『わが母の記』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2013-10-20の投稿

わが母の記

 

 

軽快な女性たち

 

賑やかで華やかな映画でした。やはり女性キャストが多いと和やかで好い。井上靖の自伝小説を映画化って事で、もっと佐藤純彌みたいに重みのある正統派に撮らせるかと思いきや軽い作風の原田眞人。無理に重く撮ろうとせずに、いつもの軽い感じでやったのが幸いしたのかテンポ良く楽しい作品に仕上がっていました。デヴィッドフィンチャーの『ソーシャルネットワーク』みたいな早口な芝居は原田監督の十八番。威厳ある母が次第にボケて、それに一家総出で振り回される可笑しさ。その中で消えてゆくわだかまりと唯一事情を知る者として誤解が解けても伝えられず一人取り残される侘しさ。全てが心地良く爽やかに軽やかに語られています。

 

兄弟が多い家族なので、それぞれにドラマがある訳だが、それらはすっ飛ばして主人公と母の関係だけにフォーカスを絞っている。役所広司演じる主人公と宮崎あおい演じるその娘との間にも確執やら疑念が生まれたりもするのだが、それらはいつの間にか何もなかったかのように消える。このふたりの共演を見たのは『EUREKA』以来で、ベテランと新人だったふたりが売れっ子同士で対等になったと思うと感慨深い。劇中で長い時間が経過するので確執は時が洗い流したって事なのだろうけど、そこを掘ってドラマにしようと思えばいくらでも長くなりそうな要素が多々あります。それらの要素をさっぱりと切って捨てる潔さ。実際、家族内の確執なんてそんなものかもしれない。長い時があやふやにして、うやむやなまま最期を迎える。それを良い事とし前へ進む。憎悪も愛情も明確に示せないまま。いかに強く愛されていたか何も知らない事で円満でいられる事は楽しい時間を生むけれど、どうせ分かり合えないのだからと諦めてしまっているようで少し寂しい。