20220319

ウクライナ戦争と沖縄米軍基地(2)

-揺らぐ国連の「安全保障体制」-

 

近年民主主義諸国は、価値観を異にする中国の活発な勢力圏拡大の動きを抑制し、中長期的に国際社会全体の平和と発展を図るため、硬軟織り交ぜた数々の外交的努力を続けてきましたが、ロシアのウクライナ侵略を契機にして、国際環境は一変しました。喫緊の課題は、ウクライナ危機を乗り越えることです。しかも、民主主義諸国は、第3次世界大戦の勃発を防ぐため、欠陥の多い国連体制を守っていくことが求められます。

 

民主主義諸国は、ウクライナに対する人道上の支援にとどまらず、諸々の軍事支援を適切に継続することが求められています。また、ロシアの継戦能力を殺ぐため、貿易、投資、金融など非軍事的な手段で、対ロシア包囲網を早期に作り上げ、その効果的な運用が求められています。

 

そうした中で、民主主義諸国は、プーチンが戦術核の使用に踏み切らないよう、また、NATOとロシア軍との直接的な軍事衝突に至らないよう、細心の注意をしていく必要があります。民主主義諸国の前に立ちはだかる難題は、非常に多いことを認めざるを得ません。

 

ウクライナ戦争がどの程度続くものか分かりません。多くの人たちの血が流されていくのを見るのは、まことにつらいことですが、今後の停戦、和平、和解のための話し合いにおいて、ウクライナの主権を守り抜くことは、至上命題です。そこで前回指摘した平和的な手段による「プーチンなきロシア」の実現を図ることが、重要になります。

 

このためには、国連の機能に着目し、今後国際法違反の責任を問われる恐れのある独裁者に対し、国連主催の諸会合への出席を認めないこと、これが有力な選択肢となるでしょう。ロシアは、安保理では拒否権を行使することができますが、総会では、プーチンの国連出席を拒否する決議案の採択を阻止することはできないでしょう。

 

当然のことながら、国連がこのような決議をする前に、名誉ある形でプーチンが政権に座から降りる環境を整えることが重要であり、これができるのは、中国、ベラルーシ、トルコなどの国々です。習近平、ルカシェンコ、エルドアンといった指導者たちの今後の動きを注目していきたいと思います。

 

民主主義諸国としては、国際法違反の罪を問われ得る「無法国家」がせめて普通の「権威主義国家」になるよう仕向けることが喫緊の課題です。国連の「集団安全保障体制」は弱体ですが、何とかしてその枠内で、早期に、「プーチンなきロシア」を実現していくことが強く求められます。