時は2202年5月初めのヤマト出港直後。場所は月軌道周辺。

大気圏は離脱済みなので、ヤマトの安定翼は収納済み。

ヤマト第一艦橋にて、

土方さん:「今後の航海計画を検討する。メインスタッフは中央作戦室に集合せよ。

真田くん、テレサも出席させてくれ」

真田さん:「了解しました」

 

第八幕場面転換その1

 

場所は中央作戦室。床の大パネルに航路図が表示されている。

テレサの衣装は、ガミラス軍属の制服に白衣を羽織った姿。

島:「(航路を指揮棒で指しながら)基本的な航路は、前回のイスカンダルへの旅と

同じです。まずはビーメラ恒星系を目標に通常のワープで進み、そこからは亜空間

ゲートで一気にバラン星まで3万光年進みます。

バラン星から大マゼラン銀河近傍までの亜空間ゲートは、前回の航海で、我々が破壊

してしまったので使用できません。したがって、バラン星から目的地であるガミラス本星までは通常のワープで進むことになります。

ご承知のように、今回ヤマトは、ガミラスの技術供与で、ワープ機能の性能向上が

図られています。ご覧いただいている航路図に、航海日程が記入されていないのは、ワープ機能の性能テストが未実施のため、航海日程をどこまで短縮できるかが

不明なためです」

古代雪:「使用可能な銀河系側亜空間ゲートについてですが、ゲート出口の

バラン星側システム衛星は機能しているのでしょうか?(2199の25話参照)

前回の航海では、バラン星のエネルギープラントが、システム衛星にエネルギーを

供給していましたが、私たちが波動砲でエネルギープラントを破壊してしまいました(2199の18話参照)」

島:「雪ちゃん、鋭いね

テレサ:「君たちが言っている亜空間ゲートとは、ゲシュタムの門のことだな。

それなら心配無い。今回のテロン訪問の途中で、同行させた工兵艦隊が修理と

立ち上げ済みだ。エネルギー源は、波動エネルギーとしたので、半永久的に

使用可能だ」

古代進:「大マゼラン銀河側亜空間ゲートの様子はどうだった?」

テレサ:「島の説明通り、破壊されたままだ。あれを造ったのはジレル人たちなので、未知の技術が多く、ガミラスでも再建の目処は立っていない

平田さん:「亜空間ゲート突入前に、ビーメラ恒星系第4惑星ビーメラ4で、水と

食材の補給をさせてもらえるとありがたいです。いくらオムシス技術があると言っても、食料に含まれる水分と栄養素は徐々に低下します。前回の航海でも、ビーメラでの補給で随分助かりました」

土方さん:「島、航海計画にビーメラでの補給を含めること」

島:「はい」

 

テレサ:「今後の航海で気を付けなければならないことがある。それはガトランティスの動向だ。おそらくバラン星までは、敵の襲撃は無いだろう。小マゼラン銀河と

銀河系の距離は20万光年あるので、銀河系側のゲシュタムの門に敵が到達するよりも、我々の方が早くたどり着けるだろう。それに、ガミラスが把握している情報では、銀河系周辺に敵の補給基地は無い。ガトランティスは、20万光年にも及ぶ補給線を確立する必要があり、それには多大な時間が必要だろう。

しかし、バラン星到達以降は、常に敵の襲来を頭に入れておく必要がある。

ガトランティスは、ヤマトが波動砲を搭載していることを知っているようだ。

おそらく、君たちの前回の航海で、バラン星に向けて波動砲を放ったことを敵に察知された可能性が高い。つまり、バラン星からガミラス本星の間には、ガトランティスの多数の監視衛星があると考えられる。その一部はステルス監視衛星かもしれない」

古代進:「非常に重要な指摘に感謝する。今の話は、戦術科はもちろんヤマト乗組員全員の頭に入れておこう」

 

真田さん:「それでは、ヤマトの性能向上テストについて説明する。

  1.まず、火星と木星の間にある小惑星帯の手前でショックカノンを発砲し、

    小惑星の破壊状況からショックカノンの威力測定を行う。

  2.次に、小惑星帯内部に侵入し、障害物が多数ある状況下で、停止状態から

    ビーメラ恒星系方向にワープを行う。

    前回の航海では、最大ワープ能力が700光年だったが、今回はその2倍の

    1400光年に挑戦する。もし、1400光年が達成できれば、銀河系側亜空間

    ゲートの使用と合わせて、約100日でガミラス本星まで到達できる。

    これは、前回の航海時間を約半分に短縮したことになる」

土方さん:「何か質問はあるか? (無いようなので)それでは、各自、ヤマトの

性能向上テストの準備に取り掛かれ。なお、万が一に備えて、乗組員全員に船外服を着用させること」

土方さん以外の全員:「はい」

土方さん:「山崎くん、君は機関室で陣頭指揮を執れ。第一艦橋には徳川さんに

上がってもらえ」

山崎さん:「はい」

土方さん:「テレサ、君も第一艦橋に上がってくれ」

テレサ:「了解した」

 

第八幕場面転換その2

 

時は上記の翌日。場所は小惑星帯手前。

第一艦橋メンバー全員が船外服を着用している。テレサは、ガミラスの船外服を着用し、艦長席の隣の席に座っている。

土方さん:「これからショックカノンの威力測定を開始する。南部、ショックカノン

発射準備」

南部:「ショックカノン発射準備開始します。小惑星の密度が高い所に照準を合わせます。照準良し。測的良し。発射準備完了しました」

土方さん:「撃て」

ショックカノン全門が発射され、多数の小惑星が破壊される映像を入れる。

真田さん:「アナライザー!!」

アナライザー:「小惑星の破壊データを解析します。(少し間を置いて)解析終了。

ショックカノンの破壊力は前回航海時の9.8±0.5倍」

テレサ:「どうやら、設計通りの威力が発揮できたようだな」

南部:「(興奮して)凄い!! これならガトランティスなんか目じゃ無いよ!!」

古代進:「敵を侮るな」

南部:「あっああ」

 

土方さん:「次にワープ性能テストに入る。島、小惑星帯内部に進入」

島:「小惑星帯内部に進入します」

ヤマトが小惑星帯内部に進入する映像を入れる。

島:「艦を停止します」

ヤマトが逆噴射し停止する映像を入れる。

土方さん:「ワープ準備開始」

これ以降、ワープ性能テスト完了まで、映像は、第一艦橋と機関室を行ったり来たりする。

島:「ワープ準備、開始します。ワープアウト座標軸確認」

太田:「確認した。ビーメラ恒星系方向1400光年の宙域」

島:「座標軸固定する」

機関室にて、

山崎さん:「フライホイール回転数、40%から99%まで上げ。波動エンジン、

室圧上昇中」

古代雪:「テスト2分前」

ここで、佐渡先生と岬の居る部屋や、航空隊、技術科の様子を映像に入れる。

山崎さん:「回転数99%から120%まで上げ」

第一艦橋にて、

徳川さん:「フライホイール全力回転到達」

古代雪:「秒読み開始します。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」

島:「ワープ!!」

ヤマト前方にワームホール入り口が形成される。

同時に、ヤマトの船体は虹色になり、その後、色が急速に薄れ、明るく輝く一点に

なる。その一点が猛烈なスピードでワームホール入り口に吸い込まれる。

輝点が吸い込まれた直後、ワームホール入り口が閉じる。

ここからワープ中のヤマトの映像を流す。今回は、テレサの船外服が透ける

(サービス、サービスー!)。

ワープアウト映像は2199と同じにする。つまり、氷のようなものを纏ったヤマトが

ワームホール出口から出現し、氷のようなものが完全に剥がれたタイミングで、

船体全体がワームホール出口に出る。その直後に、ワームホール出口が閉じる。

第一艦橋メンバーがグッタリしている。ワープは何度も経験しているので、

気を失っている者はいない。

島:「(大きく息を吸い込み吐き出す)ふぅー。太田、近傍の天体観測。現在位置を

割り出せ」

太田:「了解。(少し間を置いて)現在位置特定。ワープ開始宙域からビーメラ

恒星系方向1400光年の宙域」

古代進:「やったな、島」

島:「おう」

土方さん:「ワープ性能テスト終了。成功を確認した。島、航海科で今回のテスト

結果を踏まえた航海計画を至急作成せよ」

島:「はい」

微笑んでいるテレサのアップを入れた後、場面転換。

 

第八幕ラストシーン

 

時はワープ性能テスト直後。場所は展望台。

島が展望台に向かうと、先客(=テレサ)あり。テレサは、ガミラス軍属の制服に

白衣を羽織った普段の姿。

島:「何を見ているんだい」

テレサ:「星々を見ている。こうしていると心が安らぐ」

島:「君のおかげで、航海時間を前回の約半分にできそうだ。ありがとう」

テレサ:「ヤマト実機の構造・テロンの技術レベルが知れて、非常に有意義だった。

特にオムシスには感心した」

島:「げ~、あれを見たのか」

テレサ:「何を不気味がっているのだ。ガミラス本星に戻ったら、早速、航宙艦隊

上層部にオムシス技術の採用を意見具申するつもりだ」

テレサ:「ところで、中央作戦室にいた時、お前は古代雪のことを『雪ちゃん』と

呼んでいたな。『ちゃん』とはなんだ

島:「自分より年少の者、主に子供や女性に対して使う敬称だ」

島:「そう言えば、俺は23歳だが、テレサは何歳だ?」

テレサ「ちょっと待て」

白衣のポケットからスマートフォンのような手のひらサイズのコンピューターを

出して、

テレサ:「テロン換算だと25歳だな」

テレサ:「さっきのお前の説明に従えば、お前は『島ちゃん』だな

島「(不本意そうな顔をして)だから、主に子供や女性に対して使う敬称だと

言っただろ」

テレサ「(調子に乗って)そうだったな、『島ちゃん』

2人とも笑いが込み上げてきて笑い合う。

テレサ:「心配するな。お前以外の人間がいる時にはちゃんと『島』と呼ぶ」

島:「他の人間がいない時にも、ちゃんと『島』と呼ぶように」

テレサ:「(微笑みながら)それは保証できない」と言いながら、展望台から

出ていく。

それを追いかける島のカットで第八幕終了。