ゲーマーズ 4話 監督と脚本について | 墜落症候群

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墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 

 ゲーマーズ。最近、原作既刊八巻を一気読みしてしまった俺からすると、そこまでいいアニメ化にも思えないんだよな。

 原作者の葵せきなは生徒会の一存シリーズで一時代を築いた人だが(累計売り上げ600万部)、そちらの方も二期2クール分アニメ化された割にはそこまで話題になった印象がない。

 生徒会の一存の方も読み始めたのだが、基本的には会話劇なので、アニメ映えしにくいというのは伝わってくる。

 アニメというのは基本的に動きを楽しむもので、別にくっちゃべっているだけならドラマCDでもいいじゃん、となってしまいがちだ。

 会話劇のアニメといえば化物語が有名だけれど、シャフトはただの会話を意味深に描写することにかけてはかなりの技術を有していると思う。それに化物語はバトルパートがあるので、そこに超絶的な作画枚数をぶっ込むことができる。そうやって作画力の緩急をつけることができるので、アニメ作品として魅力的になる部分もあるのだと思う。

 一方、生徒会の一存はほぼ生徒会室という密室における会話劇であり、やはりアニメ映えはしにくい作品とは思える。アニメ版はまだ見たことがないので、後で見てみたいとは思っている。

 ゲーマーズの原作も生徒会の一存と同じく、かけ合いが楽しく、キャラクター性の掘り下げがモノローグに託されている。こういう作品の場合、ハルヒや四畳半神話体系のようにモノローグアニメにしてしまうのも手だと思うのだが、ゲーマーズは勘違いを主軸としたシチュエーションコメディとしての威力が強いので、そっちをクローズアップしたカタチなのだろう。ただ、そこを強調し過ぎている気がする。

 端的に言うとモノローグとセリフの取捨がかなり下手くそで、それにより主人公の雨野景太への感情移入が削がれていると思う。

 雨野景太は外面を拾えばぼっち系ゲーム男子に過ぎないので、彼の魅力をセリフなりモノローグなりでちゃんと拾い上げないと、天道が雨野に惚れる下りも説得力を失う。

 天道が雨野に惚れるのは、雨野が上原に対して「ゲーム部をバカにするな!」と叫ぶところを聞いてしまうところが大きな原因となるが、そのシリアスな重要なシーンを、原作にはないギャグテイストにしてしまっている。そこがかなり原作既読者ならはっきりと「下手だな」と思えるところだろう。

 俺はアニメは監督と脚本が重要だと思っているのだが、ゲーマーズの監督はこの作品が初監督作品だし、脚本はこれまでアニメの仕事はゼロ、ウルトラマンとかの脚本を書いていた人らしい。ウルトラマンの方は人気らしいが、特撮とアニメはまったく作法が違う。

 マンガ・アニメ・ライトノベルといった媒体は、その面白さを大きくセリフやモノローグに頼っている。シチュエーションコメディ的な部分を強調するの自体は構わないが、原作からのセリフ・モノローグの取捨が下手くそだと単純に登場人物への感情移入が弱くなる。登場人物が何を大事にしているキャラをしっかりと描写してやらないといけない。あと、三話に気になる展開で終えてから、四話でまったく違う話を挟み込むのは、結局脚本家のミスではないんだろうか? 三話までは大体一巻の話をやっているが、四話は二巻の後の方の話だ。とにかく序盤はキャラを丁寧に描写して欲しかったし、原作を読んでから一話を見るとネタバレ風テロップがサムい。そこからしてやはりシチュエーションコメディ的なウリの部分だけに着目して、キャラクターの魅力そのものに迫らない物の見方の浅さが透けて見える。

 というか、アマゾンでも原作は好評価なんだが、ゲーマーズってあんまり優遇されてないんだろうか? 原作が生徒会の一存よりも売れておらず、その生徒会の一存もアニメとあんまり親和性が高くなかったから、ゲーマーズのアニメ化も期待されてなかったんだろうか?

 少なくとも、もうちょっと経験のある監督や脚本に任せておけばもっといいアニメ化になっただろうと考えると、なかなか悔しい。

 それくらい原作が面白かったということだ。アニメ化にケチをつけたくなったのは俺としてはほとんど初めてくらいには珍しい。

 毎巻、気になる引きで終わるラノベなので、アニメもどこで切るかが難しいとは思うが、ここから挽回していって欲しい。

 

 ともあれ、今期はアニメ化された原作ライトノベルでは、ようこそ実力主義者の教室への次に、ゲーマーズが売れているみたいだ。やはり流石の原作力で、性に合えば読むのが止まらなくなると思う。アニメが少しでも気に入った人は、原作にも手を伸ばして欲しい。恐らくアニメよりも原作の方が面白い。

 

 

ゲーマーズ! 雨野景太と青春コンティニュー (富士見ファンタジア文庫)