皆さん初めまして!千葉県にある総合病院国保旭中央病院から来ました、初期研修医二年目の佐藤政哉と申します!

自己紹介から始めさせていただくと、18年間は東京で育ち、その後栃木の田舎の大学で6年間、現在は千葉県の田舎で生活しています。

田舎暮らしに慣れてしまい、人ごみが辛くなってきました(笑)

 

ちなみに兄弟は双子がいます!

自分でもどっちがどっちか怪しいですね(笑) 

同期の研修医なのでかなり刺激になっています!

 

旭中央病院では24時間on callの中、時に死にそうになりながら、30人の同期とワイワイと2年間の寮生活を過ごしています。

そんな中、地域医療研修で奄美に行けることになりました!!

奄美の大自然満喫したい!

という気持ちで奄美に到着しましたが…

 

なんと台風10号が奄美に上陸しました。。。

院長先生いわく、50年間で一番強い台風ということで、木造建築の家は全て倒壊するといわれていました…

寮が壊れることも考え、

同期みんなで院内に泊まらせてもらいました(笑)

 

前代未聞の台風という予想でしたので、周辺から台風避難目的の入院が集中し、50人以上の台風避難入院を受けました。

「台風」が入院の理由となることは自分にとっては衝撃でした。

台風は予想より逸れたみたいですが、しっかりと停電し、自分にとっては一番強い台風でした(院長先生はそよ風みたいなもんだと言っていましたが笑)

巨大台風を、同期、院内のスタッフの皆さんと乗り越えたのはかけがえのない思い出です!

 

 

その後は、天気も落ち着き、

仕事終わりにきれいなビーチを独占したり、

マングローブで冒険したり、

満天の星空を眺めたり、

↓写真は一眼レフカメラマンの同期二人の渾身の作品です

青春って感じですね(笑)

 

名瀬の研修では勉強もしっかりやっています!

毎週あるフィジカル回診、平島先生レクチャー、NEJ  の抄読会、CTカンファレンス、、教育的なイベントは盛りだくさんですし、訪問診療やリハビリ診察は貴重な経験となりました。

救急外来でみた患者さんを後日自分の外来でフォローするということも、かけがえのない経験となりました。

 

何よりも同期、上級医、コメディカルの方々、関わる全ての方が温かい!!!!

旭ではいかにせかせかと生きていたかを実感しました(笑)

 

名瀬での研修は、大自然を満喫でき、勉強もしっかりし、離島ならではの医療を経験でき、島の温かさにも触れられる、

最高の研修病院です!

 

前置きが長くなりましたが、勉強の話もします。

今回経験したのは、特に既往歴のない58歳男性で、

主訴は文字が読めないということで来院されました。

CT撮像すると、左側頭葉から後頭葉にかけて脳出血が見られました。比較的若年で既往歴のない方の脳出血ということで、出血の原因がないかMRI、MRAをとると、硬膜動静脈瘻を認め、そこからの出血と考えられました。

 

硬膜動静脈瘻→血管雑音というイメージがあったので

聴診器を片手に急行しましたが、血管雑音は全く聞こえませんでした。

 

患者さんに詳しく話を聞いてみると、数週間前までは耳の後ろからシューシューというような音が聞こえていたそうですが、突然聞こえなくなっていたとのことでした。

 

もともとある硬膜動静脈瘻が脳出血に移行するのはどういう病態なんだろうかと疑問を持ちました。

自分は脳外科志望ということもあり、興味を持ち詳しく調べてみました。

 

脳の血管の流れを上水道・洗面台・下水道に例えると、上水道は動脈、洗面台は脳、下水道は脳の静脈にあたります。

普段なら上水道から流れ出た水は洗面台に必ずたまります。そして洗面台を経て下水道に出て行きます。

硬膜動静脈瘻は上水道から下水道に洗面台を介さないでも通ることができる連絡の道ができてしまっている状態です。

こうなってしまうと連絡の道を通って上水道から下水道に直接水が流れてしまいます。

ただ下水道に流れ出る一方であればそれほど症状はでません。

しかし下水道から溢れかえって洗面台に逆流してしまうと脳は血液で圧迫されてしまい、出血を起こしたり、静脈が詰まったりといろんな症状が出てきてしまいます。

 

硬膜動静脈瘻の分類は数多くありますが、最も分かりやすい分類を紹介します。

Borden(ボーデン)分類と呼ばれるものです。

タイプ1は脳の静脈の流出に影響がないタイプで、この状態では基本的には脳に害を及ぼすことができません。 耳鳴りが生じる場合があります。

タイプ2は血液のシャントの量が増える場合や正常の静脈の流出後が細くなった場合、正常な流出路を保ちつつも、逆流が生じてきます。 この状態になると積極的に治療を考える必要が出てきます。

タイプ3となると、正常の流出路が閉塞してしまい、脳への逆流のみが残る状態となります。脳出血のリスクが高いです。

 

今回の症例では聞こえていた耳鳴りが聞こえなくなったという病歴があり、タイプ1であったものがタイプ2.3に移行し、出血リスクが上昇したものと思われます。

 

硬膜動静脈瘻の治療は基本的には静脈側を閉塞させることが基本となります。 シャントが形成されている部位やその構造によりますが、多くの場合は静脈を経由して塞栓します。(経静脈的塞栓術) 正しく行われれば効果が高い治療となりますが、治療で正常な脳の静脈還流を障害しないようにすることがもっとも重要です。 
治療のカテーテルが罹患静脈内にあるので、コイルによる塞栓が直接できます。 このような状況では治療は比較的容易ですが、罹患静脈を塞栓し、正常の静脈還流に関与している静脈を残してあげることが重要です。 これらの見極めが難しいケースがあり、十分な画像の解像度および読影力を必要とします。

特に既往歴のない比較的若年者の脳出血では積極的に硬膜動静脈瘻などの血管奇形を疑ってよいと感じました。

 

残りの奄美生活、何事にも全力で過ごしていきたいです!

 

次回はみんなの癒しキャラ、川崎市立多摩病院の高橋先生です。よろしくお願いします!

 

【参考文献】

硬膜動静脈瘻の分類と治療

硬膜動静脈瘻の治療https://neurovasc.org/cvd/davf/treatment/

脳動脈奇形と硬膜動静脈瘻の成因と自然歴 里見淳一郎, 永廣信治 - 脳神経外科ジャーナル, 2013 - jstage.jst.go.jp

硬膜動静脈瘻の病態把握(判断)と治療(行動) 里見淳一郎, 永廣信治 - 脳神経外科ジャーナル, 2016 - jstage.jst.go.jp