映画『盲目の戦士』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

猟奇的な悪役ヒロイン

 

 

ブラインド・ウォー 盲目の戦士


盲目の元刑事が娘を拉致した巨大犯罪組織に乗り込む痛快ノワール系の中国映画。本作はやはり悪役ヒロインの魅力が全てに思えます。こいつは少女の頃から傭兵で美しくメチャ強い人殺し。ただ結果的には義賊的な側面があり誰よりも活躍しています。まるで『ダイハード3』のラスボスの妻みたいに妖艶でサイコパスでエキセントリックな無敵キャラ。ストッキングを履いたヒロインの美しいおみ足のショットでこの映画は始まる。その後ろでは彼女の夫が人を殺してる。どうも裁判所から組織のボスを救出するという計画で殺しまくってるようだが、この夫婦は組織に反旗を翻しボスを下剋上で爆殺。二人仲良く組織を潰そうとするが、そこへ敏腕刑事の主人公が乱入。夫は彼と対決し相打ちで死亡。引き換えに主人公の相棒は足を失い主人公は眼を失う。そんな訳でヒロインは主人公に対し夫の敵として復讐を誓う。しばらくしてマカオで主人公の娘を巨大犯罪組織の人買いが拉致。必死に娘を探してる一方でヒロインが脱獄。彼女は主人公を嬲り殺すべく彼に近づき「娘の救出に協力してやる」と彼と共に組織の人間を片っ端からぶっ殺しまくる。どうも家族を殺される苦しみを彼に味合わせる為にも組織が邪魔なようだ。

 

そんな訳でこの悪役ヒロインは主人公以上に大活躍します。とにかく悪役ヒロインは人殺しが大好きな猟奇的キャラだけに改心とかの方向には絶対に行かないって所が何とも切ない。チンピラも警官も大量に殺すが彼女の活躍で組織に拉致された多くの少女が解放されたのに報われません。ヒロインは何気なく主人公に対し過去を語る。まだ物心つく前に父親に少年兵として売られ軍人たちに殺人兵器として育てられた。「もし自分の娘が殺人鬼になっても愛せる?」「当たり前だ」「うちの父親があなただったら良かった」この会話が刺さりました。ヒロインは遠い昔に良心を持つ事など諦めている。だから愛を過去形でしか語れない。そこには既に死へと向かう覚悟がある。クズを殺す事は屁とも思わない殺し屋だが復讐は自分の命を捨てて成し遂げる。ファティアキンの『女は二度決断する』の最後に決断された決意を死を身近に生きて来た彼女は最初から持っているのだ。それだけに美しくも儚い彼女の存在が何とも切なく悲しい。それだけに悪役であるはずの猟奇的な殺人鬼ヒロインの行動の方が家族思いで品行方正な正義の主人公よりよっぽど英雄的に見えてしまいます。