介護付き入居施設に入所していた人の遺産はどうなる? | 司法書士事務所尼崎リーガルオフィスのブログ

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高齢のAさんは介護付き入居施設に入所していました。
日常生活については全面的に手厚い介護や介助を受けていましたが、しばらくして亡くなってしまいました。


Aさんには身寄りがなく、相続人がいません。


この施設を運営する一般社団法人はAさんの特別縁故者として、相続財産の分与の請求を考えています。
施設でも特別縁故者として認められるのでしょうか?



相続人がいない人が亡くなった場合、その人の遺産は相続財産法人となり、債務などを清算した後に残った遺産は、国庫に帰属するのが原則となっています。


ただし、亡くなった人と生計を同じくしていた人や、療養看護に努めていた人などの特別な関係があった人(特別縁故者)がいれば、その人の請求によって遺産の全部または一部を分与されることができます



介護付き入居施設では、入所者から入所費などの費用をもらっているので、介護は対価を得て行っていることになります。
親身になって介護や介助をしていても、それに見合った費用をもらっている場合は、入所契約に基づいて介護等がなされたものであり、特別の縁故によるものとはいえません



しかし、施設が特別縁故者として認められた例もあります。


厚生労働省から委託を受けて重度の被災労働者のための介護付き入居施設を運営する一般社団法人が、首から下の全身に麻痺がある入所者を6年に渡り介護していたケースです。


その施設では全面的な介護・介助を行っていただけでなく、買い物やレクレーション行事に連れ出したり、意のままにならないと暴言を吐くことがあったにもかかわらず無理な要求に対しても献身的に対処し、その入所者の実母が死亡した際には葬儀等の手続きも行い、本人の死亡時にも葬儀や永代供養の手続きまで行ったそうです。


施設において献身的な介護を受け、これによりほぼ満足できる生活状況を維持することができたと認められるとして、療養看護に努めた特別縁故者に当たるとされました。