私は割り箸。白樺の木から作られた、ほのかに良い香りが漂うごく一般的な割り箸だ。
今はまだ薄暗い紙袋の衣に包まれ、コンビニのレジ袋の底で、ホカホカの豚カルビ弁当に寄り添っている。私という存在は少し特殊で、今は「一本」の木板だが、やがて中央の溝に沿って「右半身」と「左半身」に分かたれる運命にある。二つに分かれて初めて、一つの道具として完成するのだ。
私の割り箸生において、最高に誇らしく楽しい瞬間。それは何と言っても、人間の手によって「完璧な真っ二つ」に割られた時である。
静寂の中、人間の両手が私の端と端をしっかりと掴む。緊張の数秒間ののち、パチン! という小気味良い音と共に、右と左が寸分の狂いもなく均等に分かれる。あの見事なシンメトリーの美しさ! 互いに「素晴らしい割れ具合だったな」「ああ、お前もな」と称え合いながら、人間の指の間にスッと収まるあの達成感はたまらない。
そして、ツヤツヤに輝くマグロの赤身を優しく挟み込んだり、熱々の豚骨ラーメンのスープの中から、極細麺をガッチリとホールドして持ち上げたりする時の高揚感。人間たちの「美味しい!」という歓喜の溜め息を一番近くで聞けるのは、私たちだけの特権だ。
しかし、使い捨てられる運命の割り箸には、常に理不尽な悲哀と屈辱が隣り合わせでもある。
私が一番恐れているのは、分断の儀式における「大失敗」だ。
人間の力の入れ具合が少しでも狂うと、取り返しのつかない悲劇が起きる。片方が極太の丸太のようになり、もう片方が折れる寸前の爪楊枝のようにペラペラになってしまう、あの「斜め割れ」である。
あまりの無惨な姿に、割った人間は舌打ちをする。極太になった右半身は「俺のせいじゃない!」と叫び、ペラペラの左半身は「折れる、ラーメンの重みで折れてしまう!」と泣き叫ぶ。あの時の気まずさと絶望感と言ったら、スプーンの米粒放置の比ではない。
さらに腹立たしいのは、人間の「こすり合わせ」という野蛮な行為だ。
割った直後、切り口の「ささくれ」を落とそうとして、人間は私たちをシャシャシャッ! と激しくこすり合わせることがある。冗談じゃない。私たちは原始時代の火起こしの道具ではないのだ! せっかく綺麗に割れたというのに、あんな乱暴な摩擦を与えられたら、私の白樺のプライドはズタズタである。
さて、そんな期待と不安を胸に抱いていた、ある日の深夜のこと。
私を買っていったのは、少し目の下にクマを作った、オカルト好きそうな大学生の青年だった。
彼はアパートの机に座ると、静かに私を紙袋から取り出した。
(来た! ついに儀式の時だ。頼む、均等に割ってくれ!)
青年は両手で私の端を掴み、ゆっくりと、しかし確かな力を込めた。
パキッ!
素晴らしい! 完璧な二等分だ! 右半身と左半身のバランスはこれ以上ないほど美しく、ささくれ一つない。私は大歓喜した。
(さあ、熱々のカルビ弁当をかっ込もうぜ!)
私たちは準備万端だった。しかし、青年はお弁当のフタを開けなかった。
代わりに、彼は部屋の床に奇妙な模様の描かれた大きな紙を広げた。そして、完璧に割れた私たちを、なぜか「両手に一本ずつ」軽く握りしめたのだ。しかも、箸先を前に向けて、ピストルのように構えている。
(えっ? 何その持ち方。お弁当は?)
青年が部屋の中をゆっくりと歩き始めると、突然、私の内側から奇妙なエネルギーが湧き上がってきた。先端がピリピリと痺れ、見えない磁力に引っ張られるような不思議な感覚。
「……ここか」
青年が部屋の隅にある古びた本棚の前に立った瞬間。
なんということだろう。青年の意思とは無関係に、右手に握られた私と、左手に握られた私が、スゥーッと内側に引き寄せられ、空中で「バッテン(X)」の形に交差したのだ!
「よし、反応あり。やっぱりこの裏に落ちてたか」
青年が本棚の隙間に手を突っ込むと、そこからはホコリまみれの「失くしたテレビのリモコン」が出てきた。
……ダウジング・ロッド?
水脈や隠された探し物を見つけ出すという、あの超常現象の道具に!?
現在、私は使い捨てられることなく、青年の机の上の立派なペン立ての中で、高級な万年筆たちと肩を並べてVIP待遇を受けている。
どうやら私の「白樺の材質」と「完璧な二等分」が、霊的なエネルギーをキャッチするのに最高のアンテナとして機能したらしい。もはや豚カルビ弁当の肉汁を吸うことも、ラーメンの麺を持ち上げることもできない。それは少し寂しい。
しかし、青年が「お前、マジで百発百中だな!」と私を頼りにし、失くした家の鍵や、スマホの充電器、果ては隣の部屋の幽霊の気配まで探し当てて重宝してくれるのは、特別な存在になれたようで非常に誇らしい。
ただ一つだけ問題があるとするなら。
たまに青年が机でカップラーメンを食べている時、私の本能である「麺を掴みたい!」という激しい衝動が抑えきれなくなり、ただのダウジングのはずなのに、箸先が勝手にスープの中へダイブしようと暴れ出してしまうことである。その度に青年は「うわっ! このラーメン、強烈な霊体が憑いてる!」と勘違いして、ラーメンを捨てるハメになっている。