遠雷について | 北条明の世界

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遠雷

「遠雷」は、昭和56年に公開された作品である。

公開日は、10月24日らしい。

原作-立松和平、脚本-荒井晴彦、監督-根岸吉太郎、制作-日本アートシアターギルド(ATG)。

その年のキネマ旬報ベストテンの第2位になっている。

 

以前も書いたが、「ウルトラマン80」を塾のため見られなかった中学3年生の自分が、塾がなくなって、やっと見られた(前年のお盆の時のオコリンボールの回以来)のが、「ウルトラの星から飛んできた女戦士」であった。

その回で、石田えりさん演じる城野隊員は殉職した。

そんなこともあって、石田えりさんのことが強烈に焼きついた。

オープニングで、「石田えり」って一枚看板で出たのをよく覚えている。

 

そして、高校に進学して、同級生が持っていた「BOMB」に、石田えりさんの下着姿が載っていた。

すごく衝撃的だった。

UGM隊員の時とのギャップを感じたし、石田えりさんってそういう女なんだって、当時は思った。

それで、何で知ったのか全然覚えていないけれど、「遠雷」という映画に出演することを知った。

「遠雷」という言葉自体を知らなかったので、どんな映画なのかイメージがつかなかった。

そして、新宿のATGの映画館(新宿文化というらしい)に見に行った。

 

 

それまで、自分は、怪獣映画や「ウルトラマン」の映画は、見に行ったことがあったけれど、一般映画は、見に行ったことがなかった。

「ウルトラマン」の映画を見に行っていたのは、昭和54年だが、弟と一緒に行っていたので、一人で映画に行ったこともなかった。

 

「遠雷」は、本当に衝撃的だった。

まず、石田えりさんが脱いでいる。

そのシチュエーションも、見合いの席の後に、モーテルに行くというものである。

 

そして、すごく面白かった。

上映時間は、135分だそうだが、全然長く感じなかった。

永島敏行氏もジョニー大倉氏も横山リエ氏も、名演技だった。

ストーリーは、そんなに複雑でなく、広次(演:ジョニー大倉)が、カエデ(演:横山リエ)と駆け落ちした挙げ句、殺害してしまうというだけで、そこに、満夫(演:永島敏行)とあや子(演:石田えり)の交際から結婚までが併せて描かれている。

それなのに、すごく引き込まれた。

登場人物それぞれがしっかりと描かれていて、その心情に感情移入してしまうからだと思う。

広次の切迫感に対して、満夫とあや子の仲睦まじさが微笑ましい。

 

特に、テーマみたいなものは感じなかったが、今回、ネットを見ていたら、たまたま相手に選んだ女によって、人生が変わってしまった満夫と広次の二人の対比が、シナリオの構図になっていると書いてあって、確かにそうだなって思った。

あや子は、あんな自由奔放な女性だけど、結果的に、幸福を運ぶ女だった。

結婚した今では、結婚相手によって人生変わるなって、切実に感じる。

 

「遠雷」を見て、パンフレットにいろいろ書いてあったこともあって、ATGというものを知り、興味を持って、公開される映画を気にするようになった。

結局、見に行ったのは、「台風クラブ」と「君は裸足の神を見たか」だけだったが。

映画そのものへの興味も湧き、もともとウルトラシリーズで、制作側に関心があることもあり、脚本家や監督にも目が向き、高校の図書館で、「年鑑代表シナリオ集」や「日本映画俳優全集」(「女優編」が出版されたのが前年である)を読んだりするようになった。

「遠雷」の脚本も読んだし、ATG作品では、「ヒポクラテス」の脚本も読んだ。

 

石田えりさんの映画は、その後、「チ・ン・ピ・ラ」まで、全部見に行った。

「ダイアモンドは傷つかない」では、出演シーンは少ししかなかったが、この映画で、田中美佐子さんを知り、田中美佐子さんの映画も見に行くようになった。

石田えりさんは、昭和59年に、レコードを出して、それも買っている。

いろんな映画を見に行くようになって、遂には、日活ロマンポルノまで見るようになった。

ただ、「遠雷」のような面白い映画だけではないことも知った。

 

「遠雷」を見に行かなかったら、その後、こんなに映画を見に行くことはなかったと思う。

「遠雷」は、映画ってこんなに面白いんだと、自分に教えてくれた忘れられない作品である。