高校を卒業して親元を離れ向かった先は京都。
初めての一人暮らし。
念願の一人暮らし。
下宿先は元写真館だったという古い2階建ての家。
下宿人は女性ばかり3人。
1階が大家さんちで老夫婦ふたり暮らし。
ご主人様の名前が”審交(しんこう)さん”というかなり変わった名前だった。
台所は2階に共同、トイレは1階のを共同、風呂なし、当時はほとんどの下宿が
そんな感じ。
元写真館だったその家は南向きの部屋がひとつもない。
窓は西向きか北向き。
私の部屋は西向きの4畳半、しかも網戸なんかない開き窓~。
でも、なんてったって念願の一人暮らし。
とってもとっても嬉しかった。
隣の部屋は下賀茂神社の巫女さん、その隣は府立大4年のお姉さま。
すんごく大人に見えたもんだ。
大家のおばあさまは結構厳しい?(というか細部に気が付く)人だった。
審交さんは私たちに来る郵便を届けにくるとき、必ずはさみを持参して、
古切手ちょうだい、と言う人だった。
一番怖かったのは、1階のトイレの前の廊下に、ガラスの陳列ケースが
あって、その中にずらっと鳥の剥製が飾られていたこと。
あれは審交さんの趣味だったのか?夜、トイレに行く時は特に怖かった。
洗濯機なんてもちろん、ない。
そこで私は定期的にある場所に通って洗濯をすることになる。
もちろん、コインランドリーなんかまだ普及してない時代。
そのある場所は、やがてパラダイスと化する場所なのだった。