坂岡真「月」~葛葉(くずのは)・屎褌(くそばかま)~石浦章一『DNAが歴史を書き換える!』 | 愛唱会ジャーナル

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電車やバスで移動中の徒然の伴として、ひっかえとっかえ小説などを携行しており、今日は某施設から借り出した坂岡真 死ぬがよく候1」(徳間文庫2013.5)を三分の一ほど読んだ。
 
剣豪にして脱走役人の主人公が懇ろになり、誑かされる京都・島原遊郭の端女郎が“葛葉(くずのは)”という名で登場する。音韻的連想で“樟葉(くずは)”が浮かんだ。京都の地名であることを最近あるエッセーで読み知ったばかりだ。
 
石浦章一『DNAが歴史を書き換える! 「王家の遺伝子」をめぐって』(講談社PR誌「本」7月号)の余談として、京都への通勤圏内のおしゃれな地域である“祝園(ほうその)”と“樟葉(くずは)”の語源が説かれている。
 
「日本書紀」崇神天皇の巻の記述として、死体を捨てた場所を屍が溢れたが故に“羽振苑(はふりその)”と名付け、屎(くそ)が褌(はかま)から漏れ落ちた場所を“屎褌(くそばかま)”と言ったことを紹介する。
 
つまり、おしゃれな地名“祝園(ほうその)”と“樟葉(くずは)”は、“羽振苑(はふりその)”と“屎褌(くそばかま)”が訛って出来たのだとバラしているのだ。
 
大学で講義する石浦先生がこのような逸話を披露すると、学生たちが興味を持ってくれるのだそうだ。学生ならぬ八十路目前の後期高齢者も目が醒めて、お話に引き込まれたのである。
 

坂岡氏の小説には、平安時代の名高い陰陽師、安倍清明(晴明の誤記か)の母は狐で、その母狐は葛葉姫といったとある。この伝説が件の女郎の源氏名の由来とすれば、“屎褌(くそばかま)”は無関係であり、それを持ち出すのは名誉棄損の謗りを免れない。


2019.07.22 追記:”楠”を”樟葉”に改めた。