父のアミロイドたんぱく質を詳しく調べる為の簡単な手術が行われた。心臓に付着しているアミロイドたんぱく質を取って調べるそうだ。
結果はやはりあまり良いものではなかった。
以前も書いたとは思うが、アミロイドーシスと一言でいってもいろいろなタイプがあるようだ。
正直、今でもあまり調べたくない。アミロイドーシスという文字を見るだけで、胸が詰まるような思いをしてきた。
だけどそれではこの病気と懸命に戦った父が報われないと思うようになり少しずつ読むようにした。
難しい事がいっぱい書いてあって読むのも大変である。どうやら医学生に聞いてみてもかなり理解不能なことが多いと言っていたし、知り合いの医者に父の病気を話した時も「アミロイドーシス」という病気を見つけることができただけでもすごいのだと。
アミロイドは特殊なたんぱく質で、一個の物質ではないらしくいろいろな原因で集まってきて最終的には線維状のようになって見えるらしい。これを聞くだけでもようわからん!
とにかく変性たんぱく質で体にとっては不要なもので良いものではない。
このアミロイドがどんどんたまって臓器に付着して最終的には機能不全を起こす。
アミロイドーシスの「シス」というのは医学用語では「群」とか集まってきた事をあらわすのに使ったりするらしい。「○○症」とかで使ったりもするのだとか。
つまり「アミロイド」がたくさん集まってきた状態のなので、「アミロイド群」「アミロイド症」のような意味になるのかと理解できる。
不要なものがたまっていくと聞いて、年齢とも関係あるのかと思いきや、老人性アミロイドーシスもあれば、そうでないのもあるらしい。発症する年齢も様々だと言われた。
そして、全身性と限局性と大きく分かれているようだ。限局性の分類にはいわゆるアルツハイマー症なども含まれるらしい。
全身性においてもその種類は「AA」「AL」などいくつかタイプがあり、そのタイプによっても予後は変わってくるようだ。
最近では早期発見で治療法もかなり進歩しているらしく余命がかならずしも短いわけではないそうだ。
有名人ではプロレスラーのアントニオ猪木さんや阪神タイガースの田尾選手がアミロイドーシスに罹患したと発表されている。
猪木さんは残念ながらお亡くなりになってしまったが、元プロ野球選手の田尾氏は現在もご健在である。
タイプによっても進行度や余命期間は随分違うようだ。
父はおそらく「AL」というタイプで進行度の早いものであったと思う。(どのタイプか説明されたのかもしれないが記憶がとんでいて、断定はできないのだけれど)
医者からは「いわゆる悪性」というような説明を受けたが、後々調べたところこのタイプは「予後不良」と書かれていることが多く、余命平均期間も約1年ほどである。
これもまた、その人によるみたいだし、医療はすさまじく進化しいているのでなんともいえないが、父の時に治療法があればと悔やまれる。
前置きが長くなってしまったが、検査の後、アミロイドの進行具合から父の余命はあと4か月ほどと言われた。
信じたくはなかった。受け止めることもなかなかできなかった。
そしてどうにか今止まり続ける心臓にペースメーカーを入れて心臓を正常に動かす事が最優先とされた。
父のペースメーカーの手術が終わった日、父は笑顔だった。
その笑顔をビデオに収めた。
胸のところを押さえて「まだ血が止まらんらしいけどな」といいながら、笑いながら何度もカメラに向かって手を振っていた。
そして、いつもけたたましくなっていたモニターは静かになっており規則正しい波を打っていて、父の心臓は正常に動いているのだと少し安心した。
そのビデオはすぐに母のところに行って見せてあげた。
母もビデオを見て久しぶりに満面の笑顔だった。
「お父さんに早く会いたいね~」というと、小さくうなずいていた。
母はずっとビデオを見つめていた。
もうすぐ家族みんなで会えると私も強く信じた。父がいなくなるなんて信じたくなかった。
今もあのビデオをみると泣いてしまうけど、父の笑顔は今もそこにある。見るたびに、ちゃんと頑張って生きるよっていつも思う。
結局何もしてあげられなかったけど、お父さん、笑顔を残してくれてありがとう。

