
血を流す必要はない
~自己犠牲から自己の力を取り戻す~
友人のルーシーは、疲れ切り、イライラし、体調まで崩していました。
仕事の日々も家族との時間も、ただ自分を引きずるように過ごしていて、ついには典型的な燃え尽き症候群の状態になってしまったのです。
ルーシーは、自分の過去をよく知るスピリチュアル・アドバイザーのもとを訪ねました。
すると彼はこう言いました。
「あなたは『自己犠牲』によって苦しんでいますね」
「『ノー』と言えずに続けた結果、あなたはかなり消耗しています」と。
ルーシーは小さい頃から、個人の犠牲が周囲の利益になると教える、「古びた十字架を背負うこと」を美徳とするような宗教の中で育ちました。
そして、彼はこう続けました。
「『あなたが世界に与える最大の貢献は、何をするかではなく、どれだけ健やかな状態を保っているかである』と理解することです。
そしてそれが、あなたが今、人生において真っ先に学ぶべきことです。
あなたが生き生きとして、喜びに満ち、自分の力を感じていれば、罪悪感から生じた義務で、あなたが自分を苦しめている時より、はるかに多くの助けを人に与えられるのですよ」
ルーシーの話を聞きながら、私は、自分自身もまた「人を助けたい」という思いから、多くの仕事や会合を引き受けてきたことに気づきました。
そして、それらは、しばしば必要以上のストレスを私にもたらしていました。
私もまた、「周囲へ奉仕すること」と「自己ケアをしっかり行うこと」との間に、健全なバランスを作る練習をしてこなければなりませんでした。
『奇跡のコース』には、こう書かれています。
「健康とは、身体を愛なく扱おうとするすべての試みを手放した結果である」と。
その『奇跡のコース』のなかの、イエスと称する声は、人々が聖書の「神の子羊」という表現を大きく誤解しているとも説明しています。
彼は、「私は『その血をもって世界を救済するために、犠牲となった子羊』として知られることは望んではいなかった」と言います。
真の意味においては、「子羊」とは、むしろ純真さの象徴なのです。
そして彼は、私たちにもまた「神の子羊」であってほしいと願っています。
その彼の願いとは、「神は、私たちが最も輝いた状態で生きることを望んでいるのだ」と理解し、そして、「なんらかの負い目を背負っている」というような罪悪感によって、自分本来の光を覆い隠すことのないようにして欲しいというものです。
自己犠牲を美化するのは、宗教だけではありません。「生きること」より「犠牲」を優先する価値観を人々に植えつけている文化も少なくはありません。
例えば多くの日本人は、働きすぎによって生命力を消耗しています。
自分自身の人生の質を犠牲にして、会社に尽くしているのです。
その結果、日本では自殺率が非常に高く、多くの人々が「過労死」、つまり働きすぎによって命を落としています。
日本人の生徒たちに教えるクラスでは、「私たちは皆、自分を傷つけることなく、幸せで健康的で、生産的な人生を生きる価値がある」ということを、私は伝えています。
少し時間を取って、自己犠牲があなたの人生でどれほど大きな役割を果たしてきたか考えてみてください。
きっと、自分が他人に与えた以上に、多くのものを失ってきたことに気づくでしょう。
では次に、「自分を大切にしている時の自分」を思い浮かべてください。
よく食べ、よく眠り、愛する人たちと魂を育む時間を過ごし、自然に触れ、人生が喜びに満ちた自己表現となっている自分を思い浮かべてみてください。
そんな「自分を育てているあなた」こそが、神があなたにこうあって欲しいと望んでいる姿なのです。
『奇跡のコース』のレッスン101は、私たちに「神の私への意志は、完璧なる幸福である」という言葉を覚えておくように、と言っています。
もちろん、私たちは、できる時には他人を支えたいと思っています。
互いに助け合うことで、この世界は天国に近づいていきます。
しかし、それがあなた自身の人生を地獄のようにしてしまうのであれば、本末転倒です。
あなたが世界に最も強く与えているものは、特定の言葉や行動ではなく、「あなたが放っているエネルギー」なのです。
たとえ正しいことをすべて行っていたとしても、自分を犠牲にしている感覚を抱えているなら、あなたは世界から生命力を奪ってしまっています。
つまりは、私たちを本当に左右するのは、行動そのものよりも「在り方」です。
肉体や感情、人間関係への癒しの鍵は、自分の中を流れる生命力の流れに触れ、その神聖な川がどこへ向かおうとしているのかを見つけることにあります。
もしあなたが、「自分には満たされた人生を生きる価値がある」と知っているなら、それが助けとなり、あなたの大切な人たちもまた、自分自身の人生を見つけられるようになるでしょう。
ルーシーは、二つのリストを作りました。
- 罪悪感や不安、義務感、自己犠牲からやっていること
- 心からやりたいと感じてやっていること
そして彼女は、一つ目のリストの項目を少しずつやめたり減らしたりしながら、二つ目のリストを増やしていきました。
次に私がルーシーに会った時、彼女は見違えるほど明るく、健康的で、生き生きとしていました。
あなたは幸せになるために生まれてきました。
「健やかさ」を人生の最優先に置いた時、他のすべては美しく整い始めます。
そしてあなたは、そもそも背負う必要のなかった十字架から降り、大切な人たちにも「自分らしく生きること」を示していくのです。
アラン・コーエン
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