『居眠り磐音』 松坂桃李の哀しい演技が最高! | 悪食のシネ満漢全席

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ろくに情報知らぬまま、当たり屋みたいに突撃して、 しょーもない感想を言い合って、備忘録代わりに残します。 かなりの無責任、言いたい放題、無礼千万をお許し下さい。

 

悪食  87点

今年  58本目

 

監督  本木克英

原作  佐伯泰英

脚本  藤本有紀

主演  松坂桃李

       木村文乃

       芳根京子

       柄本祐

       杉野遥亮

        佐々木蔵之介

        奥田瑛二

       波岡一喜

       中村梅雀

       谷原章介

       柄本明

        

佐伯泰英原作の時代劇小説を松坂桃李時代劇初主演で映画化。

面白そうではないですか。楽しみです。

二子玉川109シネマズ へ。

 

鑑賞結果、なんとも哀しい話ではありますが、刺さりました。面白いです。

松坂桃李の演技と殺陣が素晴らしかった。

脇を固める俳優陣も流石です。

 

ここからネタバレ満載でいきますからご注意を‼️

 

3年間の江戸勤番を終えた坂崎磐音(松坂桃李)、小林琴平(柄本祐)と河合慎之介(杉野遥亮)は、共に九州、肥後関前藩に戻った。

琴平の妹、舞(宮下かな子)は慎之介に嫁いでいて、琴平と舞の妹である奈緒(芳根京子)は磐音との祝言を控えていた。

しかし妻の舞が不貞をしたという噂を耳にした慎之介は融通の利かない真っ直ぐ過ぎる性格も災いして理由も聞かず舞を切り捨ててしまう。

それを知った琴平は、悲しみと怒りを押し殺しながら妹、舞の亡骸を引き取りに行くが、そこで舞を愚弄し、慎之介にあらぬ噂を吹き込んだ慎之介の叔父を斬ってしまう。舞を運び出そうとしたその時に悲しみでおかしくなった慎之介は琴平に切り掛かり、剣豪でもある琴平に返り討ちにあってしまう。

 

この事件の顛末を調べた藩の目付は、原因は慎之介の方にあり、琴平(柄本祐)は武士道にのっとった対応をしただけに過ぎないと老中に報告した。

しかし老中、宍戸(奥田瑛二)は琴平に科があると判断し、捕らえろと目付に命令した。

納得のいかない琴平は、捉えにきた藩の人間をことごとく斬り伏せるのである。

そこに駆けつけた磐音(松坂桃李)が説得するも琴平は覚悟を決め、最後の頼みと言って磐音に尋常の勝負を挑むのである。

剣豪同士の勝負であった為、磐音も深手を負ったが、琴平を打ち果たしてしまった。

磐音は1日にして親友二人を失うことになった。

そして許嫁の兄を斬ったことで、奈緒(芳根京子)にも逢おうとせずに藩から暇乞いをして江戸に流れていくのである。

 

この映画は三部構成になっており、磐音という人物がどの様な背景を背負っているのかを見せるのが第1部。江戸での磐音の生活と事件が第2部。そして離れ離れになった奈緒(芳根京子)との再会を3部としている。

 

第1部ではもともと仲の良い幼馴染の3人が縁あって、親戚にもなった。しかし悪意ある策略でその関係は大きく崩れ、二人を死なす結果になった。一人生き残った磐音は友を失った悲しみ、友を斬った哀しみ、そして愛する女性と離れなければならない哀しみと死んだほうが楽とも考えられる哀しみを背負って生きることを選択した。

この磐音を演ずる松坂桃李が物凄くいいです。

本来ならこれほどの哀しみを背負うと心の暗さがどこか陰を落とす様な演技になりがちなのだが、松坂桃李はそうは演じていない。

むしろ何もなかったごとく、自然体で柔和で優しげなのである。

だからこそ磐音が背負った哀しみを観ているこちら側が理解すると、その壮絶な哀しみが磐音の笑顔の向こうにあるのを感じて益々引き込まれていく。

それと殺陣が素晴らしい。特に琴平(柄本祐)の殺陣は見事で、突きの多い剣術は実践重視的な感じでありその鋒に殺意が漲っている。

そして対極な殺陣を披露するのが磐音。殺意を全く感じさせない寝ている様な力の抜け切った構えからの刀さばきは琴平と対峙するとその違いが明白で、今までにない殺陣を見せてもらった。

 

第2部は磐音(松坂桃李)が江戸の暮らしの中で、事件に巻き込まれていく。

普段は鰻屋の板前をしているが、貧乏暮らしは相変わらず。そこで用心棒の仕事も引き受けるのだが、その裏にはお上の覇権争いも絡んで、その解決に一役買うことになる。

 

そして第3部は許嫁の奈緒(芳根京子)との再会。

琴平(柄本祐)の行動の責任を取らされ、家は断絶。藩からも追放された。病気がちの父母を抱えて途方にくれる奈緒であったが、磐音(松坂桃李)に対する気持ちに微塵の迷いも変わりもない。

兄、琴平が磐音に斬られたことを聞いてもその気持ちは変わらない。

しかし磐音は何も言わずに去ってしまった。

江戸勤番の時の土産の匂い袋だけを残して。

奈緒に面倒をみようという老中、宍戸(奥田瑛二)に対してもその態度は変わらず肥後関前を家族で去るのである。

覚悟を決めた奈緒は、遊女となって日本全国を回った。そして花魁となって江戸にやってくるのである。

噂で新しい花魁が奈緒と知った磐音は声をかける。しかし花魁は静かに振り返り、袂から匂い袋を出して静かに薫りを嗅ぐのである。

「何処で何をしていようとも奈緒は生涯、磐音様だけの妻であります。」と。

奈緒の覚悟を見た磐音は涙を流すのである。

 

普通ならここで、哀しい運命に翻弄された若者の話として終わるのであろうが、この映画はここでは終わらない。

またある日の磐音が描かれるのである。

いつもと変わらない貧乏浪人暮らしをしている。そこにまた用心棒の依頼が入る。依頼をしてきたのは大家の娘であり、依頼先の両替屋の奉公人であるおこん(木村文乃)。

磐音に気持ちがありながらも、奈緒の存在を知っていて磐音に静かに語りかけるのである。

「奈緒さんの身請け料1200両の足しにしないとね。」と。

「いかにも」と応える磐音。

そうなんです。磐音は運命を受け入れながら奈緒を見ているのです。変わらぬ哀しみを抱いた笑顔を見せながら。狂おしいほどの気持ちが伝わってきます。

このラストカットは泣けます。

オススメです。