スピリチュアルな100万円 | ジャズと密教 傑作選

ジャズと密教 傑作選

空海とサイババとチャーリー・パーカーの出てくるお話です

○ベアキエとかいうどこかのお姫さまがスピリチュアルなるものを志向しているといった話が新聞に載っていて、その記事に「スピリチュアル」の概念が説明されている。

スピリチュアルという英単語は辞書を見ると、ただ「精神的な」という意味から「超自然的な」「宗教的な」といった分野についての使い方まで幅があるようだが、これではもちろん、いま流行りのこの概念の包括した説明にはなっていない。

一方、記事の方は大変分かりやすくまとめられているので、ここは是非ご紹介したいと思う(無断で)。

スピリチュアルは、スピリチュアリティという言葉の派生語で「人間を超えた目に見えない大いなる力の中に、自分が存在しているという意識」などと定義される。「大いなる力」は、霊的な存在や神仏、宇宙、大自然、エネルギーなど様々に表現され、必ずしも宗教が介在するとは限らない。(2017.4.6朝日新聞)

ふむ、すっきりすっきり。

ところで、わたしはこのスピリチュアルを標榜する人々の集いが(多分)苦手である。上に引用した定義を正しく認識しているのかどうか、浅い理解で自分に都合のいい解釈をしている人が少なからずそこに含まれている気がするからだ。

わたしに言わせればそもそもスピリチュアルというのはジャズ用語に他ならない。

わたしの持つ英語の語彙は教科書に載っていたI have a bookと荒井注から習ったThis is a pen以外はほとんどすべてスイング・ジャーナルというジャズ雑誌から得たようなものなのである。

「オーガナイズ」はマイルス・デヴィス、「ソフィスティケイト」はデューク・エリントンから習ったし、メインストリームもアヴァンギャルドもウェストコーストも、はたまたマイ・ファニー・ヴァレンタインも、こういったカタカナ語はみんなSJ誌のジャズ記事で覚えたのだった。ついでにチャーリー・パーカーからは酒、麻薬、女を教わった。

スピリチュアルという単語もジャズの世界にはたくさんあって、古くは「フロム・スピリチュアル・トゥ・スイング」という傑作が知られている。

アルバート・アイラーは「スピリチュアル・ユニティ」を創り、富樫雅彦は「スピリチュアル・ネイチャー」を以って世に問うた。いずれも芸術家としての観察力、洞察力、哲学がそれぞれのアルバム・タイトルに込められている。

また後期コルトレーンらの真摯な演奏ぶりはスピリチュアル・ジャズなどと規定された。「ジャズの精神性」についても多く語られたのではなかったか。

そう、「スピリチュアル」とはわたしにとってジャズ以外のなにものでもないのである。

そのようなわが愛すべき珠玉の人間芸術であるジャズが、「わたし解脱しちゃったわ」とかいう我田引水ならびに現実逃避に基づいた寝言の飛び交うすっとこどっこいな世界と一緒にされてはたまらない。

さて、記事に登場したア○アキエなる人物だが、どの程度ものに通じているのだろうか分からない。そういえば大阪の園児たちが「アベ○キエさん、100万円ありがとう」と唱和したとかしなかったとか。