宇宙と宇宙をつなぐ ~ IUT理論 ~ 未だ理解されず | 愛唱会ジャーナル

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加藤文元「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」(KADOKAWA 2019.4)を読んだ。版元による紹介文は次の通り:
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人類に残された最後の超難問、ABC予想に挑む!
 

人類に残された超難問、ABC予想の解決をも含むとするIUT(宇宙際タイヒミュラー)理論。京都大学の望月新一教授によって構築された論文は、「未来から来た論文」と称されるなど、数学界のみならず、世界に衝撃をもたらした。

この論文は、世界で理解できるのは多く見積もっても数人、といわれるほどの難解さであり、論文の発表から6年以上たった現在もなおアクセプトに至っていないが、望月教授と、議論と親交を重ねてきた著者は、IUT理論は数学者ではない一般の人たちにもわかってもらえるような自然な考え方に根ざしていると考える。~

 
誇大広告の見本のような宣伝文句であるが、とにかく何でもよいから参考書にありつきたい一心で、他区の図書館にまで予約を入れて、漸く借りることが出来た。
 
“世界に数人”と言われるIUT(宇宙際タイヒミュラー)理論理解者の一人と目される著者による素人向けの解説だから、現在これ以上の適書は無いと思われる。
 
確かに、難しい数学理論や数式は徹底的に避けられており、日本語と初等レベルの算数の知識、理解力があれば読み通せる内容となっている。
 
お蔭で、≪IUT理論は、通常の数学における足し算と掛け算の強固な絡み合いを断ち切ることで新しい数学体系を構築するものであり≫、≪ABC予想は、自然数の足し算と掛け算の大小関係に関する考察である≫ことを認識するに至った。
 
ABC予想は、IUT理論の構想を生み出す端緒となっていること、また、IUT理論の応用によって予想が解決されるとのことであるが、予想自体は理論の中核ではないとされる。
 
その革命的なIUT理論とは、具体的にどのようなものか、期待に胸躍らせながら最後まで読み通したけれども、結局、殆ど判らなかった。
 
群論の手法を応用するらしいのだが、記述は比喩に留まり、直接的説明は本書のレベルを超えるとの配慮から皆無であった。その代償とでも言うか、周辺分野の幾つかの基礎的な知識を得られたようにも思う。我が数字遊びの目玉である素数についての解説もあった。
 
なお、望月教授のIUT理論の完成論文が近々専門学術誌に掲載される見通しであると報道された後、一向に続報の無い状況を訝しんだところであるが(ABC予想入門 入門以前 証明論文 2018/6/27())、その事情が本書で確認されたことも収穫の一つである。
 
要するに、未だIUT理論は世界の多数の数学者に理解されていないということだ。
 
我々如き素人に理解できないのは勿論のこと、噛み砕いて説明することも不可能なのだ。