かなり前にAmazonのマーケットプレイスでLM2596Sを使った電源モジュールを購入していましたが、全然使わずにパーツ箱で眠っていました。
先日部品を探していたときに見つけたので、特性を見てみました。
LM2596Sは元々 National Semiconductor社(後にTexas Instrumentsが買収)が設計したICで、数社からセカンドソース品が出ています。
しかし、出回っている安価な電源モジュールに使われているICは殆どが偽物。
TI社も注意を喚起するHPを出しています。
だまされていませんか?仕様上の電流制限と実際の電流制限の確認
またYoutubeにアップされている以下のビデオも参考になります。
今回も評価する前に、回路図等を確認。
基板を見て書いた回路図
オペアンプに刻印は全くなく明らかに怪しい物でした。
なので、オペアンプの品番はAliexpressの出店者のページに載っていた回路図からの類推です。
上のページに載っていた回路図
基板上の部品の配置(表)
基板上の部品の配置(裏)
電流検出用のR6はプリント基板のパターンで作られています。
多回転のポテンショメータが3つ実装されていて、
SW1は出力電圧調整用
SW2は電流が流れていることを示すLEDを点灯させる際の電流値の設定用
SW3は出力電流の最大値の調整用
となっていました。
評価条件
電源モジュールの出力電圧は15V, 12V, 5V, 3.3Vで出力電流は0から3A、
入力電圧は、5V, 6V, 9V, 12V, 15V, 18V, 24Vに設定。
電源モジュールを放熱していなかったのと、今回使用した電子負荷の放熱板が小さくて連続だと消費電力5W程度までしか対応できなかったので、電子負荷の消費電力による発熱の平均値が5Wを超えないように消費電力に応じて冷却時間を制御しました。
例えば1点の測定に1秒掛かって消費電力が30Wの場合は、冷却期間を5秒としています。
基板の評価は何も部品を追加しないで実施したかったのですが、特性があまりにもひどかったので出力に2200uFを追加しています。
2200uFを追加した様子
2200uFを追加したのは、基板単体ではリップル電圧が余りにも大きかったためです。
入力電圧12V、出力電圧5V、出力電流1Aの場合の基板からの出力 H:10us/div V:200mV/div
リップル800mVp-p 周波数25kHz
入力電圧12V、出力電圧5V、出力電流100mAの場合の基板からの出力 H:10us/div V:50mV/div
リップル160mVp-p 周波数50kHz
LM2596Sの正規品のスイッチング周波数は150kHzですので、このモジュールのICは見事に偽物ですね。
スイッチング周波数50kHzのICにLM2576があり、データシートに載っている回路図を見ると、
L1が150uH、Coutが2000uFとなっています。
スイッチング周波数が低いので、大きな値の部品が使われるのは当然ですね。
一方、電源モジュール基板のL1は33uH、Coutに相当するC2は220uFでしたので、これを参考に2200uFを追加しています。
C2に2200uFを追加した場合の特性
入力電圧12V、出力電圧5V、出力電流1Aの場合の基板からの出力 H:10us/div V:20mV/div
リップル75mVp-p 周波数50kHz
リップルは10分の1以下になりました。
ちなみに、更に出力にリップルフィルタを入れたときには、
リップルは抑えられてスイッチングノイズが支配的なレベルになります。
フィルタは33uHと100uF電解+10uF積層セラミックです。
2200uFに更にリップルフィルタを追加した場合の様子
リップルフィルタを追加した場合の特性
入力電圧12V、出力電圧5V、出力電流1Aの場合の基板からの出力 H:100ns/div V:5mV/div
以下の評価は、リップルフィルタ無しで2200uFのみ追加した結果です。
まず
出力電圧
出力電圧15Vの場合
出力電圧12Vの場合
出力電圧5Vの場合
出力電圧3.3Vの場合
3Aを出力できるのは、出力電圧から約3V高い電圧で使ったときだけで、実用的には最大2A出力の電源ですね。
電力変換効率
グラフの縦軸は、出力電力(出力電圧と出力電流の積)を 入力電力(入力電圧と入力電流の積)で割った値を%で表しています。
出力電圧15Vの場合
出力電圧12Vの場合
出力電圧5Vの場合
出力電圧3.3Vの場合
変換効率は出力電圧が15Vのときは90%を超えますが、3.3Vの場合は80%以下です。
出力電圧が低いほど効率が悪くなるのは、ICがMOSではなくバイポーラプロセスで作られ、しかも耐圧を稼ぐために? コレクタエミッタ間の飽和電圧が高くなっているのが影響しているのでしょう。
LM2576のデータシートに載っていた飽和電圧の特性
ノイズ
出力電圧5V、入力電圧12Vの場合
ここでは、リップルフィルタを入れた場合と入れない場合の特性を示しています。
リップルフィルタを入れると良好な特性になります。
出力電流制限の特性
出力電圧5V、出力電流の最大値を1Aにセット
グラフの横軸は電子負荷の流す電流の設定値、縦軸は基板から流れる電流
少しオーバーシュートのような飛び出しはありますが、設定した上限電流に応じてちゃん出力電流は制限されています。
電源オンオフ時の過渡応答
出力電圧5V、出力電流1Aで電源オンオフ時の過渡応答を見てみました。
本来はEN端子を使って制御するべきなのですが、大元の電源を入り切りするという野蛮?な試験です。
立ち上がり、立ち下がりとも全く問題ありません。
LM2596Sの刻印の電源モジュールは、スイッチング周波数が50kHzの場合偽物ですが、スイッチング周波数50kHzのLM2576Sを使いこなすときと同様に出力に大きな平滑コンデンサと簡単なCRのリップルフィルタを入れることで良好な特性が得られることが判りました。
ただし、最大電流は2A程度です。























