さて、結局壊れたpptデータは復旧せず・・・。

最近追加したばかりのチェ一族のデータがさようならしてしまいました・・・・。

あと士禍の詳細なデータも・・・・・・・・・・。

はあ、また入れ直しかあ・・。

 

前回のあらすじ

イクスは他の士林派の重臣たちを差し置いて御医を牽制しようと画策する。チェ・パンスル商会に訪れたイクスは、パンスルを懐柔しながらも敵意はないことを示した。数日後、スボクに事の顛末を報告するが、スボクの様子は以前にも増しておかしかった。その後、チェ一族について妙に詳しいソリをイクスは問い詰めるが、ソリはイクスが自身の正体を知っていることを知って激高する。2人は口論になり、酔っていたイクスは話す気のなかった本心を口にしてしまう。動揺したイクスは一人家を飛び出し、メチャンとの記憶を思い出し涙する。朝方帰宅したイクスをソリが待っていたが、イクスは素っ気ないながらもソリへの気遣いを見せる。

 

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告白

 

その日、イクスが宮廷より帰宅すると案の定ソリが待っていた。

「・・・休めと言ったではないか」

イクスは目をそらし言った。

「少しだけお話よろしいですか」

「・・・今日は疲れた」

イクスはぶっきらぼうに言って自室に向かおうとした。

しかし、ソリが彼の袖を掴んだ。

「お願いします。誤解を解かなければなりません。書房様」

イクスは困惑し黙っていた。ソリはイクスの目の前に来る。

「書房様」

イクスは根負けし、その足で彼女の部屋に訪れた。

初めてソリの部屋に入った。狭く暗い部屋の隅にはホ・ソックの墓標がある。周りにはたくさんの菓子が供えてあった。

イクスはふと、壁に飾った絵に目が行った。

「これは、そなたが描いたのか」

ソリは振り向く。

「はい・・・恐れながら」

ソリは少し恥ずかしそうに言う。

「・・・見事な腕前だな」

イクスは心底感心しつつ、気まずさを打開しようと言った。

「絵はメチャンのそれよりずっと上手い」

「姉上はまだ、子供でしたから」

ソリは少し微笑んで言った。

しばらく気まずい沈黙が流れた。

「・・・インボクの件、すまなかった」

静寂を破ったのはイクスだった。

「昨夜、メチャンの墓前に行った」

ソリはイクスをじっと見る。

「・・・怖かったのだ。私にとって、メチャンを失ったことは耐えがたい苦痛だった。弱い私には忘れる以外に耐える術が無かった。だがインボクはそうさせてはくれなかった。怖かったのだ。彼女のために科挙に及第したのに、彼女も、官職も失っては、全てが水泡に帰すと思ったのだ」

「一体、兄上に何があったのですか。なぜ世子邸下は、あのような残虐なことを?」

「・・・私は、インボクが世子邸下に私のことを告げようとしていることを知り、邸下のインボクへの信頼を無くそうと考えた。そこで、インボクを妓楼に呼び出し、そこに大妃媽媽の信頼の厚い内侍を待たせた。そして、別に邸下のお傍の内侍に密告し、インボクの密会の現場だと嘘をついて現場に連れて来た。愚かな私は、それが何を意味するのか理解していなかった。邸下はインボクが密会を恐れ私を陥れようとしたと激怒なさり、彼の不忠を偽装なさって罪に問われた。殿下は何もご存じないまま、斬首の命を下されたのだ」

「・・・」

イクスはソリの顔を見た。薄暗い中、涙が頬を伝うのが見えた。

「・・・」

ソリはそっと涙を拭った。

「愚かですわ。とても」

イクスは黙っていた。

「書房様も、兄上も・・・。二人で話し合えばよいものを、お互いを陥れようとして・・・。結果、互いに傷ついたではありませんか・・・」

「・・・そうだな・・・」

「・・・どうして、私に話してくださったのですか」

「・・・メチャンの墓前で思い出したのだ。メチャンからの最期の伝言が、妹を頼む、だったと」

ソリは涙を流し俯いた。

「・・・それでも、私は何もしなかった。今まで、そなたたちのことをずっと記憶の奥にしまっていた。それゆえ、そなたの正体を知った時、怖くなった。昔の自分を取り戻してしまうのではないかと。だが一方で、メチャンの面影を残すそなたを失うことも怖かった・・・」

ソリは顔を上げた。

「・・・忘れてくれ。戯言だ。ただ、そなたを見て、再びメチャンに会ったような気分になったのだ」

イクスは自嘲を込めて笑った。

「・・・無責任であろう?」

ソリは答えなかった。

「私は道徳的でもなければ、優しくも、強くもない。だが、メチャンとの思い出を共有し、共に弔うことのできる相手はそなたしかいないと、やっと気が付いたのだ」

イクスはそう言って目を伏せた。

「・・・もう遅すぎるがな」

「物事に遅いことはあっても遅すぎることはありません」

ソリはイクスの目をじっと見て言った。

「私はお若い頃の書判様の人となりを存じております。だから、きっと、戻ることが出来ると信じています。姉上のことで、私たち家族だけでなく、書判様も傷つかれたはずでしょう。お互いにお互いを想い合い、理解し合うことが出来たなら、これ以上の不幸は起こらなかったのだと思います。書判様が姉上と兄上を利用して、出世なさろうとしたとはもう思いません」

ソリは一息ついてまた話し出した。

「ですが、まだ・・・まだ、書判様を完全に許す気にはなれません・・・。それだけは御理解ください」

「わかっておる。他に、私に言いたいことは無いか」

「・・・ソックのこと、本当に覚えておられませんか?」

イクスは再び自分をあざ笑った。

「愚かよのう。本当に何も覚えておらぬのだ。私はそうやって多くの人間を傷つけ、時には死なせてきたのだろうなあ」

ソリは唇を噛みしめ、じっと聞いていた。

「・・・そなたはもう休め」

イクスは立ち上がり、去ろうとした。

その時、ソリが再び口を開いた。

「姉上を大切に想われている書判様のお心、そのお気持ちを信じます」

イクスは立ち止まったが、やがてすぐに部屋を出た。

 

イクスは再び天を仰ぐ。

彼がこれほど素直に心情を打ち明けたのは、ソリが唯一心を許した女性の妹だったからである。きっと、彼自身が変わったわけではない。

しかし、星を眺めるイクスの目に、いつものような濁りは無かった。

その目は輝き、美しい星空を映し出していた。

 

 

メチャンの件ですっかり忘れ去られていたが、ソリがチェ一族と内戚の関係にあるということはイクスにとって新たな問題が生まれたことに等しかった。チェ一族が家に来てソリを見つければ、ソリはきっと捕らえられる。だが、うまく利用すれば・・・?

シン・インボクが謀反の疑いで捕らえられた時、ソリは母親とともに実家にいた。知らせを聞き、二人は逃げ出した。ソリはまだ16歳であった。彼女の母親はソリを寺に隠し、自身は様子を伺いに一人都に向かった。しかし、そこでソリの母親は捕らえられてしまった。インボクが斬首になった後、両親は流罪となった。しかし、ホ・ソンテクが彼らのもとを訪ね、ソリの居場所を聞き出し、養女として守り抜くことを約束した。ソリは指名手配されていた。ソンテクが彼女を都へ連れて帰るのは容易ではなかった。ホ家に暖かく迎え入れられたソリは、同い年のホ・ソミンと親しくなった。ソミンは病気がちのため、未婚を貫いていた。二人は体格も顔だちも似ていたので、時々家の者が、ソリをソミンだと偽って外出させてやることもあった。ホ家の末子ソックはまだ5歳だった。ある日、いつものようにソミンと偽ってソックと市場に出かけたソリは、帰り道にソックを見失ってしまった。もしやと思い、ホ家の者たちに入るのを禁止されていた小さな林に向かってみた。そこには無邪気に松ぼっくりを拾うソックがいた。

この林は私有地で、妓楼の経営者の持ち物であった。ちょうど林の向こうから馬が二頭歩いてきた。若い男が一人、そして妓生が一人。ソリは唖然としてつい立ち止まってしまった。その男が、家族の敵であるミン・イクスその人であったからである。イクスは酔っていた。妓生をそそのかし、馬を走らせ競争しようと手綱を激しく打ち鳴らした。ソリが危ないと思った時はもう遅かった。ソックは馬に蹴られ、跳ね飛ばされた。ソックの大声で泣き叫ぶ声が辺りに響いたが、同時にイクスが大笑いしながら走り去っていった。ソックは腰を激しく打っており、下半身の左側は二度と動かなかった。一家の者たちはソリを責めなかった。むしろ、ミン家自体が彼ら共通の敵となったのである。

しかし、不幸は続く。数年後、天然痘が都の近くで流行した。ソンテクは所用でその村の近くに泊ったのだが、その後屋敷に帰って皆で詩や歌を楽しんだ後、症状が現れた。当然、家族全員に移った。ソックはその頃後遺症による痛みが強くて部屋から出ることが出来ず、ソリが看病していた。そのため、二人は感染しなかった。そして、医員たちの治療もむなしく、彼らは亡くなってしまった。

ソリは、ソミンとして生きる道を選んだ。ソミンとして生き、両親の罪を晴らし、復讐を遂げようと決心した。

それから数年。ソックの状態はどんどん悪くなっていた。そんな矢先、イクスが戸書判曹になり、見合いを行っていると耳にした。彼女は焦った。関係のない他者にまで危害を加えたくなかったからだ。そうして、考え抜いた挙句、ソリ自身がイクスの妻になればよいのだと気が付いた。それで衝動的にイクスの屋敷を訪ねたが、策を練るのが足りなかった。感情的になってしまい、婚約はうまくいかなかった。そして、自身に求婚してきたイ・グァンヒが彼女を付きまとうようになった。それを知ったソックはある日、彼女を掴んで離さないクァンヒを門の外で見つけ、彼を突き飛ばした。激高したクァンヒは従者に彼を突き飛ばさせた。これが元々健康でない彼の容体を深刻にした。ソックは1日とせず亡くなってしまった。

ソリは絶望した。復讐もできず、周りの者を守ることもできないのか、と。そして、それ以上何も考えられず、気が付いたら池から飛び込んでいた・・・・・・。

 

 

ふと気が付くと、誰かが自分を抱き上げていた。抵抗するが、岸に連れられ押さえつけられた。それはなんと、あのイクスだった。

従者に見つけられ家に連れ帰られたソリは、なぜイクスは自分を助けたのかと自問自答した。そしてふと、子供の頃のイクスを思い出す。勤勉ではなかったが、虫一つ踏むことのできない少年だったではないか。彼の中に、どこかに昔の少年イクスの心が残っているとソリは確信した。

 

ソリは知っていた。一番の復讐は、敵が自身の罪を自分で悟り、心から後悔し苦しむことだと。
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さて、今回はここまで。

今回の余談はネタバレ注意(?)。

お分かりかもしれませんが、ソリはチョンホのお母さんとなる人です。設定では、聡明で芸に優れ、温厚で忍耐強いということにしてあります。ここはチョンホの性格から引っ張ってきたところなんですが、それ以上にソリの最大の特徴である「意志の強さ」「健気さ」をストーリーに多く組み込むようにしてあります。これは実はチャングムの性格と共通する部分でもあり、チョンホはチャングムに記憶にうっすら残る母の面影を見たのだ、という設定にしたかったからです。

 

ではまた次回爆  笑

 

 

目次はコチラ照れ