結婚退職した元先輩が家を建てたとのことで、同僚数名と新築祝いに行ってきました。

あまり馴染みのない場所だったので、先輩に電話でナビをしてもらいながら到着したソコは、なんとも立派な一戸建て!市街地から離れた場所とはいえ、まだ整地されていない庭に車4台を置いても十分なスペースがあり(私たちが乗ってきた車はその内2台)、家も近隣の一戸建てよりは大きめ。


「すごいですね~!」


私が正直な感想を言うと、先輩はちょっと苦笑して、


「旦那の親が土地持ちなのよ。ここだったら家建ててくれるっていうから。

何もない場所だから車は1人1台必要だし、庭のスペースが広く取ってあるの」


今は更地の庭も、後で2台分のガレージと花壇を作るそうだ。


「こんなに広いとガーデンパーティーも出来そうですね」

「近くに小学校もあったし、子育てにも良さそうな環境ですね」

「キッチンもひろ~い!お料理しやすそう!」


みんなが口々に新居を誉めていると、ふと、先輩の表情が翳った。


「私ね、高校の時にストーカーに遭ってたの」


不意の告白に、みんな押し黙る。

と、言っても15年以上前の話だけどね。と先輩は笑った。


「相手は高校の同級生だったんだけど、何度も変な手紙渡されたり、帰りに後を付けられたり、休みの日は家の前で待ち伏せしてたりで・・・、とにかく怖かったの。

でも当時はストーカーって言葉がメジャーじゃなかったから、誰に相談しても相手にされなくって、それどころか『モテ自慢?』みたいに言われたりして・・・」


たしかに、そんな時代があった。いつも事件になってからでないと、重大さは見えてこない。


「その時、丁度父が転勤になって、そいつから逃れられたんだけど。・・・そいつ、私が引っ越した先まで探しにきたらしくて・・・」


「先輩、見つかっちゃったんですか?」

恐る恐る訊くと、先輩は「ううん」と首を振り、


「友達や先生に『住所は絶対教えないで』って頼んでたから、見つかりはしなかったんだけど、引越し先の県名はバレてたみたいで、夏休み中何日も探し歩いてたってウワサを聞いたの」


先輩が引っ越した先は、新幹線で3時間は掛かる場所。・・・すごい執念だ。


「それから、進学して、就職の時にこっちに戻って来て、旦那と出会って結婚したんだけど・・・」


ふぅ・・・。

溜め息が漏れた。


「そのストーカーの実家、この市内にあるのよ」


ぞくり・・・。

背中に冷たいものが流れる。


「ま、市内って言っても近所じゃないし、15年以上経ってるしね」


無理に明るく笑う先輩。

本当は、この場所に家を建てるのは反対だったんだろう。でも、家族の手前、言えなかったのだろう。

こんな話を私たちにしたのは、きっと不安だから。


もし、自分に何かあったら・・・・・。


胸が締め付けられる思いがした。

何年経っても、心の傷は完治しない。。。