鉄条網の草原 | 4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

4コマ漫画「アメリカは今日もアレだった」

アメリカ暮らし漫画と昔の日本での愛犬物語です。

 つづいて、南西の草原もひろい場所です。
草の種類の多さでいうと、ここは五つの草原の中で随一を誇ります。

ピピはいつだって、すいすいとこの草原に入っていきます。
でも、わたしはまた、ぐるっと回らなくてはなりません。
なぜならこの草原は、鋭い大トゲの鉄条網が、ずうっと、ずらっと、みごとに囲んでいるからです。

さあ、わたしがめざす鉄条網の「穴」につきました。

そこだけ、なぜか鉄条網の下半分が壊れていて、わたしがからだをかがめ、そおっと進むと、なんとか服をひっかけずに入ることができるのです。

 

首尾よく入場し、立ち上がって見渡すと、まず、草刈り機械がつけた轍(わだち)に沿って、そのくぼみにあつまる雨水で生きる草が列をつくっています。

この草は、しろっぽい地面の肌にできた、緑の丸いコブみたいです。
コブ、コブ、コブたちは、ほとんどまっすぐな行列をつくって、南北にずっと、伸びているのです。

 

それから、このコブ域外には、ところどころに小さな木が生えていました。
これは、ノグルミという植物で、まつぼっくりに似た、細長いくろい実を落とします。
ノグルミの周りには、ノシバが長く白い指を何本もひろげ、地面を静かに這い進んでいます。

そして、この白い指先たちは、いくつもの落とし物カツラを指さしていました。

 

え? カツラ? 

はい。頭にかぶる、あのカツラです。
といっても、ほんとうのカツラではなく、植物のスゲの仲間で、地面からいきなり細長い葉っぱが、ふさふさと生え出しているのです。

この、一本いっぽんがとても細く、まさにたくさんの髪の毛のような草は、なんと虹色でした。
白茶いろ、黄いろ、薄緑、赤紫。

の、グラデーション。


まったく、まるで昨晩、パーティで騒ぎに騒いだお調子者さんたちの、ど派手にごきげんな仮装かつらの忘れ物、みたいなのでした。