ホリプロ『COME FROM AWAY』日生劇場 | てるみん ~エンターテインメントな日々~

てるみん ~エンターテインメントな日々~

• ミュージアム& アトラクション
• アート& カルチャー
• 音楽
• 映画
……などについて書いてます

 

 ニューヨークでおきた同時多発テロ事件。それをミュージカル化したブロードウェイに脱帽。そして、政治的なことや、事件のことは極力触れず、カナダの島に強制的に着陸して情報がないまま滞在を余儀なくされたとあるフライト一行と、彼らを受け入れた現地人との交流だけにフォーカスした100分間。リアルで、緊張感があって、不安に満ちていて、でも、善意と愛に溢れた脚本が素晴らしいプロダクション。演じ終えた途端に「うおー」と叫びながら客席総立ち。作品・舞台・客席が一体となる舞台、素晴らしかったです!

 

 誰が主役ということもなく、大きなストーリーがあるわけでなく、9.11に巻き込まれた人たちのリアルな5日間を歌いあげるだけなのですが、12人全員が「大劇場で主役を演じている」面々という、ホリプロの総力をあげたカンパニー。出番が短くても、歌うナンバーが少なくても、それでも瞬時にその役に観客を引き込むためにはこのメンバーが必要だったと納得。一人で何役も担当するのですが、衣装もほとんど同じ、化粧だって舞台メイクとしては薄く、いわば、稽古場風景を眺めているかのような演出にも関わらず、ちゃんとそれぞれのドラマの粒が立つのが素晴らしいし、無名の役者だったら「えっと、この人誰だっけ?」となるところ、全員顔見知りなので観客もストーリーに置いて行かれないのがありがたい限り。歌ウマ、芝居巧者、今までにない役とのギャップ萌えなど、全員が見せ場。多国籍音楽はほぼノンストップで、ケルト系のメロディや、フォークのメロディで歌い上げるのですが、みなさん役者歌の名手なので聴きごたえもバッチリ。この手の音楽はテンションをあげるリズム感と、心落ち着かせる素朴な音色の組み合わせが何とも魅力的ですね。演出も時おり回り舞台が回転するものの、トミー・チューンの『グランドホテル』のように、登場人物が椅子を動かすことで舞台転換。大がかりな装置による舞台転換ではなくアナログな展開が素敵でした。

 

 もはやお約束の多民族(でもアジア人は出てこない)、多体型、多宗教、人種差別、さらにLGBTまで扱っているので、オリジナル版だと上記写真のようになります。

 

 でも、この作品に関しては、同じ演出であっても日本版の方が物語の本質に集中できる舞台づくりができたのではないかと思っています。上記お約束の設定は大人の事情で、基本、長距離飛行機に乗れて、予定外の滞在でもお金に困らない人達ですから。日本版はかなりスマートに見えます。

 

 テクニックの濱田めぐみ、情感の安蘭けいが共演するのも珍しいし(基本Wキャストなお二人)、柚希礼音はなぜか一人大阪弁アクセントだったけれど(地域性を表現するためわざと?)意外とおばちゃん役が合ってたし、咲妃みゆはこのようにコロコロ役どころが変わる作品だと憑依型女優っぷりが見えたし、男優陣も主役だとちょっと偏ってしまう役どころが、何役も演じるために演技のいろんな引き出しを開けてくれたし見どころタップリ。もっとも、ミュージカルファンでないと、もしかしたら、一度の観劇だと話に置いて行かれることがあるかも!?

 

 9.11の日、私はお休みを頂戴してロスにいました。そして、朝起きてあの事件。日本へいつ帰国できるのか、航空券をどうしたものか、予定は未定の中ホテルをどうしようか、などの悩みを抱えつつ「私たちはテロに負けない!」と表明して営業していたディズニーランドにインパークしたのでした。私も、劇中の面々も、NYにいたわけではないけれど、危険にさらされたわけではないけれど、同じ時に領空封鎖に巻き込まれたナマのドラマに引き込まれました。

 

【キャスト】
ダイアン&その他:安蘭けい
ニック&その他:石川 禅
ケビンT&その他:浦井健治
ボブ&その他:加藤和樹
ジャニス&その他:咲妃みゆ
ボニー&その他:シルビア・グラブ
ケビンJ&その他:田代万里生
クロード&その他:橋本さとし
ビバリー&その他:濱田めぐみ
ハンナ&その他:森 公美子
ビューラ&その他:柚希礼音
オズ&その他:吉原光夫

スタンバイ:
上條 駿
栗山絵美
湊 陽奈
安福 毅

【スタッフ】
脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ/デイヴィッド・ヘイン
演出:クリストファー・アシュリー
ミュージカルステージング:ケリー・ディヴァイン
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
      
音楽監督:甲斐正人
演出補:田中麻衣子
振付補:青木美保
美術補:石原 敬
照明:日下靖順
音響:山本浩一
衣裳:阿部朱美
ヘアメイク:鎌田直樹
ステージマネージャー/プロダクションマネージャー:徳永泰子
テクニカルディレクター:清水重光
演出助手:西 祐子
音楽監督助手/キーボードコンダクター:竹内 聡
歌唱指導:やまぐちあきこ
主催・企画制作:ホリプロ

 

最近は関連グッズの販売に力を入れてますね。
チケット代・グッズ代のインフレゆえ購入することはありませんが。。。

 

ニューファンドランドに興味を持った人向けのリーフレット