悪食 40点
今年 106本目
監督、脚本 ジョージ・A・ロメロ
原作、脚本 ポール・マッカロー
主演 レイン・キャロル
W・G・マクミラン
ホラー映画の巨匠ジョージ・A・ロメロの初期の監督作品。
インディアン・ムービー特集をやっている大森キネカへ。
鑑賞結果、軍が開発した細菌によって街はパニックに陥るというパニックホラーの原点というべき作品ではあるが、緻密に計算された現代のパニックホラーと違い、ラフな作りでもこの時代では怖かったんだろうなぁ。
ここからネタバレ満載でいきますからご注意を‼️
ペンシルバニアの田舎町に細菌兵器を積んだ軍用機が墜落し、それは街の水源を汚染した。
汚染された水を飲んだ街の人達は次々と発狂していき、人を殺しまくるのである。
そんなパニックに陥った街に軍は素早く対応し、街を封鎖するのである。
しかし封じ込めに乗り込んだ軍でさへ詳しい内容は明かされず、軍の中でも不安と焦燥でその行動はどんどん過激になっていき、命令に従わない住民を射殺するような状態になっていった。
住民はそれこそ何も知らされず、街に隔離されているだけ。暴動も起こり始め、軍と対立する。
政府は細菌兵器を街に封じ込めている間に抗ウイルス薬を作ろうと躍起になるが、そのウイルスを作り出した科学者を何の設備も対策も無しに街に送り込むなどという大きなミスも犯す。
もちろんその科学者も当然のことながらウイルスに侵され、発狂するのだ。
そのミスは縦割りの軍命令系統によって粛々と遂行されていくのである。
打つ手を無くした政府は核兵器によって街ごと消滅させようとする作戦を立案する。
その実行の為に街で指揮をとる司令官を一人ヘリコプターで脱出させようとするのである。
エンド。
という話です。細菌兵器によるウイルスの蔓延によって、街は汚染され、それがアメリカ全土に広がらないように軍によって街を封鎖する。
しかし街に派遣された兵力では街の封鎖を維持出来ず、その後の対応を政府は迫られるのである。
その上、軍の行動に不信感を持った者達の街から脱出しようとする行動や、軍のやり方に反対する勢力、そしてウイルスによって発狂し見境なく人殺しを始める感染者達と三つ巴の生き残りゲームが始まる。
実際にこのようなことが起こったのなら政府はどの様な対応をするだろうか?
自分がその責任者ならどう対応するか?
ウイルスが蔓延すれば、人類は滅亡する。
ウイルスが広がる前に街ごと焼き払って仕舞えば、犠牲者は街の住民だけで済む。
少数の犠牲で多数を救われるのならそれに否を唱えるものはいないだろう。
しかし少数であっても自分の命令で罪も無い人達を死に追いやるのは普通の感覚では出来ないだろう。
この作品の中でも最終結論は大統領は出していない。
そんな葛藤を観せられても今の世の中ではまともに受け入れられないだろう。
映画として結論は感じさせて欲しい。
この映画は結論がどちらに行くか解らない状態で終わる。
見事な消化不良だ。
ラストシーンで現場の司令官が一人街からヘリコプターで脱出しようとする。
それは政府からの指令でもある。
しかしウイルスに侵されていない保証は殆ど無いのだ。
そんなリスクを政府は負うだろうか?
悪食には納得するラストシーンがある。
司令官がヘリコプターで街から出ようとするその時、核兵器によって爆撃され、ヘリコプターもろとも全てが核兵器の光に包まれて終わるというのはどうだろうか。
これなら良いか悪いかは別にして納得出来るエンディングなのだが。
この時代は、まだ人の良心を少しは感じさせたいのだろう。
悪食には甘々な作りで、面白さを感じられなかった。
今なら悪食をも身の毛のよだつ最悪なエンディングを描く監督も沢山いる。
そう思えば、この時代はまだ人の温もりを感じる優しい時代だったのかもしれない。
最後に一言。これは上映システムの問題かもしれないが、音が凄まじく酷い。
ガチガチな硬い音質。状況音であるべき、鳥のさえずりや虫の音などが異常な大きさで鳴り響いていた。
こっちの方がよっぽど、ホラーだった。
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