているのは喜ばしいことだと思います。

 

実はこの騒動で、映画を観る気持ちがちょっと失せていました。なんとなく面倒くさくなってしまっていたのですが、観に行って良かった。

本当に素晴らしいドラマとなっていたのです。なんといっても、少年が真実に気づき成長していく物語となっていたのがうまい物語でした。

 

この映画の中では、現代日本の問題点がうまく組み込まれているストーリーとなっているのが凄かったです。是枝監督は新聞の片隅の記事などから以前も「誰も知らない」という映画を作り上げましたが、新聞の記事から触発されることが多いそうで、今回も何年も前の年金問題がこうしたストーリーを書くきっかけとなったと言います。そしてその物語に日本の様々な問題を盛り込んだのです。

 

万引き

年金不正受給

年金受給者に依存する人々

働かない人

仕事の首切り

DV

幼児虐待

パチンコ

パチンコのための育児放棄

不妊

片づけられない人

JK風俗

家族崩壊

孤立する老人

孤立する若者

孤立する人

地域との孤立

 

しかもこれだけの問題のどれも映画の最後まで解決はしません。ただ淡々とこうした物語を描いています。この視点も重要です。観察者に徹したドキュメンタリータッチの物語となっており、一層リアルな物語となっているのです。

 

これはあの柳楽優弥君が最年少で男優賞を獲った映画「誰も知らない」の時もそうでしたが、監督はこうした社会の問題を切り取った物語を私達に見せつけ考えさせるのです。そういう意味では、今回のこの映画の受賞で起きたさまざまなバッシングにより映画が注目されたことはこうしたことを多くの人に考えさせる機会にもなったかもしれません。

 

だから私は、この映画について色々と書いた人で映画そのものを観ていない人には今からでも是非、映画を観て欲しいと思います。映画を観ないで言っていること書いていることは映画を観てる人はすぐわかります。映画は物語ですから、瞬間の写真だけ見ても意味がないのです。全体を観なければその評価はできません。思い込みだけで語れるものではないのです。簡単なあらすじで想像したもの通りに映画が作られているとは限りません。

 

また、映画評論家とか映画ナビゲーターとか、色んな映画について語る職業の人がいますが、私は基本そうした方々の話を信用していません。なんでもそうですが、人によってその価値観は違います。同じように思えても微妙な違いがあることもあります。ある評論家がこの映画はAだと語ったとしても、その映画はBだと考える人もいれば、Cだと考える人もいます。だから、映画評論家系の話は聞かないで観ることが肝心だと思います。

 

今とても有名な映画評論家がいてその人のこの映画に対する発言も話題となっていますが、見当違いの発言と言わざるを得ません。確かに映画について勉強されていてその情報量も凄いのですが、ちょこちょこ違和感のある発言がみうけられるので、私は一部情報を得る以外聞かないようにしています。(実は映画関連の雑誌が堕ちてしまったのはこの人のせいだと考えているのもあります。)今回もおかしな発言でした。この発言で映画を敬遠されるようなことがあったらもったいないことだと感じています。

 

 

この映画の公開後痛ましい事件が起きてしまいましたが、それにより映画のリアルさが浮かび上がりました。この映画に対して、日本の物語じゃないなどという言葉もありましたが、この映画は日本の問題点が総括されたような物語なのです。

 

この映画を観て多くの人達が問題意識を持つ、そんなきっかけになる映画になってほしいと思います。

 

少しでも興味を持たれた方は、是非この映画をご覧になってみて下さい。

 

なお、この映画についてあることないこと書かれた中に、「監督は文化庁の補助金助成で映画を作っているのに、映画のクレジットにそうしたことが書かれてなかった」、というのがありましたが映画のラストクレジットにも映画のパンフレットにもしっかり記載されていることを確認しました。

 

それ以外についても映画を観れば、本当かどうかわかりますので疑問抱いた方も是非映画を観て確認してほしいと思います。

 

ただし、この映画は子供には見せないでください。

R指定があったかどうか覚えていませんが、風俗描写等があります。

 

 

 

祝 パルムドール・・・世界に出ていった日本の先人に学ぶ