千葉県東の果てにある旭中央病院から来ました初期研修医2年目の伊藤と申します!

 

自己紹介から始めると、

キャリアウーマンの母と、とてつもなく優しく真面目な銀行員の父クールでスマートな香川真司似の兄(母には嵐の二宮くんに見えるらしいです)の元で、18年間、千葉で育ちました。

 

思春期時代はよく食べよく眠りよく歌いよく駆け回るをモットーに生き、

夏休みは母方の実家高知で牛と海に囲まれて、

冬休みは父方の実家岩手で雪と山に囲まれて  スクスク育ちました。

 

そんな自分が二十歳前に話題の東京女子医大に入り

彼氏が出来ない、出会いが無い!と女子会でワイワイしながら、6年間で馬術と食べ放題の極意をとことん学びました。

 

旭の研修生活では24時間oncallが続く中、眠れる時はボロ雑巾の様に寝て、ダイエットに成功し、

奄美に7月という最高の時期に上陸しました。

 

※今後掲載する写真は、COVID−19が再流行する以前の写真であることをご了承ください。

 



 

旭ではもっぱら、先輩方から名瀬徳洲会病院の研修は、まさに天国と言われています。

 

いやいや、天国と言っても、研修ですからね...(^◇^;)骨の髄まで働きますよ!と思っていた1ヶ月前の自分に、を入れたいです。

 

はじめに伝えておきたいことは

奄美に来てたくさん成長してバリバリ働きたい!学びたい!と思っている人、

訪問診療など含めたゆったりした島の医療に携わりたい!と思っている人、

オフの時間をとことん楽しみたい!!と思っている人、

 

安心してください。

ここ名瀬徳洲会病院は全て叶えられる環境にあります。

 

 

毎週あるフィジカル回診、平島先生レクチャー、NEJ  の抄読会、CTカンファレンス、栃木や大阪と繋がるZoomカンファレンスなど、教育的なイベントは目白押しですし、訪問診療やリハビリ診察は旭ではできない経験でした。

 

 

個人的には寡黙な時は#イケメンで、喋りだすとおもろい平島先生が、

深夜0時に頸髄体操の撮影をしている声をドア越しに耳にした時は名瀬でしかできない経験をしている!と思いました。

 

 

また、1ヶ月の研修期間中、ANCA関連血管炎の患者さんを初療から担当させていただきましたが、

治療まで約10日間、

班のリーダー宮川先生とpーANCA偽陽性の可能性はないか考えたり、

腎生検を院長先生と行ったり、

膠原病の専門の先生含めたZoomカンファレンスで治療方針の決定をしたり、

治療を開始してからは

看護師さん薬剤師さん総出で見守られながらエンドキサン療法の点滴確保をしたり...

                        など思い出深い経験ができました!

 

こちらが夢とロマンを忘れない院長先生です。

 

名瀬徳洲会病院では研修医が患者さんに一番近い担当医として治療方針の決定や退院後の調整、フォローまで関わることができ、それだけでも今後の糧となるかけがえのない経験です。

 

それに加えてここでは患者さんにとっての幸せを常に考えて、コメディカルの方々、上級医の先生方も互いに補い合って、最大限Zoomなどの情報媒体や技術を駆使して患者さんと向き合っている点が、最高の病院だと思いました!!

 

温かくて、様々なバックグラウンドをもつ同期や先生、職員の方々と時間を共にできて、

離島医療の魅力をより一層感じました

 

本当にありがとうございました!

またここで働きたいと心から思える1ヶ月でした。

 

少しでも離島医療に興味のある学生さんや研修医の皆さん、是非名瀬に来てみてください。

後悔はしないと思いますので。

 

 

それでは、前置きが長くなりましたが、勉強のお話もしたいと思います。

 

今回担当したのは半年前に診断された関節リウマチ、40年前出血性胃潰瘍が既往にある62歳男性で 

主訴はふらつきと労作時倦怠感でした。

内服はRAに対してPSL 2mgとMTX 4mg/週であり血液検査では汎血球減少を認めており、結論から申し上げると、葉酸欠乏とMTXによる薬剤性汎血球減少疑いとなりました。

この方は宗教上の理由で輸血が難しく、チキンラーメンが好みで偏食があったことは特徴的でした。

 

まず簡単にRAの疫学については

日本人の300人に1人が発症すると推測されており好発は35−60歳女性、性ホルモンの関連が強く経口避妊薬や妊娠は抑制的に働くと言われています。遺伝的にはHLAーDR4の関連が強くRA患者の70%程度に上記を認め、30%で家族歴があると言われています。

関節痛に関しては手関節、MP関節、PIP関節、などが好発で、罹患関節の多さと長さ(6週間以上)で可能性は高くなります。

 

鑑別疾患としては、SLE、ウイルス感染症(パルボB19、肝炎、風疹)、反応性関節炎、乾癬性関節炎などであり上記を除外することが大切です。また、高齢発症のRAは急性の肩や膝などの大関節炎で発症することも多く発熱や体重減少も高頻度であるとされています。

 

関節炎の症状を問診で聴取する時は歩く、階段、着替え、トイレの使用、椅子から起き上がる、瓶を開ける、ドア、タイピングなどの動作に支障が出ていないか聞くのも有用とのことでした。

 

RAの関節所見の取り方としては

肩:可動域は腕を万歳で腕が耳につけば問題なし、対側の肩を掴む、ブラを外す、洗髪動作などの動作も大切

肘:腫脹、圧痛は橈骨頭で確認、屈曲は同側の肩を触ることが可能かどうか

手:くぼみで確認、可動域制限は掌屈背屈90度確認

MP:腫脹 圧痛は屈曲させたMP関節を背側から確認する

PIP:腫脹 圧痛は横から確認する(DIP関節も同様)

MP、PIP、DIP    関節の可動域は拳骨を作ったときに全ての関節が90度に届くことを確認する

膝:圧痛と膝蓋骨跳動を確認する

上記になります。

平島先生のレクチャーではHeberden結節(DIP関節の骨性肥大)やBouchard結節(PIP関節の骨性肥大)を名前の由来と共に勉強したのが印象的でした。

 

 

 

 

また、RA  は関節所見に加え血液検査も重要かと思います。

いかにもリウマチに関わりそうなRFは、診断には有用ですが感度70%のみで、高齢者や膠原病、感染症(IE、ウイルス性肝炎、Tb、梅毒、寄生虫)肺疾患(サルコイドーシス、IP、アスベスト肺)、肝疾患(PBC、肝硬変)、悪性腫瘍で陽性になるのは有名ですね。

 

抗CCP抗体は特異度95%であり、RFと両方陽性の場合は陽性尤度比16と言われているので、有用と言えそうです。

 

 

今回の患者さんは多関節炎の関節所見と血液検査から、RAとして治療開始を来院半年前に行ったようです。

 

さて内科的治療に関してですが、

基本的にはNSAIDs、ステロイド、DMARDs、生物学的製剤の4種類が大きく挙げられます。

 

NSAIDs:痛みをとりますがRA自体は抑えきれません

DMARDs:Key drugとなりMTXが第一選択

ステロイド:副作用の観点から7.5mg/日程度で使用し1−2年で終了が好ましいと言われています。

生物学的製剤:難治性の時に使用、

 

 

この中で、特にMTXという薬は、現在使用できる抗リウマチ薬のなかで、最も高い有効率、継続率、関節破壊進行抑制効果を有し、生活機能の改善と生命予後改善効果をもっていますがとにかく副作用や使用禁忌が多く、使用が難しいと感じたので今回はこちらを簡単に調べてみました。

 

 

MTXは原則 6〜8m g / 週で経口投与を開始し、開始時投与量は副作用危険因子や疾患活動性、予後不良因子を考慮して決定します。

特に予後不良因子をもつ非高齢者では,8 mg/ 週で開始することが勧められています。

 

禁忌の例もあります

関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン2016年改訂版/

 

7:胸水、腹水に長時間貯留して毒性が増強など

 

低用量で治療開始が勧められる症例

 ❶高齢者 ,❷低体重 ,❸腎機能低下症例 ,❹肺病変を有する例 ,❺アルコール常飲者 ,❻ NSAID 複数内服例など

MTXの毒性が上がる薬剤としてはST合剤やプロベネシドなど

さらに24〜48時間後に葉酸を5mg投与し副作用を予防します。

 

 

骨髄障害

・骨髄障害発症時にはただちにMTXを中止

・頻回に末梢血液検査を行い骨髄の回復を確認

・重症な場合(大球性貧血<8g/dL, WBC<1500, Plt<50000)では活性型葉酸であるロイコボリンレスキューと十分な輸液、支持療法を行うことが推奨されています。

 

 

 

 

ロイコボリンレスキュー(Leucovorin rescue)

・重篤な副作用が発現した場合、MTX投与から24-36時間以内に開始されるべき

 ◦多くの場合では投与スケジュールは以下が推奨

  ‣leucovorin calcium 10mg/m2 IV or 15mg/m2 orally 

  ‣それぞれ6時間毎に投与で、血中MTX濃度が0.05-0.1microMになるまで使用

(Oncologist. 2016 Dec;21(12):1471-1482.)

※ロイコボリンの1日投与量はMTX投与量の最低3倍量を目安とする。

 

今回は外部から取り寄せ、どうにかフォリアミン投与後にロイコボリンレスキューを行いました。

 

 

輸液と尿のアルカリ化も重要ですので記載させていただきます。

 

・MTXの迅速な排泄のために適切な輸液と尿量確保は必須事項

 ◦輸液…2.5-3.5L/m2/日ほども必要であり

・baselineの尿pHも測定しておくこと

 ◦MTXにより酸性尿になってくる→尿pH>7.0に保つことで腎障害発症を抑えられる

 ◦尿のアルカリ化には炭酸水素ナトリウムを使用すること

・5%ブドウ糖液1000mlに炭酸水素ナトリウム100-150mEqを加えて溶液をつくり

 ◦125-150ml/hrで投与

 

 

他にも下記のような副作用があるようです。

 

 

間質性肺炎

・MTXを直ちに中止

 ◦MTX肺炎、呼吸器感染症、RAに伴う肺病変を鑑別

 ◦β-Dグルカン検査

・副腎皮質ステロイドの中等量~高用量の投与(経口プレドニン0.5-1mg/kg/day)を行う。

 …重症度に応じてパルスを実施。

 ◦必要に応じてST合剤などの抗菌薬を併用

 ◦必要に応じて真菌性/ウイルス性肺炎に対する治療も開始

 

消化管障害

・葉酸や活性型葉酸(ロイコボリン)を併用あるいは増量

・MTX服用日あるいは翌日のドンペリドン、メトクロプラミドの併用が有用であったという報告あり

 

肝障害

・肝炎ウイルスキャリア/既往感染患者における肝障害

 ◦肝機能障害が発現した場合にはMTX中止の可否も含めてただちに消化器内科専門医に

・肝炎ウイルス非感染患者における肝障害 

 ◦AST/ALTが基準値上限の3倍以内…MTX投与量調整あるいは葉酸製剤の開始もしくは増量を考慮

 ◦AST/ALTが基準値上限の3倍以上…MTXを一時中止あるいは減量、葉酸の開始あるいは増量、連日投与

・肝機能が改善しない場合にはその他の原因検索も行うこと

 

 

リンパ増殖性疾患(lymphoproiferative disorders:LPD)

・原因不明の発熱/寝汗/体重減少/リンパ節腫大/肝脾腫/白血球分画の異常/貧血/血小板減少/高LDH血症などを認めた場合に考慮

・リンパ節外が原発であることも多い

 ◦皮膚病変(皮下腫瘤)、咽頭扁桃病変、軟部組織腫瘤、異常肺陰影の出現などが初発症状になりうる

・LPD疑いの際にはMTXと併用している生物学的製剤や免疫抑制剤を中止

 ◦約半数では薬剤中止で軽快するがそれでも改善なければリンパ腫疑いとして生検を考慮

 

 

まとめとしては

①MTXは副作用が出やすいため、使用する時には禁忌事項や減量条件など上記の知識を備えた上で処方し検査を行う。

②副作用が出たら一度中止にして用量確認や他の代替薬の使用を検討する。

③十分な輸液と尿アルカリ化を行う。

 

です。

次は、包容力MAXの飲食店にも精通していた大阪のくまさん安部先生です!

 

 

参考文献

✳︎関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン2016年改訂版/

https://www.ryumachi-jp.com/publication/pdf/MTX2016kanni.pdf

 

✳︎UpToDate"Therapeutic use and toxicity of high-dose methotrexate")

 

✳︎リンゴの街の救急医https://appleqq.hatenablog.com/entry/2019/06/23/181014

 

✳︎内科診断リファレンス 2015年2月 第5版 上田 剛士 p.395-401