東チベット旅、その後 〜子供の歳の話し〜 | 世界一周行ってきます!と果たして言う事ができるのだろうか
成都で誕生日を迎えた。

人生、あっという間の33歳である。


33歳…




33歳といえば、すっかり大人だ。
いや、すっかり、というか随分前から、とうに大人だ。
社会人も10年目だし、ある程度の経験は積んできた。



しかし、だ。




アレが済んでいないのだ。


恥ずかしながら、アレを済ますことなく、旅なんかに没頭している。


今日は、そんな恋やら愛やらの話し。


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成都。



帰国のフライトは朝の7時と早かった。


昼過ぎにたつチケットもあったのだが、どうしても夕方までには日本に着きたかった。


というのは、この日は高校の同窓会があるのだ。



かくして、飛行機は滞りなく中部空港に着陸した。



実は、この時ぼくは、こんなよからぬことを考えていた。


(一度、家に帰る時間はない。直接同窓会の会場に向かおう。バックパックを背負っての登場…え?カ、カッコイイじゃん!)


ぼくは、空港の薬局へ行くと髭剃りを購入。
9日間生えっぱなしの髭をトイレで剃ると、さらにユニクロでシャツを買い、3日間着続けたものと替えた。


(さあ、これで準備万端だ。)


電車を乗り継ぎ、名古屋駅の目的の店には、開始時刻より10分ほど遅れての到着である。


そして、襖越しに、すでに少し盛り上がっているらしい声が聞こえる…



ぼくはバックパックを担ぎ直し、シャツを整え、乱れた髪を手で直して、襖を開けた。


ぼく『どうも、飛行機がちょっと遅れちゃって!』
(本当は、まったく遅れていない…)


Aさん『へー?直接来たんだ!』


ぼく『そうなんだ!』


(次の質問は、「どこいってたの?」でしょ。もちろんぼくは、東チベットと答えるぞ。)


Aさん『えーと、とにかく、みんなで写真とろう!』

記念写真パシャり。


あれ?


そう、ぼくはこの時から違和感を覚えていたのだ。


改めて、席に着くと、


ぼく『いやあ疲れたな、今日は移動ばかりで!』
(飛行機乗り継いだだけ)


Bくん『いいな〇〇は、夏休み自由にどこにでも行けて。』

ぼく『そうかなあ…』

あ、ヤバイ。この会話の流れは、知っている。最近よく出くわすヤツだ。しかし、このストーリーから逃れる術をぼくは知らない…


ぼく『で、でも夏休みはあったんだろ?』


Bくん『うちは、ガキが小さいからさあ…』


Aさん『え?何歳だっけ?』


Bくん『3歳になるよ。ちょうど手がかかって。』


Cさん『うちも、うちも。じゃあ同級生だね。大変だよねー。』


Bくん『あれ、Aさんのとこは、いくつになったの?』


Aさん『まだ3ヶ月。だから今日は早く帰らなきゃいけないんだ。』


Dくん『今度、家を買おうと思ってるんだけど…』


(以下略)


ズブブブブ

出てきたビールをすすりながら、1、2、3…と数えてみて驚いた。


なんと、出席者15人中、13人が既婚者だったのだ。


当然、ぼくは未婚グループ(グループっていうか、2人しかいないけど…)。つまり、アレ=結婚を済ませてない組であった。


そしてだれも、東チベットなんかに興味を示す人はいなかったのだ。


そう。


これが現実。


知っていたけど、知らないふりをしていた現実。

時間は流れているのだ。







ふと、2年前に結婚したEさんに、誰かが聞いた。


『結婚してから何年たつっけ?』


『えーと丸2年かなあ』

と、Eさん。


それを聞いて、ぼくは思う。
 


(あれから、もう、2年か…まるで昨日のことのように思い出すのになあ…)



すると、誰かが言った。



『そうなんだ!まだ2年しか経ってないんだ!意外〜!』


(え!?)



ぼくのなかで稲妻が走った。




時間の感覚が、違いすぎる!



しかし、考えてみれば、そりゃそうだ。


この2年、ぼくに起きたことといったら、グルジアに行ったことと、モロッコに行ったこと、あとはルーティンのくだらない仕事。それだけだ。


一方、彼女らは、例えば自らの子供の2歳から4歳への成長を見てきた2年間なのだ。



1日、1時間、1秒の“濃さ”が違う。




そういうことなのだ。


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午後9時。同窓会は終わった。


いつもならば、ここから2軒目。もしくはカラオケである。



しかしながら、家庭を支えるパパとママたちは1人、また1人と帰っていった。


見上げると、そこにあるツインタワーのビルさえも、まるで仲の良い夫婦のように見えた。



ぼくは、重いバックパックを背負うと、だれも待っていない、ひとり暮らしの薄暗いアパートへと歩を進めるのだった。


旅の思い出を反芻しながら…




※事実にやや誇張があります…