こんにちは。自治体法務研修講師の奥田泰章です。今日も住民監査請求のお話が続きます。


住民監査請求に基づく監査は、取消訴訟や住民訴訟における本案審理に相当します。


住民監査請求の本案審理は、①財務会計行為の違法性・不当性に関する審理と、②勧告すべき措置に関する審理に分かれます。


財務会計行為の違法性・不当性に関する審理では、問題とされた財務会計行為が違法又は不当であるか否かを判断するために行われます。対象とされた関係行政機関は、自己の財務会計行為が違法・不当でないこと(適法・妥当であること)を主張立証しなければなりません。


そのため、監査請求人が提出した監査請求書のほか、関係行政機関に財務会計行為が適法・妥当である旨とその理由を詳細に記載した弁明書と証拠書類を提出させ、それらに基づく書面審理が行われます。


もっとも、監査請求人には監査委員の面前で陳述する権利があります。また、これとは別に、監査委員は関係者の出頭を求め、その陳述を聴取することができます。


この審理の結果、財務会計行為が違法・不当でないと監査委員が認定した場合には、棄却決定が行われます。


これに対し、財務会計行為が違法又は不当であると監査委員が認定した場合には、次に、勧告すべき措置に関する審理が行われます。


この審理は、措置の選定が監査委員の裁量に委ねられていることから、法定類型である①予防措置、②是正措置、③怠る事実解消措置、④損害補塡措置のうちから最適な具体的措置を選定するために行われます。


①〜③の各措置については、容易に結論が出るものと思われます。審理に相当の時間と労力を要するのは損害補塡措置です。


損害補塡措置には、①不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)と②不当利得に基づく利得返還請求(民法703条、704条)があります。


不法行為の成立要件は、①違法行為、②損害、③両者の因果関係、④行為者の故意又は過失があるすることです。たとえば、違法な財務会計行為を行った職員に故意又は過失がなければ不法行為は成立しません。


不当利得の成立要件は、①利得、②損失、③両者の因果関係、④法律上の原因の不存在があることです。たとえば、締結された契約が無効、取消し、解除などによって不存在でなければ不当利得は成立しません。


そこで、それらの審理では、関係行政機関が提出した弁明書と証拠書類で足りないことが多く、さらに関係者から主張書面と証拠書類を提出させ、それらに基づく書面審理が行われます。もちろん、監査委員は必要に応じて関係者の出頭を求め、その陳述を聴取することができます。


こうして選定された措置を勧告する認容決定が行われます。注意すべき点は、不法行為や不当利得の不成立により損害補塡措置を勧告することができない場合には、次善の代替措置(多くは是正措置)を勧告しなければならないという点です。財務会計行為が違法又は不当であると認定された以上、これも認容決定です。



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