ウルトラマンギンガSについて | 北条明の世界

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ウルトラマンギンガS超全集

「ウルトラマンギンガS」は、2014年に放映された、円谷プロ制作のウルトラシリーズの一作品である。
前年に放映された「ウルトラマンギンガ」の続編であり、「ギンガ」同様に、「新ウルトラマン列伝」内で放映された。

 

今回、tvkで、7月13日から8月9日まで再放送され、改めて、全話見た。

夏休みに、ウルトラシリーズを再放送するなんて、小学生の頃を思い出した。

「夏休みだよ ウルトラセブン」とか言って、一日に2話、再放送していたことがあった。

tvkには感謝しかない。

 

「ギンガS」は、前半8話+後半8話の計16話で、全11話(その他に、番外編と劇場スペシャルがあるが)の「ギンガ」よりも話数が増えている。

前作の2年後の設定で、ジュブナイル的だった前作と異なり、防衛チームが登場し、ヒカルもその一員となり、以前のウルトラシリーズの形式に戻っている。

さらに、もう一人のウルトラマン、ビクトリーが登場し、ギンガは、ギンガストリウムという強化形態になるなど、前作より、内容もパワーアップしているのを感じる。

個人的には、独特の雰囲気を持つ「ギンガ」も好きだけれど、子どもと見るのには「ギンガS」の方が面白かったかもしれない。

 

スタッフが一新されている。

シリーズ構成は、小林雄次氏と中野貴雄氏。

メイン監督は、坂本浩一氏。

「ギンガS」は、アクション面やヒーローのかっこよさ、ビジュアル面などで、坂本監督の意向が強く出ている感じがする。

チブロイドの存在が、等身大でのアクションを多くしているし、ギンガの後方ですごい爆発が起こるという画が印象的である。

個人的には、アクションよりもストーリーやキャラクターの心情を重視する方だけれど、坂本監督の観る人を惹きつける演出は、特に、円谷プロには必要なものだったと思う。

先日、ウルトラマンの日に、NHKラジオ第1で放送された「祝ウルトラマン50 光の国からのメッセージ」に、坂本監督は出演されていたが、こんなラジオ番組に出演してくれるほど、ウルトラへの思いを持っている。

東映作品だけでなく、今後も、ウルトラシリーズを監督していって欲しいと思う。

 

ウルトラマンギンガは、前作の最後で、宇宙に帰っているため、第1話で、地球に帰還する。

変身時に、ヒカルが、「ギンガー!」と叫ぶようになり、変身バンクも新しくなっている。

前作同様、技を発動する時、技の名前を叫ぶ。

以前は、技の名前を叫ぶことに、特にウルトラマンは異星人ということもあり、違和感を持っていた。

「ギンガ」の頃も、まだ違和感が残っていたが、今では、慣れてしまった。

 

「ギンガS」では、ギンガの強化形態として、ウルトラマンギンガストリウムが、第3話から登場する。

ヒカルが、ストリウムブレスをタロウからもらったことで、強化が可能になった。

ギンガストリウムの最大の特徴は、ウルトラ6兄弟の力を使えるということである。

 

「ウルトラマンタロウ」が放映されていた頃、たぶん「小学1年生」か「小学2年生」に、タロウは、兄さんたちの技を使えるみたいな記事があった。

マンからはスペシウム光線、セブンからはアイスラッガー、新マンからはブレスレットという感じだったと思う(エースからは何だったっか忘れた)。

だから、タロウがスペシウム光線を使ったり、頭部が外れてアイスラッガーを放ったりするのを楽しみに待っていた。

アイスラッガーは、タロウの角を逆手に持って、こうやって放つみたいなポーズの図解まであったと思う。

しかし、タロウブレスレット以外は劇中に登場しなかった。

テンペラー星人戦で使用したのも、スペシウム光線ではなく、ネオストリウム光線になっている。

そんなこともあり、他の兄弟の技が使えるというのは、小学生の頃の自分にとって、「こういうウルトラマンが見たい」というのの一つだった。

それが実現した。

 

ギンガストリウムは、デザインもかっこいい。

うまくタロウの特徴を入れて、しかも違和感がない。

 

ゾフィーのM87光線も使用した。

一時、「エムはちななこうせん」という言い方をしていたようだが、「ギンガS」では、「エムはちじゅうななこうせん」という、自分にはなじみのある言い方に戻っている。

ただ、発射のポーズが、両手を胸の前で揃えた後、そのまま、右手を前に伸ばして発射している。

個人的には、八つ裂き光輪と同じ発射ポーズだったと思う。

確認していないが、エースキラーは、そうやって発射していたと思う。

映画の「ウルトラマンZOFFY」では、どうだっただろうか。

これについては、また調べてみたい。

 

Z光線やエメリウム光線まで使っていて、ウルトラ戦士一人につき一つの技というわけではなく、すべての技を使えるようである。

さらには、対ハイパーゼットン イマーゴ戦では、コスモミラクル光線まで使っている。

ただ、ウルトラマンジャックの力で多用していたウルトラショットは、新マンが誰に対して使っていたか記憶が曖昧だし(対ノコギリン戦らしい)、若干無理はあるが、やっぱりウルトラブレスレットにして欲しかった。

また、ヒカルの状態で、ウルトラバーリヤを使えるというのは、かっこよかった。

最終話で、ビクトルギエルに、コスモミラクルエスペシャリーという技を放つが、これは、コスモミラクル光線の強化型ではなく、ギンガエスペシャリーとビクトリムエスペシャリーとの合体技ということである。

 

ただ、実際に、他のウルトラ戦士の技を使えるとなった時に、ギンガの必殺技の魅力がなくなってしまうのを感じた。

ギンガは、クリスタルの色によっていろいろな技を発動するのが最大の特徴だが、ギンガクロスシュートが一番一般的な光線技で、究極の技がギンガエスペシャリーという感じがしていた。

しかし、ウルトラ兄弟の必殺技が使えるようになったことで、M87光線とギンガエスペシャリーはどっちが強いのかという問題と、強い方を使うとなると、もう一方はいらなくなるのではないかという問題が生じるようになったと思う。

 

ウルトラマンビクトリーは、地底民族ビクトリアンのショウが変身するウルトラマンである。

第1話での登場シーンで、ヒカルの前で変身し、EXレッドキングにライブしているワンゼロに対し、「ウルトラマンビクトリー」と、自ら名乗っていて、それを陣野隊長も聞いている。

デザインは、今までのウルトラマンと違った印象の独特のものである。

ギンガと同じく、ウルトライブして変身するが、ギンガとの関係は不明。

ただ、後に、ギンガと合体して、ギンガビクトリーになっていることから、同族だろうと思われる。

ただ、ギンガと違い、ショウと会話をすることはなかった。

 

ビクトリーの最大の特徴は、スパークドールズの怪獣の身体の一部を、「ウルトランス」して、自分の腕にくっつけることができることである。

最初は、違和感ありありだったが、これにも慣れた。

怪獣の力を信じられないと使えないという、ウルトランスの特徴にスポットを当てた話があったのもよかった。

なお、第1話で、EXレッドキングを倒すのはギンガであり、「ギンガS」の主役は、あくまでギンガというのを感じさせる。

ビクトリーは、なんと、EXレッドキングのスパークドールズを奪っていく。

第2話で、エレキングを倒すのが、ビクトリーである。

 

怪獣、宇宙人は、チブル星人がレギュラーの敵として登場する。

最近のウルトラシリーズは、宇宙人に、名前をつけることが多いが、このチブル星人は、エクセラーという名前を持っている。

自分以外のものを駒としか考えないというのが、「怪獣は仲間である」というテーマと対比になっている。

 

チブル星人ということで、アンドロイド少女ゼロワンの後継機、ワンゼロが登場する。

ワンゼロは、ストーリーに重要に関わってきて、途中で美鈴と出会い、マナという名前をもらうことで、心に変化が生じていく。

そして、最後、ビクトルギエルを倒す時に、重要な役割を果たし、死んでいく。

すごく、いいキャラだったと思う。

最終話の最後の最後で、実は、キサラ女王の水晶に、データがバックアップされていたのが明かされるが、本当によかったと思う。

 

宇宙人では、ガッツ星人ボルストが、チブル星人の実質上の配下として登場する。

「宇宙最強」にもかかわらず、チブル星人の配下なんて、ガッツ星人らしくない感じがする。

頭も悪いし、おそらく、同じ星の出身でも、「セブン」のガッツ星人とは別の種族なんだろうと思う。

 

新怪獣は、3体である。

シェパードンは、別名地底聖獣という名の通り、ビクトリアンの守護獣である。

デザイン的には、すごく好きな感じではないけれど、いい怪獣が存在するというのは個人的に好きである。

子どもの頃のショウとの交流や、ヒヨリの一族のことを覚えているというのは、シェパードンの心が感じられてよかった。

第10話で死亡し、その後は、クリスタルスパークドールズとして、シェパードンセイバーになる。

 

ファイブキングは、5体の怪獣が合体した怪獣である。

合体怪獣というコンセプトや、ギンガとビクトリーを倒し、前半のクライマックスを飾るのにふさわしい強さを見せるのは、すごくいいのだが、タイラントに比べると、正直かっこ悪い。

元の怪獣がわかりやすいように顔をつけたとのことだが、それが原因かもしれない。

特にガンQが目立ってしまう。

ギガキマイラもいまいちな感じがしたし、タイラントを超える合体怪獣を見てみたい。

 

そして、最後に登場するのが、ビクトルギエルである。

UPGが開発したビクトリム・キャノンに、ダークルギエルが融合し誕生した怪獣である。

当初は、チブル星人がコントロールし、「宇宙最高の頭脳」が「宇宙最高の肉体」を手に入れたと言っていたが、ルギエルに乗っ取られ、チブル星人はスパークドールズに戻ってしまった。

チブル星人は、自分以外をすべて駒だと言っていたが、自分が実は駒だったというのにつながっているし、個人的には、ルギエルが、チブル星人に操られるというのはありえないと思うので、この展開はよかった。

「ギンガ」と「ギンガS」は、合わせても30話くらいしかないし、ルギエルが復活するのであれば、ルギエルにギンガシリーズの最後を飾って欲しいという思いがあった。

前回は、月面で生きていたルギエルであるが、今回は、倒されたようである。

ギンガが、最後に、自分とルギエルは元は同一の存在だったと言っている。

ビクトルギエルは、背中にライブベースがついていて、それが若干違和感を醸し出してはいるものの、すごくかっこいいと感じた。

登場する何週か前から、CMでその姿を見て、どうしてこんな形になっているのか、ルギエルとどういう関係なのか、登場がすごく楽しみだった。

 

主人公は、前作に引き続き、礼堂ヒカルである。

前作から2年経ち、世界を冒険している。

正義感は強いものの、一見、軽くてちゃらい感じであるが、肩の力が抜けていて、ショウといい対比になっていた。

今までにないタイプの主人公だと思う。

 

ショウは、真面目で堅物って感じ。

髪形が特徴的。

ビクトリーにライブしているのであるが、ビクトリーがしゃべらないこともあり、ビクトリーそのものという感じがする。

 

UPGの隊員のアリサとゴウキは、隊員が二人しかいないこともあって、キャラが立っている。

少ない話数にもかかわらず、それぞれにスポットが当てられた話もある。

アリサを演じた滝裕可里さんは「リミット」、ゴウキを演じた加藤貴宏氏は「衝撃ゴウライガン!!」に出演していて、知っていた。

滝さんは、今年もウルフェスに行っているし、ヒカル役の根岸氏やショウ役の宇治氏と、撮影終了後も会ったりしていて、「ギンガS」のことを大切に思ってくれているのがうれしい。

 

あと、前作とは、スタッフも一新し、作風が変わったのにもかかわらず、友也以外の美鈴、健太、千草が、ちゃんと登場したのはよかった。

続編として、その後どうなったのかを描いて欲しいと思っていただけに、3人とも出て、本当によかったと思う。

こういう、前作をきちんとフォローし、前作への思いを感じられるのが、本当に、一つ一つの作品を大切にしている円谷プロの素晴らしいところだと思う。

 

唯一、レギュラーとして登場した友也も、前作よりも、とっつきやすいキャラになっているものの、ガンパッドを持っていたり、口調も同じ感じで、前作と違和感のないキャラになっている。

UPGで、唯一、ヒカルの正体を知っているというのが、友也とヒカルのシーンで活きていたと思う。

超獣が出た時に、怪獣でなく超獣だというのは、「ウルトラギャラクシー」のオキみたいでよかった。

なお、第1話では、あえて顔を見せない演出がされているが、オープニングでは、ちゃんと登場している。

 

ストーリーは、当初は、ショウとの対立と和解が描かれる。

第4話で、ヒカルがサドラにライブする。

まだ怪獣にライブできるのがわかってうれしかったし、こういう前作の設定をちゃんと描いてくれるのはすごくいい。

 

ゴウキとヒヨリの話を挟んで、第7話と第8話で、ファイブキングとの戦いが描かれる。

ギンガとショウは、ファイブキングに倒され、ライブを強制解除される。

ヒカルは、ギンガにライブできないが、怪獣にはライブでき、EXレッドキング、エレキング、キングジョーカスタムが、ファイブキングに立ち向かう。

そして、マグネウェーブを利用し、シェパードンのエネルギーをカラータイマーに照射することで、ギンガとビクトリーは復活し、ファイブキングを倒すという、前半のクライマックスにふさわしい話になっている。

 

後半は、ワンゼロが美鈴と出会う第9話、シェパードンが死亡し、クリスタルスパークドールズになる第10話を経て、第11話と第12話の異色作となる。

第11話の「ガンQの涙」は、「ギンガS」よりも「ウルトラゾーン」みたいな雰囲気の作品だった。

吉田と子どもの交流が心に残る話。

第12話も、メトロン星人が、アイドルとなった千草に夢中になり、チブル星人の命令もどうでもよくなってしまう。

人間体の丹葉が、すごく魅力的で、かっこいい。

快傑ズバットって感じである。

メトロン星人は、最後、ゾアムルチと戦うが、せっかくこの2体が揃うのなら、ドラゴリーを参戦して欲しかった気がする。

メトロン星人は、最終話にも登場して、千草の歌に合わせて、踊っている。

 

そして、遂に終盤。

神山長官が現れ、アリサ以外のUPG隊員は基地から追放される。

友也が、「開発者をなめるな」と言って、基地のシステムをハッキングするのが、なんかいい。

そして、ビクトリウム・キャノンの登場。

恩ある長官の命令に苦悩するアリサが、チブル星人にいいように使われてきたことに気付いたガッツ星人をビクトリウム・キャノンで倒してしまうのは、けっこう重い感じがした。

そして、ビクトリウム・キャノンのことを知ったショウは、ヒカルに「もうお前とは戦わない」と言い、UPGに乗り込む。

ここで、ショウを騙し討ちする神山が、すごく嫌な感じである。

ハイパーゼットンをコスモミラクル光線で倒すも、ビクトリウム・キャノンが暴走、チブル星人に乗っ取られ、ビクトルギエルが出現する。

「ティガ&ダイナ」のような展開である。

そういえば、モネラ星人って、チブル星人っぽい。

 

第15話は、話の構成が凝っている。

既に、ビクトルギエルに敗れたところから始まる。

ギンガとビクトリーは、3分間の活動時間が終わる前にライブを解除し、交代で戦うという戦法をとる。

今まで、3分の活動時間という制限に対して、こういう変身のしかたをしたらどうなるのかと思っていたが、実際にやっているのがすごくよかった。

しかし、ビクトルギエルに敗れてしまう。

しかも、ウルトライブできるのが、ギンガもビクトリーも、あと1回になってしまう。

これは、ちょっと唐突な感じがしたけれど、こんな無茶な戦い方をしたせいかもしれない。

そして、UPGのメンバーに正体がばれた二人は、マナを助けにビクトルギエルに乗り込む。

ビクトルギエルから墜落しながら、ヒカルとショウが、「あと1回」、「最後の1回」と言って変身したところで最終話に続くが、このシーンが、すごく、本当に最後なんだということを感じさせる。

 

そして最終話。

最終回は、通常のオープニングをやらない作品が、最近多いけれど、いつも通りのオープニングである。

個人的には、この方が絶対いいと思う。

 

ギンガとビクトリーは、チブル星人を倒し復活したルギエルが一体化したビクトルギエルに、再び敗れ、ウルトライブを強制解除し、石化してしまう。

前半戦の最後とかぶる感じなので、ここは、単にヒカルとショウに戻って、もう変身できないって感じでよかったのではないかと感じる。

そして、ビクトリアンたちが現れた避難所に、前作の悪のエージェントたち、バルキー星人、イカルス星人、ナックル星人も現れる。

美鈴や健太、千草だけでなく、前作のエージェントも現れ、本当に、「ギンガ」の最終作という感じである。

カムシンも刀で戦っているのがすごい。

避難所には、第5話の妊婦もいる。

最後に、赤ん坊が生まれるのだが、これが、受け継がれていく命を象徴している。

そして、キサラ女王たちの水晶の力で、ヒカルとショウは変身する。

この辺は、どうして変身できるのかって感じだけれど、それだけ、この水晶は不思議な力を秘めているということなのだと思う。

マナが内部から同時に攻撃したことで、遂にビクトルギエルを倒す。

タロウは、宇宙に帰り、ストリウムブレスは消滅するが、ギンガは、今回、ルギエルのことを話すのみで、ヒカルと分離していない感じである。

ラストシーンが、マナが復活するのを示唆しているというのは、「ギンガS」のストーリーは、ワンゼロ(=マナ)が牽引していたこと象徴している。

 

ギンガが分離しなかったのは、劇場版があるからかもしれないが、劇場版では、普通に変身していた気がする。

だから、あの最後の1回というのが、ちょっと重みがなくなってしまっている感じがするのかもしれない。

 

「ギンガS」は、前作「ギンガ」と異なり、従来のウルトラマンらしい作品だったと思う。

戦闘機が出なかったのは残念だったけれど、新しい時代らしさがあり、何よりも、ストーリーも特撮も納得できる出来だった。

 

「列伝」が始まって、その中で「ギンガ」が生まれ、「ギンガS」につながった。

そして、それが「X」になり、遂には、「列伝」内でない「オーブ」が誕生した。

「ギンガS」のクォリティが、「X」、そして「オーブ」を生み出したんだと思う。

「メビウス」から途絶えていたウルトラマンを完全復活させた「ギンガS」は、新たなウルトラの時代を作り出した意義のある作品であった。