『悲しみのミルク』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2009-12-02の投稿

悲しみのミルク

 

 

子宮にジャガイモ

 

悲しみというよりも恐怖のミルク。政治状況が不安定だった時代にレイプされた母の恐怖を受け継いだ娘の話。その恐怖は母乳から伝染するという俗説を受けてこのタイトル。狂牛病ならぬ恐乳病だそうだ。だから娘は極度の男性恐怖症。スカートの下に長ズボンを穿いたり、ひとりでは道を歩けなかったり。挙句の果てにはレイプできないように蓋代わりに子宮にジャガイモを突っ込む始末。マンコから芽が生えて感染症で倒れちゃう。話は彼女の母が亡くなるシーンで始る。何とか村に埋葬してやりたいが、その資金がない。その資金を稼ぐために金持ちの家にメイドとして奉公に出る。そこで知り合った庭師に恋心を抱くが彼女は恐乳病。

 

20世紀の間、政情が安定しなかったペルーで作られた最近の若い世代の作品ではあるが、その作風は何ともガッシリしています。それも前の世代の映画文化を受け継ぐというよりも、100年近く前の映画を思わせる。モンタージュが分っている映画人には実に読み易い。ショットのひとつひとつがサイレント時代のヨーロッパ映画を思い起こさせる光のバランスで構築されています。冒頭の病床にいる母のショットから豪邸内に差し込む光、その構図。映画初期の名作群が頭の中に蘇るかのようです。南米映画特有の山岳地帯をフカンしている撮り方にはエイゼイシュタインの『メキシコ万歳』を思わされます。ペドロコスタの『溶岩の家』にも似た感覚です。古風ではなく、しっかりと丁寧に作り込んだ結果、こうなるという感じ。ひとつひとつのショットで見せ所が明確でサイレント期の良い部分をちゃんと抽出しているという印象。音声に頼り過ぎた語り口でモンタージュが乱暴になっている映画は見習うべし。