今日は娘のピアノレッスンに付き添った。中学校時代、私達の音楽の先生はルミ先生という新卒の若くて美しい先生であった。レッスン中、なぜだか私はルミ先生のことを思い返していた。ルミ先生は一年とたたずに結婚して苗字が変わった。まだ幼かった私でも、ルミ先生を独占する男がいると思うと嫉妬したものだ。

 目を閉じればそこには今も若くて美しいルミ先生の姿。もう70才になるんだろう。先生のことを大好きだった私だが、ピアノも弾けず、楽譜も読めなかった。ルミ先生と私の間に共有できるものなど無かった。「ルミ先生、私の娘がこんなに達者にピアノを弾いていますよ。」「根性なしの私の娘はこんなにも根性がありますよ。」

 「お父さん、楽器は何をお持ちですか?」みづえ先生の問いに、「はい。今はキーボードですけど来月にも電子ピアノを買ってやろうと思ってます。」と答えた。団地住まいの我が家では精一杯の贅沢だ。音大出のルミ先生は結婚して高貴な苗字に変わったから、きっとグランドピアノをそなえた豪華な家に暮らしているのだろうなぁ。

 娘が、私に色々な夢を見せてくれるまさにタイムマシンなのである。娘よ、ありがとう。



今日も読んで頂きありがとうございます。中高年の感傷的な文章、いつも恥ずかしいですけど、お付き合い頂き感謝します。また。