「美しき愚かものたちのタブロー」(原田マハ)と国立西洋美術館 | 今日は何を読むのやら?(雨彦の読み散らかしの記)

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多才な作家である原田マハの作品を初めて読んだのは、読書家である友人が、「2019年に読んだ中でベストの一冊」と、「楽園のカンヴァス」を推しているのを知ったのがきっかけでした。

 

個性的なアンリ・ルソーの一枚の絵を巡る、ミステリー仕立てのこの作品もとても面白いのですが、僕が読んだ原田マハ作品の中で一番心を動かされたのは、「美しき愚かものたちのタブロー」です。

 

 

 

東京・上野の国立西洋美術館には、戦前に「日本に西洋美術専門の美術館を創設する」という夢を抱き、ヨーロッパで美術品を収集した松方幸次郎(川崎造船所社長)のコレクションが多数所蔵されています。

 

モネやゴッホ、セザンヌなど、世界的にも貴重な絵画を集め、パリに保管されていた松方コレクションは、第二次世界大戦の勃発のために、敵国の資産としてフランス政府に接収されるという憂き目に遭います。

 

しかし、そのフランスもまた、ナチス・ドイツによる侵攻を受け、印象派など近代絵画も「退廃芸術」として破壊の対象となるという危機に瀕します。

 

そうした時代の荒波の中、絵画が辿る数奇な運命と、絵画に魅了された人たちの、秘められたドラマ・・・

特に、戦時下のパリに残された松方の絵を、命がけで守ろうとした日置釭三郎(ひおきこうざぶろう)のストーリーには、心を揺さぶられます。

 

もちろん、歴史の事実に加えて、想像力の産物=フィクションも含まれているとは思いますが、「一枚の絵画そのものがミステリー」であるという、まさに原田マハの本領発揮といった一冊だったと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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国立西洋美術館の開館60周年に当たる2019年に松方コレクション展を行っていましたが、モネの睡蓮の絵(「睡蓮、柳の反映」)を見たときの衝撃が忘れられません。

 

戦争中のフランスで、疎開先で損傷したその大きな絵は、上半分が無残に欠落し、残りの部分もダメージを受けていました。長い間、行方不明だったものが2016年にフランスで発見され、松方家を経て、美術館に寄贈されたということです。

 

その絵を前にしばらく茫然としつつ、美術館の中を見回してみると、そこには、遠い時間と距離を旅してきた絵画が、描かれた時と変わらない姿を見せてくれており、こうしてオリジナルの絵画を直接見られるということ自体が、奇跡的なことなのだと感じました。

 

その「奇跡」の陰に、美術を愛する人たちの、不断の努力と熱情があることに間違いはないでしょう。

そして、文化を守るために、平和がいかに大事かということに、あらためて思いを巡らせざるを得ません。

 

 

現在、国立西洋美術館はリニューアルオープン記念として企画展(自然と人のダイアローグ)を開催していますが、「睡蓮、柳の反映」も展示品の一つとなっています。

 

 

 

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今日もお読みいただき、ありがとうございました。

 


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