2016年国内映画興収 過去最高記録を達成 | 日本アニメ視聴館  アニメ公式配信紹介

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日本映画製作者連盟の発表によると2016年国内映画興行収入が
2000年からの記録史上最高となる2355億800万円に達し、※
入場者数は1億8018万9千人を記録したことが発表されました。
 
更新内容
2017年1月26日 一部記述修正・加筆
 
そこで、2016年興収ランキング総合と邦画ランキングをみて
自分なりに気づいた点、思う事を記したいと思います。
 
※データ集計開始となる1955年から1999年までは配給収入
 
発表された総合興収ランキング上位10作品です。
※☆およびファミリー向けは当方の判断によるもの
 
1位 「君の名は。」 235.6億円* 
2位 「スターウォーズ フォースの覚醒」 116.3億円 ☆ ファミリー向け
3位 「シン・ゴジラ」 82.5億円* ☆ ファミリー向け
4位 「ズートピア」 76.3億円 3DCG ディズニー ファミリー向け
5位 「ファインディング・ドリー」 68.3億円 3DCG ディズニー ☆続編 ファミリー向け
6位 「名探偵コナン 漆黒の悪夢(ナイトメア)」 63.3億円 ☆ ファミリー向け
7位 「映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!」 55.3億円 ☆ ファミリー向け
8位 「ONE PIECE FILM GOLD」 51.8億円 ☆ ファミリー向け
9位 「信長協奏曲 ノブナガコンツェルト」 46.1億円
10位 「ペット」 42.4億円 3DCG ファミリー向け
 
* 2017年1月24日現在も上映中
 
上位10作品はアニメ・漫画原作作品(アニメ化作品含む)が8作品、
特撮関連作品が2作品となっています。
 
 
参考に日本映画製作者連盟発表資料 
2016年(平成28年)興行収入10億円以上番組一覧のリンクを貼っておきます コチラ(pdf)
 
※実写および色付き文字は当方で追記
 
日本映画製作者連盟発表資料 一部抜粋
 
2016年国内邦画興収ランキング一覧をみると上位20位のうち
アニメーション映画作品は8作品。
アニメ・漫画原作の実写映画作品は6作品。
小説やライトノベル・ドラマ原作の実写映画は4作品。
オリジナルの実写映画は山田洋二監督作品「母と暮らせば」のみでした。※
※故井上やすしが構想していた戦後三部作を引き継いで映画化
 
総合・邦画上位にファミリー向け作品が多くランクインしている要因としては
親子連れで観賞することにより、来場者人数が多くなる利点があることと
ロングシリーズ化することで世代を超えて親子2代でのファン獲得という
利点もここ数年で目立ち始めてきています。
「ワンピース」や「クレヨンしんちゃん」などが、その好例といえます。
また90年代からフル3DCG映画を継続して上映しているディズニー作品も
20年以上ものキャリアを重ねていることからブランド・信用度の面が
良い方向に活きているものと推察します。
 
特撮映画は大スクリーンでの映画の醍醐味ともいうべき王道ということと
超有名&シリーズ作品の「ゴジラ」と「スターウォーズ」ということもあり、
安定した人気で上位を獲得。シン・ゴジラは庵野秀明監督が務めたことでも
公開前からの話題も来場者効果があったと考えます。
ただ、特撮邦画はシン・ゴジラのみでしたので
東宝映画としては活況ですが、国内特撮映画が活況という状況とは言い切れない部分があります。
 
国内興行収入ランキング上位20作品のうち、
過去にも放映実績がありシリーズ化されている作品は9作品が該当。
上位20作品のうちの半分近くになります。
シリーズ作品は固定ファン獲得や全作品を観た認知度の高さが
興収面で有力に作用する要素とみています。
認知度の高さでは原作からの映画化作品の面でも通じる部分があり
ほぼオリジナル作品での上位ランクインは難しくなっているのが
現状といえそうです。
 
実写映画作品で原作が漫画・アニメ化作品は上位20位中、計6作品。
1/4を超えるランクインとなっています。
原作漫画やアニメ化作品からの実写化が嫌という反応があるものの、
興収的に結果を出していることと、上記のシリーズ化の信用度に通じる
原作の信用度からこの流れは変わらないのではないかと思われます。
 
そのなかで今年、大ヒットした1位獲得の新海誠監督作品「君の名は。」は映画興収の
歴史から観ても珍しい事例ではないかと思われます。
 
シリーズ作品、ファミリー向け作品というわけでもなく、
ジブリ作品のように長きにわたる長編作品でブランドとしての地位を確固たるものとして
大ヒットを連発しているわけでもなく恋愛モノで邦画歴代第二位の興収を得ることは
今までの映画作品展開では考えにくいことでした。
 
考えてみると各種報道でも伝えられているようにSNSなどインターネットを
介した口コミ効果が影響したことが大きいと判断しています。
宣伝戦略によって大ヒットに誘導する展開から一人一人のツイートや
SNSでの感想が新海誠作品を初めて知る人が映画館へ足を運ぶ要素になったと思います。
 
また、これまでの新海作品で映画館へ足を運んではいなかったものの
レンタルや配信などで新海作品に触れていた潜在的ファンが「君の名は。」をきっかけに
一気に映画館へ足を運んだことも大きな要因だったのではないかと推測します。
 
製作委員会は宣伝に秀でた配給会社の東宝、メディアコンテンツに秀でているKADOKAWA、大手芸能事務所アミューズ、交通広告に秀でたジェイアール東日本企画、
ローソンHMVエンタテイメント、新海作品で御馴染みのコミックウェーブフイルム等と
各専門分野に秀でた会社が勢ぞろいしたことから
公開前から広告展開を各方面でしっかりと行っていました。
 
最新の山手線車両を活用した広告展開や舞台となる沿線のスタンプラリー、
コラボ商品や各企業とのタイアップなども見られました。
公開にあわせAbemaTVで過去の作品一挙配信が行われ、
認知と映画鑑賞へのモチベーション向上を促す展開が行われていました。
新海監督やキャストメンバーも積極的に各雑誌、TV・ラジオ局のインタビューにも応じていましたので
非常に多くの関連書籍や特集号が発売されていました。
 
思い返すと宣伝が前に出過ぎないように新海監督の性格を考慮した
落ち着いていてあっさりした企画・宣伝戦略が練られていたのではないかと思います。
 
ジブリ映画が邦画興収を牽引していた時代において
日本テレビが製作委員会に参加していたことで
日本テレビ系列TV番組でこれまでのジブリ映画放送が広く宣伝効果となっていたのですが
「君の名は。」ではTV局が製作委員会に参加していないのが興味深い点でもあります。
 
ジブリ作品の時代とやや違いますが、プロデューサー(川村元気氏)の個性が
担当した新海作品との相性で表れるのでしょうか…。
本来もっていた新海誠クオリティの人気と宣伝活動がトレンドの風を生み出して
新たな幅広いファンを獲得したことから口コミ効果(噂)も後押しして
さらに映画館へ足を運ぶ展開を生み出したと考えています。
ロングラン上映になって冬休みには親子連れや家族、
高齢者の方々がグループで観に来る光景も見受けられました。
 
新海監督のこれまで発表した作品を観たことなかった人たちに知られるきっかけとなった作品という一面も今回の「君の名は。」がもたらした功績といえるので
今後、新たな作品でもっと魅了することができるかという点も勝負どころなのだと思います。
 
 
また、片渕須直監督作品「この世界の片隅に」のヒットも珍しい事例でした。
邦画興収23位(15.7億円)*の好成績を記録していますが
映画制作に際し、当初資金調達に苦労し、パイロットフイルム制作費に
クラウドファンディングを活用した出資者を募ったところ、目標金額2,000万円に対し
8日あまりで目標金額を大幅に超える3,900万円を超える支援金を集めました。
当時の映画ジャンルでのクラウドファンディング史上最高人数と金額を達成したことでも
話題になっています。 *2017年1月現在上映中
 
映画公開当初は全国63スクリーンと小規模での上映でしたが、
これまでの制作エピソードや作品クオリティの高さ、
キャストにのん(能年玲奈)さんが主役キャストにあてられることなどから
話題がSNS拡散効果を経て動員数を伸ばし、2017年1月には累計上映館数200館を越えています。
 
この「この世界の片隅に」 興収の特徴としては一般の口コミ・SNS効果だけでなく
クラウドファンディングに出資した数多くの人達の熱い想いも
SNSや口コミ効果としてヒットに導いた点が大変興味深い事例といえます。
企業側目線からすれば新たな映画制作手法としてのファンの囲い込み手段としても
有効なのかもしれません。
 
そういった点をふまえると今の時代、企業だけの宣伝で映画興行はヒットしにくく
なっていると思います。
2016年興収ランキング発表でヒットにつながる要素として
SNSでの個々の評価が直接的にヒットへつながる、
これまでの宣伝主導での時代から新たなSNSユーザーの評価=広告・宣伝の時代に
突入した映画史と宣伝・広告展開の歴史において象徴的なランキングでありました。
おそらく景気の波で映画興収全体の増減はあるものの、
SNSでの評判から興収へ導く流れは今後さらに浸透、発展してゆくものと考えています。
SNS&口コミ効果と製作側の宣伝・広告展開がどのように組み合わさって
強固なヒット展開へと導かれるかが注目点と思いつつ、この辺で終えることとします。
 
 
参考
一般社団法人 日本映画製作者連盟 最新映連発表資料
TBS News 映画興行収入“過去最高”、ヒット作続出の理由
朝日新聞 DIGITAL 「アニメ新時代」到来 映画興収、2000年以降最高に
ORICON NEWS 東宝社長 「君の名は。」 「シン・ゴジラ」 ヒット分析
シネマトゥデイ 『この世界の片隅に』ヒットの理由
産経ニュース 23歳「のん」の魅力が満載「この世界の片隅に」の舞台、広島・呉で見せた素顔と天然キャラ