大阪府枚方市の樟葉に交野天神社があります。その神社の奥には貴船神社があるのですが、その貴船神社の辺りはその昔継体天皇の樟葉の宮があったと伝わる場所です。
継体天皇元年二月四日、天皇はこの地で即位され仁賢天皇の皇女、手白香皇女を皇后にお迎えしました。そしてその直後の三月九日、天皇が詔を出されました。
「男が耕作しなければ民は飢える、女が紡がないと天下は凍える、だから帝王は自ら耕作して農を勧め、后妃は自ら養蚕をして桑を与える時間を過つなかれ、まして百官(諸役人)から万人に至るまで、農桑を怠っては富栄えることは出来ぬ、天下に朕が意を伝えよ」
この詔では、継体天皇は自ら耕し、皇后は養蚕をすると語られており、役人を含め万人が働かなければ富栄えることは出来ないと語っています。古代の暦は今とはずいぶん違うとはいえ、本日は旧暦では三月九日ですし、農耕が開始されるこの時期に合わせての詔だったのでしょう。
この自ら耕し、万人まで働くという語り口は、明治天皇の教育勅語が、天皇と一緒に実践しようというのとそっくりです。こうした古来からの詔の例を見習って教育勅語はできたのかもしれません。
神は人の敬によりて威を増し人は神の徳によりて運を添ふ という言葉がありますが、これは
「天皇は人(民)の敬によりて威を増し人(民)は天皇の徳によりて運を添ふ」ということだと私は考えています。そしてこのような日本になったのは、歴代の天皇が範となってきたからだと思うのです。どんなところも上を下は見習います。そのトップの姿が、下にいる人達の姿であり、つまりは下にいる人達の姿がトップの姿ともなりうるのです。
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2018年04月24日 06:07
我国は働くことを尊ぶ国ですが、働くことを尊ぶということは日本では当たり前でも実は世界では珍しいことです。
そもそも「働く」という漢字はもともと存在しませんでした。そこで日本で「人」が「動く」ことを組み合わせて出来上がった(漢字でなく)国字なのです。つまりこれが意味することは漢字の言葉の中には「働く」という概念がなかったということになります。だからこそ、日本人が字を組み合わせて作り上げなければならなかった字なのです。
日本では神様自らが働いています。神話の中では、天照大神が機を織り、稲を育てるのです。一方西洋では労働は神からの罰であり、神様は働きません。だからこそ支配者階級も働かなかったのです。それは大陸でも同様で、そこに連なる半島も同様です。だからこそ、古来から日本に渡ってきた職人達が祖国では蔑まされるのに日本では尊敬されるので帰国するのを嫌がり日本に骨をうずめたという話が沢山残っているわけです。
そして、神様が働く我が国では天皇も働きます。そもそも、神武天皇の東征がなぜ成功しその後の歴代の天皇がヤマトをまとめあげていくことができたのかといえば、稲作の仕方を教えていったからだといいます。稲作には厳しい労働がつきものです。まず水田を作るのが大変ですし、春から秋まで実るまでの時間がかかります。また、その間に悪天候や災害が起きれば、それまでの労働が無に帰してしまうのです。しかし、それでも収穫に辿りついた時に生まれる安定が大きかったからこそ普及させていくことが出来たわけです。
そうしたことを普及させることでまとめられた国が労働を尊ばないはずがないのです。
百人一首の一番歌は天智天皇の歌に始まりますが、この歌は天皇自らが稲刈りをすることを歌っています。
私達は、今もそのお姿を今上天皇の御姿から伺うことができます。
同じく百人一首の二番歌は、持統天皇の歌ですが、こちらは自ら洗濯をした衣についての歌となっています。
皇室では天照大御神に始まる機織りの伝統に連なる養蚕が、皇后陛下自ら行われています。蚕には小石丸という育てるのが大変な種がありましたが、皇室で養蚕を続けて行くことでその種が残りました。そしてその事が後に正倉院の復元プロジェクトの時に大きな成果となりました。品種改良が進んだ現在では難しかった復元が、皇后陛下の育てられていた小石丸の繭によって可能となったのです。そして新しいプロジェクトも生まれました。これは伝統を繋げていたから出来たことで、もし途絶えていたらそこで終わってしまっていました。
小石丸についての詳細はこちらの動画をご覧ください↓
こうした考え方が基本にあるからこそ、我国は現在の繁栄を享受し、大災害の後の復興も他国に比べれば迅速に進めることができているのです。バブル経済の崩壊後ももがきながらも世界の多くの国々に比べれば豊かな生活を営んで来られました。それは、人々が日々働くのが当たり前であるからこそです。今の私達があるというその根本の考え方ができたのは、神話に連なる我国の伝統であるということを私達はもっと意識すべきなのではないか、と継体天皇の詔を知ってから考えるのです。
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2018年04月24日 06:16