アメリカの最高裁判所は判事が終身任期で、最近のケネデイ判事退職後誰が後継者に選ばれるかは重大な問題でした。今まで定員9人の内、保守派4人、リベラル4人で中間派のケネデイ判事が極端な保守的な裁決を抑え、立法を中道に保ってきました。自身の金儲け以外に政治信念のないトランプ大統領は選挙に勝つためにネオナチなど極右団体や南部州保守派に迎合、極右の、カヴァナー,ニューヨーク州判事をケネデイ判事の後継者に指名しました。

 

妊娠中絶は違法、大統領権限を更に広げる、などなど、超右翼理論のカヴァナーがすったもんだの挙句、米国最高裁判所判事に就任しました。

 

その1週間前、カヴァナーの最高裁判事任命が上院司法委員会で審議されたときに、今は大学教授をしている女性が高校の時にこれも高校生だったカヴァナーにセクハラをされたとの告発があり、野党女性議員の質問に対しカヴァナーは全面的に否認しました。

 

Trump Agrees to Open ‘Limited’ F.B.I. Investigation Into Accusations Against hHANNJIKavanaugh

NY Times  Sep. 28, 2018

 

上院法務委員会での質問:

フォード教授「パーテイの最中に2階のトイレに行こうとしたら、隣の寝室に押し 込められ、鍵をかけられ、部屋のラジオの音量を上げ、酔っ払ったカヴァナーにベッドの上に襲いかかられ、服を脱がされそうになり、助けを呼ぼうと声を出したら、口を押さえられて、息ができず死ぬかと思いました。彼の友達のマークが見ていました。マークは助けるどころか、二人で大笑いをしながらです。その笑い声が何十年経った今でも恐ろしい記憶として残っています。」

民主党法務委員「アタッカーがカバナーだったのは確かですか?」

フォード教授「100%確かです」

 

フォード教授の尋問の同じ日の午後カヴァナーへの質問がありました。家庭のりっぱさ、学生時代の自分の成績優秀さ、スポーツ万能でキャプテンをしたことなど、質問に関係ない事ばかりを述べ、学生時代のセクハラの事実を否定、ウソをつき通しました。民主党(野党)法務委員の一人の「FBIの調べを受けることに同意しますね」という質問に、答えられなく、数秒の沈黙がありました。

酔っ払って記憶がないことはありましたか、の質問も、「私はビールは大好きです。でも酔っ払ったことはありません。18歳は違法ではありません。いいえ、ビールだけです」とビールを強調しました。その夜のテレビニュースでは、学生時代の友人が質問を受けましたが、カヴァナーは大酒飲みで、酔っぱらうと性格が別人の様に代わり酔い潰れも希ではなかった、と証言しました。(カヴァナーの時にはアルコールは21歳が合法でした)

 

一人の良識ある与党議員の要請で、FBIの調査をするから投票は1週間延期と決まった時、私たちは良かった、と胸を撫でおろしましたが、なんと、トランプは肝心の当事者に尋問してはいけないと命令を出したのです。FBIにです!翌々日上院投票は50対48でカバナーの承認が決まりました。ウソをついているのを見ているのに関わらずです。11月6日には中間選挙があるのです。

 

トランプは、始めは告発者のフォード教授は立派な女性で供述は信憑性が高いと言っていたのに、尋問の日の後、地方の選挙運動に出かけての講演では彼女をひどくこき下ろしました。「場所はどこ?知らないわ、いつ?知らないわ、どうやってうちに帰ったの?知らないわ、知らないわ、知らないわ」とまるでバカ呼ばわりをしました。あれは知性ある人々に対する劣等感の表れです。それを喜ぶ人がいるとは、アメリカ社会の低俗性を露呈しています。

 

トランプ自身は少なくとも24人もの女性にセクハラをしていて、みんな否定しています。もし、カヴァナーが承認されなかったら、もっと犠牲者が公に出てくるだろうし、今後レイプが減るかもしれなかっただろうに。アメリカでは女性3人に1人はセクハラの犠牲者だそうです。イギリスの調べでは被害者が事実を証言するのは平均52歳だそうです。それまで長年トラウマを抱えて生きているのです。

 

アメリカの憲法は三権分立が民主主義を擁護しているはずですが、今後はどうなるのでしょうか。トランプ政権下では大統領の拡大権限で、行政(議会)も司法も独立性を失いいつつあります。