2006-01-24の投稿
キネマの天地
皮肉な反応
先日『吹けば飛ぶよな男だが』を見てこの作品のワンシーンを思い出しました。見てくれた人が、どんなに悩んでいたとしても自分の作品で立ち直れるような、そんな作品を撮りたいと映画界に飛び込んだ若い脚本家。彼の渾身の自信作はベテランの喜劇監督によって手を加えられてドタバタコメディにされてしまう。その事で彼は腐るが、悩んで自殺まで考えていた客が偶然にもその映画を見て死ぬのが馬鹿らしく思えてきたと立ち直る。喜劇だから人を救えない事はない。
昔『待ち濡れた女』で荒井晴彦氏が主人公の男が不能になるシーンを書いたら逆に腰が抜けるまでやりまくれと師である田中洋造氏に直され疑問に思ったが完成した作品を見るとそれが不能になるよりも哀しくて納得させられたらしい。そんな話を思い出させるシーンです。青二才が想像するよりもずっと人間って哀しく滑稽だったりする。そーゆー部分をさり気なく汲み取れているからこそ、やはり山田洋次お得意の人情喜劇はホロリと気持ちの良い涙を流させてくれる。
