Web3からWeb3.5へ──理念から実用へ移行する時代
「Web3」という言葉はすでに多くの人の耳に届いていますが、実際の社会やビジネスの現場では、完全な分散型インターネットの実現にはまだ時間がかかっています。
そこで今、注目されているのが「Web3.5」という新たな段階です。
Web3.5とは、ブロックチェーン技術やトークン経済を取り入れつつも、既存の企業・金融・行政インフラを活かして実用性を重視した“ハイブリッド型”の仕組みを指します。
つまり、「理想のWeb3」と「現実的な運用」の橋渡しをする過渡期のテクノロジーです。
MUFG・SMBC・みずほFG──3メガバンク連携で進む「Progmat Coin」実証と実用化!
日本のWeb3.5金融インフラを語る上で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の「Progmat(プログマット)」は中核的な存在です。
MUFGは、ブロックチェーンを活用したデジタル資産管理基盤「Progmat」を展開しており、現在、特に注目を集めているのが**円建てステーブルコイン「Progmat Coin」**です。
このProgmat Coinは、日本円と1対1で価値が裏付けられた「信頼性の高いデジタル通貨」として開発されており、送金・決済・資金清算をリアルタイムで行うことができます。
すでに**三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)も、このProgmatプラットフォームを共同検証・運用する方向で参画しており、「3メガバンク連携による共通Web3.5基盤」**の構築が現実のものとなりつつあります。
三菱商事──デジタル通貨の社会実装検証を開始
2025年には、三菱商事がProgmat基盤を活用した企業決済向けデジタル通貨の検証を開始しました。
目的は、商社取引やエネルギー事業などの複雑な決済フローを効率化し、送金の透明性を高めることです。
この取り組みは、単なる暗号資産の利用ではなく、企業間決済を根本から変えるWeb3.5実証といえます。
すでに国内大手企業の間では、ブロックチェーン上で取引データと資金を同時に動かす「スマート決済」の試みが進んでいます。
SBIホールディングス──STO・NFT・分散型金融の融合を推進
SBIグループは、国内でもいち早く**セキュリティ・トークン(ST)**の発行と取引を実用化した企業です。
同社が運営する「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」では、ブロックチェーンを用いたデジタル証券の取引が可能となっており、Web3.5型の証券市場がすでに誕生しています。
さらに、NFTの実用化にも積極的で、アートやスポーツチームとのコラボを通じて**「トークン化経済圏」**を形成しています。
これにより、資産・権利・コンテンツがブロックチェーン上で流通する時代が現実のものとなりつつあります。
地方自治体の動き──NFT・ブロックチェーンを地域活性化に活用
Web3.5の流れは、地方自治体にも広がっています。
特に目立つのが、観光・ふるさと納税・地域通貨などへのNFT・ブロックチェーン活用です。
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岐阜県飛騨市:NFTを使ったふるさと納税返礼品を導入。寄附者がNFTを所有することで、地域限定の特典やイベント参加権を得られる仕組みを構築。
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福岡市:ブロックチェーンスタートアップとの連携で、行政手続きの効率化を推進。企業誘致に向けたWeb3特区構想を掲げています。
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渋谷区:NFTを使ったデジタルアートイベントを開催し、観光資源としてのデジタル文化振興を強化。
これらの取り組みは、「行政のDX化」と「地域経済の再生」を同時に進める、まさにWeb3.5的な社会実装といえます。
スタートアップと企業連携──トークンエコノミーの拡大
スタートアップ企業の中でも、Web3.5を軸にした新ビジネスが次々と登場しています。
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HashPort / HashPalette:国内NFT・トークンプラットフォームを運営。アニメ・ゲーム業界と連携し、IPビジネスをWeb3化。
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Astar Network(Stake Technologies):日本発のレイヤー1ブロックチェーンとして、グローバル企業との連携を強化中。
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G.U.Technologies:金融機関向けのWeb3.5インフラを提供し、ブロックチェーンと既存銀行システムの橋渡しを実現。
これらの動きは、単なるトレンドではなく、既存のWeb2企業がWeb3技術を自然に取り入れる過程として定着しつつあります。
政府の取り組み──Web3政策の基盤整備が進行中
日本政府も、Web3.5時代を見据えて動き始めています。
経済産業省は「Web3政策推進室」を設置し、NFT・DAO・暗号資産の制度整備を進めています。
また、内閣府の「スタートアップ育成5か年計画」においても、Web3を次世代の重点分野と位置づけています。
特に、**「信頼できるデジタル通貨・トークンの発行基盤」**の構築は、金融と行政の両面で重要なテーマになっており、民間との連携による社会実装が進行中です。
日本のWeb3.5は“静かな変革”の段階にある
現在の日本では、「Web3は進んでいない」と感じる人も多いですが、実際には水面下で確実に変化が進んでいます。
それは、ブロックチェーンやNFTが“投機の道具”から“社会の仕組み”へと進化している証拠です。
金融・行政・地域・エンタメが一体となり、分散技術を現実に落とし込むこの流れこそが、日本型Web3.5の真価です。
完全な分散社会まではまだ道のりがありますが、今まさに「Web2からWeb3への橋を渡る時代」が始まっているのです。
まとめ──Web3.5は「理想」と「現実」をつなぐ日本の挑戦
Web3.5は、理念の先行したWeb3を現実に引き戻し、社会で実際に機能する形へ進化させた「日本らしい現実解」です。
銀行、商社、自治体、そしてスタートアップが同時に動き出した今、ブロックチェーン技術はようやく“社会の中で息づく”段階へと入っています。
次の時代、私たちは意識しないうちにWeb3の恩恵を受けるようになるでしょう。
それが、まさにWeb3.5が描く未来のインターネットの姿です!




