拝啓、ステージの神様。
ワークショップ・レポートをおとどけします。
「角川研究室」ワークショップ・レポート
歌詞こそ台詞だ!
2014.6.25
ミュージカル映画と言ったらどんな作品を思い浮かべるだろうか?
『雨に唄えば』、『RENT』、『ウエストサイド物語』、もしかして『アナと雪の女王』だろうか?
名作と言われるミュージカル映画はたくさんあるが、日本で作られた作品が挙げられることは少ない。
「和製ミュージカル映画を作りたい」
この思いに力を注ぐ映画監督がいる。角川裕明。
彼は『レ・ミゼラブル』や『AIDA』、上演中の『オーシャンズ11』など、多くの作品に出演する実力派ミュージカル俳優である。そして、2007年頃からは日本でのミュージカルの状況を変えたいとチャレンジを進めている。映画という手法を使うことで、ミュージカルの世界とファンをもっと広げるために……。
これまで監督した『ユメのおと』(2012)、『埼玉家族』内の短編『父親輪舞曲』(2013)の二作品に続き、長編映画への準備も始まるなか、角川氏が定期的に開催しているワークショップ「角川研究室」を取材した。
うまく歌うのが目的じゃない
都内の某スタジオ。この日参加したのは、10代から40代まで、年齢もキャリアもさまざまな、男女合わせて16名。舞台、映像、音楽と活動の場も異なり、大阪からこのワークショップのために日帰りで来た参加者もあった。
体や言葉を限定して使うシアターゲームで緊張をほぐした後に、ある曲を使用したワークショップがスタートした。
曲は、多くの人が耳にしたことがある、情感豊かな作品。その曲をモチーフに映画が製作・公開されたこともある。
これを何度か皆で歌う。
うまく歌うのが目的ではない、歌詞の世界を感じながら歌う。
つづいて、この曲の歌詞を台詞に仕立てたものを、4人1組となって読み合わせる。
4つのブロックに分かれた台詞を何度も読み合わせる。何度も何度も、何度も。
「言葉や語尾をアレンジしてもOK」
「この歌の背景を各人、各組で想定しながら読むこと」
しかし、「演じないこと」。この指示を度々繰り返した。
突然の雷鳴をどうするのか
「演じない」ということは、演者にとって何より難しい指示かもしれない。
演じることなく互いのリアルな感情を引き出すように指示されるなかで、4人1組の特別な間や感情の凸凹が生まれていく様子が見えた。
次に再び歌詞どおりに歌う。感情をいかに歌詞に乗せられるか。
または歌うことに注力してしまうのか。
4人1組で歌を発表する様子も映像で記録される。
あるチームの発表時、角川の合図で曲の前奏がはじまった途端、雷鳴が轟いた。
それはまるで映画や舞台の効果音のようなドラマチックなタイミングだった。
感情をさまざまに交差させながら、4組4様の歌や動きが披露される中、参加者たちは、他の組の様子をまっすぐ見つめるものもいれば、自分の感情に集中するものなど、16人16様だ。
撮った映像を見ながら角川は、「突然の雷鳴のようなハプニングもうまく感情に取り入れて」と参加者にアドバイスした。
歌詞を台詞として読んでいた時は、徐々に感情を乗せることが出来ていた参加者たちも、それを歌に戻していくと、うまく歌うことや、歌詞を追うことに必死になってしまう。
歌いながら感情を乗せること、感情をぶつけることの難易度の高さにとまどう様子が見えた。
後半は、高田たみ子さんによる、ダンスと身体表現のワークショップ。
ここでもダンス経験のある人、少ない人とさまざまであったが、前半で感情を振り絞った分、体を使うことで解き放たれる速度が何よりリアルだ。
やがて、短時間に振りを与えられ、4人1組で発表する。
ここでもアドバイスされたのは、振りの正確性より、感情と動きをリンクさせること。
感情、歌詞、台詞、歌、動き、なにかをうまくやろうと意識すると、途端にバランスが崩れてしまう難しさに改めて参加者は直面する。
およそ4時間に及ぶワークショップが終了した。
角川が最後に参加者にメッセージしたのは「歌詞こそ台詞」という言葉。
ミュージカル映画において、それは全てを包括する魂のような言葉だ。
この日、ワークショップに参加した16人が持ち帰ったものは、どのように花ひらくのだろうか。そして、参加者から得たエネルギーを角川は、どうカタチにしていくのだろうか。
和製ミュージカル映画の長編作品誕生まで、目が離せそうにない。
(演劇ライター/栗原晶子)
