今回は関西医科大学病院から来ました研修医2年目の林と申します。
8,9月の2ヶ月間名瀬徳洲会病院にて働かさせていただいております。
奄美大島に来たのは初めてで8/1に来たときはワクワクどきどきで、僕自身奄美に来たことがなく、島という島に初めて来ました。
下の写真が先月1ヶ月の思い出の写真です。
奄美行きの飛行機を乗った時、空が青く澄んでいました。大浜海浜公園の夕焼けや魚釣り、マングローブカヤックなどの奄美を堪能しつくしました。
引潮のときマングローブに行きますと、いわゆるみんなが想像している海水と木ではなく、干上がった海と木で全く映えなかったです。
また、流星群を見に星空がきれいで星と人間があまりにもマッチしました。それが右上の写真です。
左下の写真を御覧ください。黒うさぎ探索です。見つけた時の楽しさは表現できないくらいうれしいです。
右下の写真は近くの居酒屋の”たか”です。ここはアットホームで奄美、いや名瀬(大熊)を感じさせていただける居酒屋さんです。
今月一緒に回る研修医とまたいって店主に紹介したいところです。
なんだかんだ言ってほぼ毎日飲んでいた気がします。ただ疲れ果てた次の日もみんな出勤して仕事はきちんとしていましたよ(笑)
ウミガメも見に行って加計呂麻島いって言うてる間にもう1ヶ月が終了しました。
8月で帰っていく研修医を見送る時、胴上げしました。東京、大阪にみんな帰っていき、このメンバーでこんなに長く共にすることは最後だなと思うと涙ぐんできていました。もうちょっと遊びたいという気持ちとみんなと共に帰りたいという気持ちが入り混じってすごく複雑な気持ちになりました。そのような虚無感に陥りながらその日を過ごしているとすぐに新しい研修医が来て少し気持ちが和らぎました。新しいスタートが始まった気がします。
9月に入り7人研修医が揃うはずですが、まさかの9/1に巨大な台風がきたため飛行機が欠航。まだ全員が揃っていない状況です。先月までは2ヶ月いた研修医に連れて行ってもらっていたため、今月は自分が奄美を紹介する番だと感じています。
全員揃って今月も奄美を堪能していきましょう!!
少しここで医療の話に入ります。
この前97歳の嘔吐を主訴にきた患者様がおられました。血液ガスを測ると血清Na値が122と低値でありそれが原因と考えました。
治療として最初は細胞外液を投与しましたが、嘔吐が治らず3%生理食塩水を投与し回復しており、現在も食塩6g/日で投与しています。
低Na血症の鑑別疾患を調べました。
今回低張性脱水であったため、細胞外液量で鑑別していかなければなりませんでした。身体所見、採血データ的に細胞外液量が正常であると考えました。尿Na20以上であったため左から3番目に当てはまると考えます。
難渋したのがここからです。多飲症や粘液水腫、糖質コルチコイド欠乏、下垂体・副腎機能低下は採血検査で否定的でした。
SIADHとMRHE、Reset Osmostatの3つの鑑別を考えるのに苦労しました。
なぜなら治療がことなるからです。SIADHの場合は水制限が必要ですが、MRHE、Reset Osmostatでは必要ありません。
一つずつ病気の概念を見ていきましょう。
・SIADH=抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
平成22年度の診断の手引きでは
1. 低ナトリウム血症:血清ナトリウム濃度<135mEq/L
2. 血漿バソプレシン値:測定感度以上であること
3. 低浸透圧血症:血清浸透圧<270mOsm/kg
4. 高張尿:尿浸透圧>300mOsm/kg
5. ナトリウム利尿の持続:尿中ナトリウム濃度>20mEq/L
6. 腎機能正常:血清クレアチニン値<1.2mg/dL
7. 副腎皮質機能正常:血清コルチゾール>6ug/dL
「1~7の検査所見があり、かつ脱水の所見を認めないもの」を確実例と診断する。
原因として中枢神経系疾患、肺疾患、ADH異所性産生腫瘍、薬剤がある
・MRHE=(高齢者鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症)
加齢によるレニン・アルドステロン系の反応性の低下によってNa保持機能が十分働かなくなり代償的にADHが分泌される病態である。高齢者では非常に頻度が高く(高齢者SIADHの1/4)多くはSIADHと診断されている。やや脱水傾向にあるため水制限を行うと脱水が顕在化するため禁忌である。フロリネフ(鉱質コルチコイド)0.1~0.3mgを治療に用いる。高塩分食で治療してもよい。
また、数%しか減らないことが多く、高齢者は脱水所見がでにくいため診断が遅れることが多い。
感染症,疼痛,術後ストレスがMRHEの発症に関与していると言われている
・Reset osmostat
ADH分泌の浸透圧域値が正常より低い値でresetされている病態。SIADHの亜型でSIADHの20%を占めるとされる。血清Na120~130mEq/lに維持されるため症状がない限り治療を要しない。結核、頚椎損傷、低栄養が原因として多い。その他上記のSIADHの原因疾患によっても起こされる。
以上により、SIADHは水制限が必要なのに対してMRHEは禁忌であるため鑑別が必要です。MRHEはSIADHの診断基準をみたしてしまうため、脱水所見があるかどうかが鍵となります。
Ishikawaらが発表した論文でMRHE 患者群では血中コルチゾール値が、SIADH 患者群と比較して有意に低下していること,また有意差は はっきりしないものの、MRHE 群ではACTH 値が高い傾向があることより潜在的な副腎不全の可能性が否定できないとの指摘もあります。
今回の症例では97歳と高齢であり、心エコーにてIVC9mmと虚脱傾向でやや脱水所見が認められたこと、ACTHがやや高値であったことからMRHEとして診断しました。
ややこしかったです。。。
次に発表してくれるのは同じく2ヶ月目に研修に入る高身長、カメラ好きな研修医、大橋先生に引き継ぎます!どんな良い写真をだしてくれるのでしょうか?
あと一ヶ月の奄美生活思う存分楽しんでいきます!!
た、たいふうに恐れながらブログを書きました。。。
【参考文献】
・石川三衛: 鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(MRHE). Medicina. 2003; 40: 1918–9.
・鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(MRHE)の3例
・http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-nara-190826.pdf