2017年01月28日、10年の時を越えてあの天照が蘇った。
待ちわびた客席は満員御礼。
恭しくお辞儀をするメンバーの表情に強い決意表明が感じられる。
記念すべき1発目に放ったのは「火乃國」。
復活を飾るに相応しいアグレッシヴなナンバーだ。銀テープと低く刻むビートに誘われ、場内は早くも一体となって拳を振り上げる。伸びやかな唄声の健在を確認し、自然と胸が熱くなった。
続く「希望ヶ丘」でも観客たちのジャンプがホール全体にさらなる一体感を生み出す。伝わってくるのは今の瞬間を全身で楽しもうという気迫。もはやこの場にいる全員がメロディアスなサビに酔い痴れている。
「破邪」のどことなくテクノポップ調かつダンサブルな曲調は、和風とデジタルロックを融合した天照ならではのサウンドだ。
一気に畳み掛けた「まろがれ」、「かげろふ」、「紅蓮」ではモッシュが巻き起こり、煽りにも力が籠もった。
晃のビブラートは音域が広く、お経のように響いて心地良い。時を経て大人になったファンたちも10年前を回顧しているのか、両腕を振って元気に踊っている。
「ただいま」
ステージからの呼び掛けに
「お帰り、待ってたよ」
次々と返事が飛んだ。
大祀のテクニカルなギタープレイと特徴的なリフがこだまする「彩」は、哀愁漂うメロディラインに美しいファルセットが重なり合った。
リズミカルで小気味良いドラムと小刻みな五弦ベースが流れる「天翔星煌」を経て、舞台はサブステージへ。
アコースティックギターに持ち替え「刻の絆」では軽やかな笛の音と共に哲学的な詩を奏でる。
愛を唄うしっとりとしたバラード「暁」に身を委ね、皆がいつしか首を揺らしていた。
和太鼓的な力強いドラミングと太古の日本を彷彿とさせる壮大なメロディ「大地の詩」は、天照の真骨頂とも言える。
乗りが良く技巧的な大祀のギターは観る者を心底から酔わせ、架空の世界へと誘った。それは彼らだけが創り出せる「まほろば」なのかもしれない。
MCでは痩せたわりに体力を付けていないことやポスターが大き過ぎることを自虐ネタにし、笑いを取った晃。
一転し、お待ち兼ねの不動の人気曲「逢魔」へと続く。会場内は興奮の渦に包まれ、余りの熱気で鳥肌が立った。
「JESUS CLEANSING」の10年の経過を感じさせないパワフルな演奏には圧倒された。
いや、決して立ち止まっていたわけでなく、天照はこの10年間進化し続けていたのだ。
曲を追うごとにそれは顕著になり、確信へと変わっていく。
本編ラストとなる「Natural selection」において観客のヴォルテージは最高潮に達し、その盛り上がりを崩さぬまま駆け抜ける。
とにかくメンバーたちが最高に楽しそうなのが印象的だ。
晃による振り付け講座の後は、天照至上最速ビートという新曲「鳳凰」で、会場全体を埋め尽くした扇子が舞う。
その鮮やかな彩りは圧巻で、思わず溜め息が漏れた。
アンコール後のMCで大祀の語った言葉が印象的だ。
「どこまで頑張れるかわかんないけど、またちょっと夢でも見れたらなぁって」
10年分、良い意味で熟成し成長した彼ら。それはいつからか、活動停止の原因となった価値観の擦れや不和をも凌駕していったと言う。
空白の時間を埋めるように、10年前最後に演奏した「森羅万象」をひとつひとつ音を噛み締めて弾く。大合唱は天井を突き抜け、会場は温かい拍手に包まれた。
そこに10年前の悲愴感や寂寞はない。なぜなら天照の新たな物語は今、この刻から始まるのだから…。
松田惠美里(Vkei-Guide)