言葉は使わなければ消えてしまいますが、使ってさえいれば生きた言葉となります。
現在メディアは、天皇、皇室への敬称をちゃんと使用しませんし、それをちゃんと教えてくれるところがありません。たまにしか使う機会のない言葉などは、わかりようがありません。しかし日本語を守るのは日本人以外にいません。私達が守らなければ、言葉は消えていってしまいます。
敬語は古の時代からの積み重ねによる、人間関係の知恵です。そして、その始まりは尊敬し敬った神、そして天皇がいました。現在でも神社で聞く祝詞は古来からの敬語がそのまま使用されています。そして、天皇、皇室にも沢山の敬語や敬称が残っています。神話から続く国として世界で唯一の国であるからこそ、そのような言葉が今も生きているのです。
敬語は身分の上下を表すものではなく、自分の教養や常識・心得を表すものです。敬語を使いこなせるということは、それだけ教養があり、常識も対人関係の心得もあるということになります。わかりやすくいえば、敬語が使いこなせたらかっこいいではありませんか。しかも、その言葉は古と今とを繋ぐ言葉でもあるのです。せっかくですから覚えたいものです。
もしかしたらいつか宮中に参内できるかもしれません。
-宮中に参上すること
あるいは拝謁できるかもしれません。
-天皇皇族にこちらから謁すること
謁を賜るかもしれません。
-天皇皇族から謁見を賜ふこと
奏上する機会があるかもしれません。
-天皇に言葉で申し上げること
内奏する機会があるかもしれません。
-内々に申し上げること
供奉するかもしれません。
-行幸啓の御供を正式に命じられてお供をすること
こう書くと普通の人にはなかなか起きない事のように思えますが行幸啓でいらした天皇、皇族の方々を案内するという事は普通の人に起きうることだと思います。
もしそういうことになったら、とても緊張すると思いますが、こうした言葉を知っていれば多少なりとも安心できるのではないでしょうか。
そうはいっても普段天皇や皇室の方々と話す機会などやはりなかなかありません。しかし敬称でしたら誰でもすぐに使えます。もしお名前を口にするのでしたら、敬称をきちんと使ってみて下さい。それだけでも自分がとても教養があり、上品に思えてくるから言葉というのはとても不思議な力があると思います。
①実名敬避
まず最初に実名敬避という敬語について、しっかり覚えて下さい。天皇陛下のお名前、皇族方のお名前は敬い出来うる限り避けてお呼びしません。私が子供の頃、昭和天皇は陛下としか呼ばれていませんでしたので、私が初めて昭和天皇の名前を知ったのは21歳の時イギリス人の英語教師に言われた時で、英語なものですから呼び捨てでたいそうショックを受けたのを今でも覚えています。皇太子殿下も秋篠宮殿下も宮名で呼ばれていました。子供の頃は他にも呼び名があるようだしおかしいなあと思っていたのですが、これは実名を呼ぶことを避けるためにつけられていた称号でした。ところが誰もそうしたことを教えてくれませんでしたので混乱してしまったのです。
②尊称
陛下
天皇と皇后、太皇太后、皇太后の敬称(現行皇室典範二十三条)
天皇皇后両陛下 天皇皇后お二方を同時にお呼びする場合
殿下
皇太子・皇太子妃・皇太孫・皇太孫妃・親王・内親王・王・王妃・女王の敬称(現行皇室典範二十三条)
皇太子同妃両殿下 お二方を同時にお呼びする場合。皇太子夫妻とはお呼びしません。
天皇
天皇は一般名称として使う時はそのまま使用します。
御在位中の天皇
今上陛下
今上天皇
天皇陛下
陛下
御在位中の天皇には(天皇の)名前がありません。時代により帝(みかど)、大君(おおきみ)など、色んな呼び方がありましたが古来から名前がなかったことに変わりはありませんから、他に申し上げる敬称はないと覚えて下さい。なお「今上天皇陛下」とは申しませんのでご注意ください。
歴史上の天皇
〇〇天皇
〇〇院
〇〇上皇
〇〇法皇
名前だけで呼ぶことはありませんので、省略しないでください。また歴史上の天皇の名前には陛下はつけません。
京都など、長く都があった場所や縁の深い場所では親しみをこめて「〇〇さん(この場合様の意味)」と呼ばれるところがありますが、そうしたところは限られており、基本は上記の呼び方で申し上げます。
皇后
皇后陛下
陛下
親愛の情で「皇后様」とお呼びする場合もありますが、天皇陛下と同様御名前はお呼びしません。
皇太后(先帝の皇后)
太皇太后(先々帝の皇后)
皇太后陛下
太皇太后陛下
または、皇太后宮、太皇太后宮とお呼びする場合もありますがこの場合は陛下をつけません。明治以降、太皇太后はいらっしゃいません。
二千年の歴史軽視を明言!譲位後、皇后の称号を創作する有識者会議って・・・
皇太子
皇太子殿下
皇位継承第一位で天皇の皇男子の場合を皇太子(孫の場合は皇太孫)。親愛の情をもって皇太子様とお呼びする場合があります。また、東宮(とうぐう)、春宮(はるのみや)と呼ぶ場合がありますが、この場合は殿下をつけません。立太子礼をお挙げにならなくても明らかに次代の皇位の御践見になられる場合は皇太子殿下とお呼びしても差し支えありません。御名前ではお呼び致しません。
皇太子妃
皇太子妃殿下
親愛の情をもって皇太子妃様とお呼びする場合があります。東宮妃殿下とも申し上げます。御名前でお呼びいたしません。
皇太子同妃両殿下
皇太子殿下と妃殿下を一緒にお呼びする場合。皇太子ご夫妻、またご家族を皇太子ご一家などとは申しません。
皇太弟
皇太弟殿下
皇子ではなく皇弟が皇位継承順位の一位であったことが歴史上何度かありますが、皇室典範には皇太弟の規定がなく称号がありません。しかし歴史上からも、現在の皇太子殿下が即位されてましたら、秋篠宮殿下が皇太弟となりますから皇太弟殿下となりますので、これを規定としおかしな敬称をわざわざ作る必要はありません。御名前ではお呼びいたしません。
皇族に関する敬称
〇〇宮〇〇親王(内親王・王・女王)殿下
宮号は皇族が独立して宮家を御創設した場合に賜ります。
秋篠宮文仁親王殿下
秋篠宮殿下
秋篠宮文仁親王妃
秋篠宮紀子妃殿下
秋篠宮妃殿下
親愛の情をもって秋篠宮様とお呼びする場合がありますがお名前だけではお呼びいたしません。
〇〇宮同妃両殿下
皇族と同妃を御一緒に御呼び申し上げる場合。〇〇宮ご夫妻とは申しません。
御称号
敬宮愛子内親王殿下
敬宮内親王殿下
敬宮殿下
敬宮様
天皇の直系である皇族は宮号がないため、親王・内親王がご誕生の場合、御命名と共に御称号を賜ります。この御称号は成人までのもので、それ以後は用いない例です。この場合殿下の敬称をつけます。お名前ではお呼びしません。現在御称号があるのは、皇太子殿下の内親王であられる敬宮愛子内親王殿下です。
皇室・皇族
皇室には姓がないため、「天皇家」、「天皇ご一家」とは申し上げません。また、一族という意味では、「皇室」、「皇族」を使用します。なお「皇」の字は既に敬意がありますので、「御皇室」「御皇族」申し上げません。
皇室に対する親愛の情を育て、美しく麗しい国語を守るために
昨年「一般敬語と皇室敬語が分かる本」が出版されていたのを最近見つけました。私が「宮中祭祀」で参考にしているのも著者の中澤伸弘さんが書かれたものです。
一般敬語についてもわかりやすく、皇室敬語についてもこれ一冊でわかるかと思いますので、一家に一冊いかがでしょうか。私はこれを読んで間違えていた用語をいくつもみつけて焦っているところです。
二千年以上の間に培ってきた皇室と国民との親愛の情の表れである「皇室敬語」。今、改めて敬語や皇室敬語・皇室用語を学び、その折々に適宜な敬語を使いましょう。
恒例の目次紹介です。
目次
まへがき
一 敬語を知る
敬語とはなにか
敬語は美しいことば
言霊と敬語
実名敬避といふ敬語
平明・簡素な敬語とは
接頭語「お」「ご」は敬語
口語表現と文語表現
欠画、擡頭、平出、欠字 書き方による敬語表記
敬語は生きてゐる
二 尊敬語編
尊敬語とはなにか
「れる」「られる」は汚いことば
お前 貴様 殿
特別な尊敬語がある語
「たま(給)ふ」は便利な尊敬語
尊敬語における和語表現と漢語表現
三 謙譲語編
謙譲語とはなにか
他の語の謙譲語があるもの
人間には「あげる」 動物には「やる」
「をられます」は大誤用
「まつ(奉)る」「まゐ(参)る」は便利な謙譲語
謙譲語における文語表現と漢語表現
四 丁寧語編
丁寧語とはなにか
はべり(侍り)とさぶらふ(候ふ)
候文
五 皇室敬語編
皇室敬語を学ぶ前に
皇室敬語の現状
天皇、皇族方に関する特別な敬語
「昭憲皇太后」は誤りの表記
「大婚」の語の行方
皇太子に関する敬称
皇太子妃に関する敬称
皇族に関する敬称
御歴代に関する敬称
六 皇室関係の用語と敬称
皇室全般に関する主な用語、敬称
国民から申し上げる主な敬語
使用範囲が限られる主な敬語
あとがき