上方の真山隼人さんと東京の澤勇人さんの二人会。曲師は佐藤貴美江師匠。
澤勇人     「新門と梅ヶ谷」
真山隼人 「元禄秋晴れ街道」
澤勇人     「崇徳院」
真山隼人 「浅茅が宿(雨月物語から)」
澤勇人さんの演題についてはこれまでも木馬亭公演などで何度も触れたとおり。
この日は一席目はとても良かったのに、二席目の出来が少しグダグダで残念。いつもはもっといいのになあ。
真山隼人さんの一席目は「大石東下り」と同じ内容。三味線だけで演じられた。関白家雑掌の名が垣見左内ではなく橘左近になっているのが普通との目立つ違い、人物の描き分け、節の確かさ、音域の広さなど素晴らしいの一言。貴美江師匠とのコンビも初めてとは思えないほど。
隼人さんの二席目は雨月物語から「浅茅が宿」だが、これは演題として初めて聞くだけでなく恥ずかしながら物語としても初めて接する。下総の真間の里の勝四郎は妻を残して半年ほどで帰る予定で、妻の宮木を残して京へ上ったが、病のため上方で療養するうち関東に戦火が広がり帰るに帰れなくなり7年が過ぎる。ついに故郷に戻って我が家を訪れると、妻は戦火の中でも夫を待って家にとどまり瘦せおとろえ汚らしいなりで出迎え、二人は寝入る。勝四郎が朝目覚めると家は跡形もなく狐狸に化かされたかと思うが、漆間の翁が実は宮木が哀れにも既に亡くなっていたことを伝える。前夜の宮木は霊だった、というお話。今度は父上がオペレーターとなってオーケストラや虫の声や雷の音などを流しながらの演歌浪曲の形式で演じられた。ストーリーがよくわかるだけでなく、勝四郎の心情も宮木の心情も胸に迫ってくる。圧倒されるような素晴らしい熱演だった。
二人が互いに浪曲マニアと呼び合うトークも楽しかった。
隼人さんはまた来年3月に東京公演を予定されているとのこと。