セカンドオピニオンとして、私はしばらくぶりに母が手術をした札幌乳腺外科クリニックに戻ることになる。

 

久しぶりに戻った札幌乳腺外科クリニック。理事長先生は相変わらずの笑顔だった。

一通り持って行った画像を見て、右もたぶんそうだね、と。すぐに細胞診をして結果を待つことになった。健康診断での告知から1カ月以上たっているが、まだ会社には一言も話していない。

 

 病院が多数ある、札幌市内でも同時再建ができる病院には限りがある。移動したクリニックでは、形成外科医がそのときだけ来てくれて、乳腺を取り除いたあと、そのままエキスパンダーと呼ばれる乳房を拡張するシリコンを入れてもらうことができる。エキスパンダーで乳房を広げた数か月後、形成外科の別の病院に入院し、インプラント(人工乳房)を入れる手術を受けることになる。

 

 お世話になる、形成外科がある病院の門をたたく。切除手術の前にいまの胸の状態を測定、体形など向いている方法を先生と相談する。看護師さんが写真をとり、あっという間に測定。いくつもあるサイズから、もとの形に近い人工乳房を見せてくれた。

 保険適用がされている乳房再建手術には大きくわけて2つ。インプラントと呼ばれる人工乳房を入れるのと自分の身体の一部で作るやり方がある。形成外科の先生は両側だし、遺伝性乳がんの線も消しきれないので、あとで手術する可能性のある、子宮・卵巣などに影響があってはいけないと自分のおなかの肉をとる方法はNGに。あとは背中のお肉をとってくる方法と、インプラントの選択。両側であることと、身体への影響、さらにただでさえ両側で長くなる入院期間などを理由にインプラントをすすめてくれた。

 

 乳がんの摘出手術と一緒にティッシュエキスパンダーという胸を膨らませる装置を入れて、術後落ち着いたら、インプラントに入れ替える、というやり方なので少なくても2回は入院が必要。両胸なので逆にサイズもそろうし、下垂もしない、きれいに出来上がるから安心して、と励まされた。

しかし、人工乳房では異物感を感じたり、被膜拘縮やまれに別のがんのリスクもあるよ、とも説明を受けた。この説明がいかに大事だったのか、はこのあと身に染みることになる。

 

 クリニックを移動しなくても再建手術は可能だった。①手術→②拡張器(ティッシュエキスパンダー)→③再建(インプラント)だと、都合3回入院すればいい。しかし両側なので入院期間が全部長くなる。クリニックを移動すれば、①と②は一緒で③だけ入院しなおしなので少しは短い。仕事をもつ身としては入院は少しでも短い方がいい。

 乳腺外科の先生は乳腺の手術のプロなので、その後の再建を担う、形成外科医との連携が大事で、大都市・札幌であっても数軒しか一緒にできない。まだまだ同時再建はハードルが高い。

 

 右の乳房のがんも無事に?理事長先生いわく、『ばっちりガン』との診断がおりた。

ただ、最初に検診でわかったときから手術日まで2か月。左は組織診でタイプがわかっているが、右はわからない。進行が心配なことから、抗がん剤を一回行い、さらにタモキシフェンというホルモン治療薬を飲むことになった。入院日までの限定だったので、生理も止まらず、抗がん剤の吐き気もコントロールされて大丈夫だった。髪の毛はこしがなくなってしまったけれど見た目は自分しかその変化に気づかない程度たった。

 

 がんとわかってから1か月半。治療方針と方向性が出たことから手術日程を調整しなくてはいけなくなり、ようやく会社に話そうと思い立った。

 

なかなか言いづらい。やはりがん、というイメージはあるだろうし、もう働けないという判断をされるのでは?などと過剰に心配がめぐる。全部伝えるのが正しいのかどうかも正直迷った。過剰に心配をかけると今後に響くに違いないと思った。