【空き家】の相続時の特別控除 | 司法書士事務所尼崎リーガルオフィスのブログ

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不動産が亡くなった方の名義の場合、いったん相続人に名義を変更した後に売買による所有権移転登記を進めることが必要です。


当方で相続登記を行い、並行して不動産の売却についても不動産業者と相談しながら売却まで進めることができますので、いわゆる「空き家の相続と処分」も業務として対応していますが、この数年の傾向として、「亡くなった親が住んでいた不動産があるが、誰も住まないので売却したい」という内容が明らかに増えており、【空き家】問題を実感します。


2016年空き家問題を解消するべく、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」制度が創設されました。当方でも何度かこの特例を適用する案件がありましたが、今年度の税制改正でその適用対象の範囲が広げられ、より活用しやすくなりましたので、要件等をまとめてみます。


■「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用要件


 1人暮らしだった父や母などが死亡し、その居住していた家屋とその敷地を相続した相続人等が、相続の時から相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合、譲渡益から最大3000万円を控除できる制度です。


要件1:被相続人に同居者がいなかったこと

 この特例は空き家をなくすことが目的なので、適用は、亡くなられた時点で被相続人が1人暮らしだった場合に限られます。


要件2:昭和56年5月31日以前に建築された建物等であること

 対象となる家屋等は、被相続人が居住していた、昭和56年5月31日以前に建築された建物とその敷地に限られ、区分建物(マンション等)は除かれます

 耐震基準を満たしていない建物の場合、建物を壊して敷地のみを譲渡するか、耐震基準を満たすようにリフォームしてから譲渡が必要です


要件3:相続の時から譲渡の時まで空き家であること

 家屋は相続から譲渡まで引き続き空き家であることが必要です。

 相続した後、その家屋や家屋を取り壊した後の土地を、事業・貸付け・居住の用に供した場合、本特例の適用はできません。

 また、地方公共団体等から「相続開始から譲渡まで空き家であったこと等」について証明する書類等の交付を受け、確定申告書に添付する必要があります。


要件4:譲渡対価額が1億円超の場合を除く

 家屋とその敷地の合計譲渡対価額が1億円を超えるものには適用できません。

 2回以上に分けて売却した場合、対価額は通算して判定されます。売却日を数年空けたとしても通算して判定されます。


要件5:相続財産に係る譲渡所得の課税の特例との選択適用

 相続した土地等を相続税の申告期限から3年を経過する日までに譲渡した場合に、相続税額の一部を取得費に加算して譲渡所得を計算できる特例がありますが、本特例は、この特例との選択適用です。


■平成31年4月1日以後の譲渡からの改正点 「老人ホームへの入所」が対象に!

 

 老人ホーム等に入所したことにより被相続人が居住しなくなった家屋等は、従来、本特例の適用対象となりませんでした。

 しかし、今年度の税制改正により、平成31年4月1日以後の譲渡から、次の要件等を満たす場合に限り、本特例を適用できることになりました。


1.被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続開始直前まで老人ホーム等に入所していたこと

…老人ホーム等とは、グループホーム・養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・サービス付き高齢者向け住宅・障害者支援施設・障害者共同生活援助を行う住居をいいます


2.被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続開始直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用、又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと

…一定の使用とは、被相続人居住用家屋が、被相続人が居住しなくなった時から相続開始直前まで、引き続きその被相続人の物品の保管等の用に供されていたことをいう



空き家を相続した後に相続人がその不動産を売却した場合、譲渡所得が発生しなければそもそもこの制度を使う必要はありませんが、取得費が不明である場合や取得費が判明しても譲渡所得が発生する場合にはこの特例を検討する価値はあります。


今回改正で、老人ホームに入所していた際の適用もされることになったため、特例を適用できる可能性も広がりましたので、ご自身の相続で対象となるかを今一度見直されるとよいと思います。